「スポットライト 世紀のスクープ」みた。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』と同じく、またしても邦題では”世紀のスクープ”などと副題が追加されているだけに、爽快なイメージを持ちかねないように思うが、確かに世紀のスクープではあるのだけれど、内容は記者たちの地道で根気のいる取材活動をはじめとする”調査報道”の裏舞台であり、時にピリピリとした最前線の模様を目の当たりにするというもの。単に巨大組織のスキャンダルを暴きだして「ペンは剣より強し」なんて正義を行使するようなものではないと言っておきたい。
いわゆる”特ダネ”、握りつぶされていた深刻な事実や隠ぺいされている事実を真実として記事に取り上げ、世間に発表する。
そのためには、被害者や加害者・関係者に対する地道な調査と取材活動が必要で、またそれが本当に事実かどうかの裏取りが何よりも大切であり、そうして確実な証拠を多方面から積み重ねていく。
ほぼ作業といっても良さそうな、到底好きでなければ務まらないように思う。
そこまでしても、証拠が揃ったからと即発表というわけにはいかないときもある。
ほかに世間が注目している事件が発生中の場合、そして、闇がとてつもなく深い場合。
”スポットライト”チームも「9.11」で活動を数か月中断しなければならない時期があったり、神父らの悪行における十分な証拠を入手しつつも、真のターゲットを教団組織と決めたことで根の深さに表面傷つけるだけでは終わらないよう、より決定的な証拠と裏付けが揃うまでの我慢があったりしたようだ。
新聞社だって商売。その間は他紙も警戒しなければならないし、既に怒り心頭の記者たちだけにまさに忍耐の期間。
徐々に明かされていく変態神父の実態。何より驚くのはその数。被害者情報で最初に判っていたのが13人。それでも驚愕なのにそれすら氷山の一角だったとは。
統計学的に割り出された計算値を聞かされたチームが文字通り絶句していた場面があるが、誰もが同じように感じたことだろう。
”アカデミー賞作品賞、脚本賞受賞”という肩書だけでも、観に行って後悔のない映画と思う。
好感度:★★★★++
4/16の朝日新聞「be on Saturday」フロントランナーにて、現在のスポットライト編集部が特集されていた。マイケル・レゼンデスさん、サーシャ・ファイファーさんは今も所属しているとのこと。(というか、全て実名だったのね。何気にご本人と俳優の面差しもにているし)。
EDではピュリツアー賞の受賞は語られていなかったように思うけれど、しっかり受賞。
発表の見送りを言うロビーにマイケルが嚙みつくやり取りは、概ね実話との事。
映画では語られていない2人のその後など、補足的にも親近感をもって楽しめる記事なので、興味のある方は探してみては。
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コメント
どのように世紀のスクープへと至ったのか、
その過程が丁寧に描かれていましたね。
キャスト陣のアンサンブルも非常に良かったと思います。
作品賞を獲得したのも納得の出来でした。
投稿: BROOK | 2016/04/16 12:51
社会派ながら過程をしっかりと見せていくことでスリリングでもあったし、彼らの粘り強さや正義感に触れ、心変わりしていく頑固な弁護士や関係者など、調査報道の重要性を知りました。
キャスト全員はまってましたねー。
誰一人として見劣りしない見事なアンサンブルでした。
投稿: オリーブリー | 2016/04/16 14:05
■BROOKさん、こんにちは
まだ公開前であり、作品賞受賞といわれてもピンときませんでしたが、なるほど、といった感じです。
突出した俳優個々の・・・というより、こちらもチームの勝利なのかなって思ったり。
投稿: たいむ(管理人) | 2016/04/19 13:47
■オリーブリーさん、こんにちは
そうなの、過程を丁寧に見せてくれてとても分かりやすく思いました。その上判ってるのにドキドキしちゃうし、すっかり見入ってました。
キャスト陣、良かったですよね。
誰かだけにスポットを当てていないところも逆に良かったです(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2016/04/19 13:50
1人の神父が犯した事件だと言うことでも、とんでもないショックでしょうが、あの最後の無言の羅列。すごかったですね。
実話だけど、たいむさんのおっしゃるように、ドラマのようにぐいぐい中に入って、でも外からみてる感じ?
この事件を記事にしていく葛藤が、一番の見どころなんでしょうが、信仰心のない人間には想像するしかない。身に迫ってこないぶん、傍観者の目で見ることができて、エンタメ的な面白さがありました。
投稿: mariyon | 2016/04/21 18:10
■mariyonさん、こんにちは
決め手となったあの手紙。信仰心が強ければ強いほど胸に刺さるものがあるのではないかと思います。
エンタメ的に感じてしまうのは申し訳ないのかもしれませんが、文化の違いはどうしようもないですよね。
とはいえ、社会派な要素はしっかり汲み取れるし、どの角度でも良くできた映画だと思います。
それにしても日本人はほんと宗教に疎い。
でもだからこそ、日本のおもてなしの精神みたいな、ボランティアとも少し違う自発的な独自の作法みたいなものが脈々と受け継がれてきたのかなとか思ったりします。
投稿: たいむ(管理人) | 2016/04/22 14:47
たいむさん☆
うわー、うち朝日新聞なのに読み損ねちゃった!
事実が事実だけに真摯に向かい合って地道に調べていく姿が素晴らしかったですよね。
さすがピュリッツァー賞取っているのですね?
これが一過性のスキャンダル報道で終わらず、悪の魔の手から子供たちを守る世の中に意識改革していってればいいなーと思いますね。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2016/04/27 21:44
■ノルウェーまだ~むさん、こんにちは
このチームの良さ(しつこさ?)は続けてこの事件をフォローしていったところにあると思います。
トンデモ事件のスクープにパッと火が付いて大騒ぎするけど、新しい何かがあるとすぐ消える、そんな扱いが多い昨今。一過性で終わらない報道の大切さを感じますね。
投稿: たいむ(管理人) | 2016/05/03 08:59
たいむさんこんにちは♪ご無沙汰しております。
社会派ドラマのような作品は結構敬遠しがちでもあるのですがなるほど、どこか海外ドラマに寄ったような感覚にも見えたから最後まで見入っていられたのかもしれませんね。
自分もこの事件は全然知らなかっただけに教会や神父達のあまりの腐敗ぶりに絶句してしまいましたが、エンドロール前の最終的な人数とか見てしまうとなんか絶句よりも呆れのような溜息しか出ませんでした・・はぁ。
投稿: メビウス | 2016/05/30 16:31
■メビウスさん、こんにちは
新聞で超社会派なテーマってよほど関心を引き付けられないとスルーしがち。
新聞は読まず、ニュースもワイドショー化されつつあるこの頃、スマホで興味のある分野をと登録することで情報が次々と配信されるのでは、ほかの分野を目にする機会は減少する一方。
池上さんじゃないけれど、分かりやすくとっつきやすいアプローチが必要になっているのかも。
スポットライトチームのような存在は今後も頑張って存続してほしいものですね。
投稿: たいむ(管理人) | 2016/06/03 10:25