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2015/11/11

「エール!」みた。

La_famille_belier

聴覚障害の家族の中の唯一健聴者としての育ってきた少女が、歌手になりたいという夢に向かって進みだすまでの物語。
現実的なのか非現実的なのかやや微妙なお話ではあったけれど、ハンディは個性とマイペースながらも明るく楽しく暮らしている家族が、また一つ殻を打ち破るような、心温まる家族愛と絆を描いた物語で、とても良い映画だった。

聾唖の両親から健聴者として生まれてきたポーラ。弟もいるが彼も聾唖で家族の中ではポーラのみが健聴者ということで、おそらく物心つくかつかないかの頃から家族と外部との橋渡し役を担ってきたと思われる。それだけに、とにかくしっかり者のポーラ。
父親は広い農場で酪農を営み、母も牛乳からチーズを作って小売りしながら生計を立てているけれど、家畜の飼料の手配にしても、売店での接客にしても、すでにポーラなしではうまく回らないのが現状。全てにおいてポーラにおんぶにだっこと言うわけでも無いけれど、家族のポーラへの依存度はかなり高い。それでも、ポーラは不平不満ひとつ言うことなく家族を愛し、円満に暮らしていた。
けれど、家の手伝いをしながら高校へ通うポーラが選択科目でコーラス選び、音楽教師にその才能を指摘されたことで彼女の中に変化が芽生え始める。
鼻歌程度だったものが少しレッスンを受けただけで劇的に声が出るようになり、個人レッスンを受けて自信を持ち始めたポーラは、はじめて自分自身の夢を自覚するようになる。

家族の支えになるのが当たり前だったポーラが見つけた夢が”歌(歌手)”というのがなんとも皮肉な話。
パリで歌の勉強するために試験を受けたいというポーラに家族は戸惑いを隠せない。それはポーラ依存の面もあるけれど、障害から彼女の夢が理解できず、どうして良いのか判らない彼らだったからというのも大きい。

結局、両親はいったん夢を諦めかけたポーラの背中を押し、試験では家族の気持ちに応えるように、聞こえない彼らにも伝わるように熱唱するポーラとなるのだけれど、ここが本当に素晴らしくって、胸が打たれた。
完全に狙ったものだけど、これは確かにナイス選曲!

やや特殊な環境下でのことながら、それを必要以上に強調することもなく、ふつうの家族愛、親離れ子離れが丁寧に描かれている良作。映画らしい映画だった。

好感度:★★★★

フランスが色っぽい国なのは知っていたけど、あそこまでオープンなのか~ってちょっとビビった。
高校生のコーラス発表会にあの選曲もスゴイ!それを聴いた小さな男の子も分かったように大拍手。弟くんも立派にフランス男だったし、あちらは幼いころから鍛えられてるってことなのかな?

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コメント

たいむさん☆
フランスって本当に色んな意味で愛にあふれてましたねー
小さいころから鍛えられてるぅ~~
今はネット社会だし、メールや筆談で出来るところを依存する生活から卒業するという話ではあるけれど、一般の親離れ子離れに通じるものがあっていいお話でしたね☆

投稿: ノルウェーまだ~む | 2015/11/11 19:23

■ノルウェーまだ~むさん、こんにちは
フランスの溢れる愛は日本人にはやや刺激が強すぎかもですね。
そういえば「ミケランジェロ・・・」でもケイトがぐいぐいマットを誘ってましたもんねぇ(爆)

>メールや筆談
実際、最近は携帯電話のメモ機能とかを有効に活用されているようですしね。

そうそう、「家族だから」って良くも悪くも作用することがありますよね。
でもそれはどの家族にも言える話なわけで、障害の有無に関係なく自分に置き換えて考えることのできる良い作品でした。

投稿: たいむ(管理人) | 2015/11/12 00:14

こんにちは。

今年は音楽映画が多いような気がする、、、。
ホフマンさんとパチーノさん大御所2人のは観てないけど、秀作ばかりだったかも。
試験会場では大方の予測はついたけど、感涙でした。
弟のゴムアレルギーとか(笑)あまり下ネタは要らないとは思うんだけど、これもフランス映画らしい軽妙さなんでしょうね(笑)
育った環境とは言え、家族を支えるポーラはエライなーと思いました!
何事もなく平穏は幸せなんだろうけど、逆に自分探しをする機会と言うか、大切な時期にそれさえも考えずに過ぎていく日々よりずっといいですね。
個々、面倒な事はあるけど、協力している家族のまとまりみたいのはいいですなぁ~もはやそんなことはないですからねー(苦笑)

投稿: オリーブリー | 2015/11/12 15:21

■オリーブリーさん、こんにちは
音楽映画は秀作が多いので歓迎ですが、確かに今年は沢山あったかも。
必ずといって良いほどクライマックスの見せ場ではやられちゃいますね。まぁそれを楽しみにしているんですけど。

ポーラは純朴で本当に良い子でしたね。
家庭環境もあるけれど、どうしたらあんなに良い子に育つのか。
誰がポーラに正しい言葉を教えたのかな~って思ったりもしたのだけど、なんであれ両親が愛情たっぷり育てたんだろうなってしみじみ思いました。

何不自由ないからそれぞれ自分勝手してしまう。だけど逆境に立ち向かうとしたら一致団結も出来る。
人間って特殊というか、やはり頭の良い動物なんですねぇ。

投稿: たいむ(管理人) | 2015/11/12 18:07

笑って、お国事情に驚いて、最後は泣かされました。
子供が旅立っていく映画は、弱いのですが、たいていは男の子バージョン。でも、これは女の子、ここまですがすがしく描けたのは、やっぱりポーラによるところ大ですね。たいむさんのおっしゃるように、介護映画でないのもいいです。
女の子が親元を離れてというと結婚。、むかしなら嫁に行ったらしばらくは実家にかえれなかったわけだし。そういう映画も多い。でも、これは違う。ぎりぎりだったけど,観てよかったです。

投稿: mariyon | 2015/11/25 23:36

■mariyonさん、こんにちは
ポーラが男の子だったらより感情移入して号泣だったかもしれませんね(^^)
ほんと清々しくも素敵な映画でした。

私もまだまだバタバタしてるころで、息抜きに観に行った映画だったのですが、元気を貰えてよかったです。

投稿: たいむ(管理人) | 2015/11/27 16:43

こんにちは。
やっと富山で入ったので見に行ってきました。

なんか本当に元気になりました。
あの選曲はとっても感動しちゃいました。

投稿: Nakaji | 2016/02/28 22:04

■Nakajさん、こんにちは
やっぱ音楽ものは良いですよね。
ぷらす家族の絆モノで外れるはずがない!

押しつけがましさのないところが気に入りました。

投稿: たいむ(管理人) | 2016/03/01 15:27

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