カテゴリー「書籍・雑誌」の146件の記事

2015/05/27

「ハケンアニメ!」(著)辻村深月

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アニメ業界を舞台にした、アニメとアニメ制作に情熱を注ぐ人々の姿を描いた小説で、2015年本屋大賞第3位を受賞した作品。
同じ世界の同じ時間を描いているものの、1章から3章はそれぞれに視点を変えたリレー形式でエピソードが語られ、最終章として後日譚が描かれている。
アニメ業界という一般的ではないところが舞台ではあるけれど、仕事と向き合う姿勢や人との関わり合いはすべてに通じるものであり、彼らの主義主張にアルアル感を覚えたりもする。
ライトノベル以上文芸小説未満といったところで、読みやすい本だった。

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2015/01/13

『ビブリア古書堂の事件手帖⑥』 三上 延(著)

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発売日には手に入れていたのだけれど、『ビブリア古書堂の事件手帖6~栞子さんと巡るさだめ~』を今頃読了。とはいえ読み始めたら一気読み。
今回は、再び
太宰治の『晩年』にまつわるエピソードを扱っている。
それは”栞子さんと巡るさだめ”という副題のとおりで、栞子のみならず大輔くんにも因縁めいた話、そして終盤へむけてのザラリとした余韻が残る6巻だった。

 

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2014/09/23

『明日の子供たち』 有川 浩 〔著〕

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約1年半ぶりの新刊は、”児童養護施設”をテーマに執筆された小説。これまでも一般社会的に正しく認知されていない様々なものについて、分かりやすく噛み砕きつつ実情や過酷な現実を盛り込んできた有川作品ではあったけれど、今回はより強く、ストレートに啓蒙するかたちで描かれた作品に思う。
それというのもこの小説は、とある施設で生活している子供から有川先生に送られた手紙が切っ掛けとなって執筆されたとのことらしい。だとすればそうなってしまうのも理解できなくはないのだけど。
限りなくノンフィクションに近いフィクション作品。けれど重さはさほど感じられない。そこが有川マジックか。

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2014/04/29

「終物語(下)」西尾維新/著

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ファイナルシーズンの第5作目は『終物語(下)』。「まよいヘル」、「ひたぎランデブー」、「おうぎダーク」の3篇で構成されており、とうとう”物語シリーズ”も終焉を迎えることになった。
長かった・・・。とはいえ、番外編だかスピンオフだかシリーズの最終巻として『続・終物語』の刊行が発表されているから、実際はまだ終わっていないんだけどね。
事実上、『暦物語』の続きで始まる今回。「ああやっぱり」であり、「そう来たか」であり、「そういうことか」であり、「でもそう来るよね」となって、「なるほど上手いこと回収したなぁ」といった印象。概ね期待どおりストレートに着地してくれたという点では逆に「らしくない」ような気もするけれど、シリーズの最終話としては以前のように賛美に値するものと感じられた。

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2014/03/07

「終物語(中)」西尾維新/著

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ファイナルシーズンの第4作目は『終物語(中)』。
ようやく”学習塾跡炎上”時に姿をくらませていた暦と神原がどこで何をしていたのかが明かされる話。内容的には、”今更入れず終いにも出来ないし、とりあえず「終物語」の閑話休題として(中)にしちゃえ”といったものであり、シリーズの読者的にはやっと穴が塞がったかと思うものの、全体的に無駄に長くなってた感は否めずといったところではある。
とはいえ、もともと設定だけはあっただろう裏話(表?)だから(上)巻での予告からそう日を置くことなく出してくれたことは嬉しく思う。なにせ確実にあと2作は残っているしね。その2作が今年中に決着してくれたら嬉しいのだが・・・

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2014/02/13

『ビブリア古書堂の事件手帖⑤』 三上 延(著)

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『ビブリア古書堂の事件手帖5~栞子さんと繋がりの時~』読了。今回も予約して買った割には今頃なのだが、読み始めたら数時間で一気読み。あのプロローグを読んだら途中ではやめられないってね。
今回は、3つの本にまつわるエピソード(事件)に大輔と栞子のジリジリなかなか進展しない恋模様を絡めた作りになっていて、ハっとする仕掛けに種明かし的に別視点で書かれた断章の入れ具合、忘れた頃にやってくる伏線の張り方が巧いと思った。そして、第2話の『ブラック・ジャック』は身近な作品でもあり、ちょっと嬉しい5巻だった。

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2013/11/14

「終物語(上)」西尾維新/著

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ファイナルシーズンとなる第3作目は『終物語(上)』。「おうぎフォーミュラ」「そだちリドル」「そだちロスト」の3篇で構成されており、自称忍野メメの姪と名乗る忍野扇によって暦の過去が穿り返されるといった内容。
3編とも謎解き仕立てで話は進行するため、いつものような脱線はほとんど見られず淡々事実が明らかになっていくのでテンポは良いのかもしれない。けれど、私は気持ちが悪くて気持ちが悪くて、何度も中断しながらやっと読み終えた感じだった。こんなにも嫌悪感が先立つ作品って、京極夏彦氏の『死ねばいいのに』以来かも。
とにかく、催眠術なのかなんなのか扇によって暦の思考が誘導されているようで、何でもかんでも言われるがままを受け入れ、言いなりになっていることすら正しい判断として気にしない暦は、まさしく”愚か者”に成り下がっている。それでも、最後は羽川の援護から暦も底力を発揮することとなり何とかふんばることができたけれど、この先もまだまだ扇の暗躍が続くのかと思うと気が重くなる、そんな『終物語』上巻だった。

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2013/06/28

「丕緒の鳥 十二国記」読んだ。

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待望のシリーズオリジナル短編集が発売された。一応12年ぶりということになるらしいが、2008年と2009年に「yomyom」に掲載された2編を含んでいるので、厳密に言えば新作書き下ろしとしては4年ぶり。
けれどこの日をどれだけ楽しみにしていたか。昨年4月、もはや半分諦めていた長編新作や書下ろし短編を含む《完全版》刊行のアナウンスがあって以来、改めて既刊分を読み直しながら待っていた1年だった。
収録作品は、「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」。どの作品も王や麒麟、家族や友人、側近らが主人公になっているものはなく、一介の官や民にスポットが当てられており、彼らの視点から国や王が見つめられ、彼らも彼らで自分の人生を懸命に生きている、という話。
どれも読みごたえがあって、とても良かった。

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2013/04/07

『ビブリア古書堂の事件手帖④』 三上 延(著)

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2月中には手元にあったにも関わらず、やっと読み終えた4巻。1月から放送されていたドラマは1話目をチラと見ただけで放棄したのだが、聞くところによると4巻の内容も含まれていたとかで、どうやらドラマ視聴者にも先を越されていたということらしい。(まぁそんなとはどうでも良い事なのだが)。
4巻は「江戸川乱歩」にまつわる長編作。著者のあとがきにもあったが、乱歩とその作品については、私にとっても「まったく知らない作家ではなし」という気持ちで読み進めたのだが、実際のところは大輔とほとんど変わらない自分で、古書と作家についてのトリビアが気軽に楽しめるところがやはりこのシリーズの醍醐味だなぁと改めて思う次第。けれどこのシリーズを読んでいつも最後に思うのは、気持ちが悪いくらいのオタクの執念ぶかさ、なんだよね。

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2013/01/21

「スリジエセンター1991」 (著)海堂 尊

Surijie1991『スリジエセンター1991』は、『ブラックペアン1988』、『ブレイズメス1990』の続編であり、シリーズ完結編になっている。既に“桜宮サーガ”の本線だった(はず)の「田口&白鳥」シリーズも『ケルベロスの肖像』を持って終了していることから、またひとつ続きを待つシリーズが終わってしまったのが少し寂しい。
しかもこの『スリジエセンター1991』は既に確定している未来から、間違いなく残念な気持ちになるであろう展開になることが最初から決定的で、意識的にも無意識的にもつい読むのを先延ばしにてきたものでもある。そしてようやく読み始めても読み進むにつれて、表にも裏にも鳴り止まない不協和音が一層の激しさを増して行き、やがて容赦なく桜の新芽を根こそぎ摘み取ってしまうような、予想どおりに今までで一番切ない結末が待っており、涙した私だった。

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