「あん」みた。
ハンセン病元患者への差別と偏見を扱っている作品。
ハンセン病を扱った作品でまず思い出すのは松本清張の『砂の器』であり、それによってハンセン病についての知識は多少なり得ている。『砂の器』は昭和30年代に書かれた小説。近年でも映画やTVドラマで何度となく映像化されていることもあり、ハンセン病と元患者に対する世間の理解はもう少し進んでいるものだと思っていたのだけど、この映画から、「そうでもないのか?」と愕然となった。
人間は、大多数の一部であることに安堵し、根拠のないフツウを重んじる生き物。同じでないモノ、フツウでないモノを排除したがる生き物。
それがすべて悪いとは言わないし、そんなものに左右されるなとまでは言わないけれど、「無知は時として罪になる」ということくらいは知っておくべきなのだと、この手の作品を観るといつも思う。
”あん”の美味しさから行列が出来るようになったどら焼き屋。その”あん”を元ハンセン病患者が作っていると噂が広まると、ぱったり客足が途絶えてしまうどら焼き屋。
なんてあからさまな世間の反応だろう。
道徳を持ち合わせている一般の人々は、それを酷い事だと感じるだろう。
けれど病気について理解していても、噂が広がったこのどら焼き屋に通い続けることが出来るだろうか?美味しいからと友人・知人へのお土産として購入することが出来るだろうか?
「はい」と即答する人がどれだけいるか。きっとほとんどが言葉に詰まるだろう。何かしらの言い訳を考えるだろう。
世の中は、一筋縄ではいかない。
この映画からは、怒りや憤りというよりも、そんなどうしようもないモノに対するもどかしさを感じた。けれど、諦めているということではなく、努力は続いている、ということなのだと思う。
世間の無理解に苦しみながら、それでも逞しく明るく生きた徳江さん。希林さんの名人芸から、とても自然に受け取ることができた。
好感度:★★★★
無理解者の代表のようなオーナー夫人役の浅田さんも憎らしくってとても良かった。
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コメント
たいむさんおはようございます♪TB&コメント有難うございました♪
ハンセン病に関しては自分の周りに患者さんがいませんし、それこそ本作のような映像・または書籍などから得た情報のみなので実際の現状は分からないものの、それでも本作から垣間見るハンセン病に対する世間の無知と無理解がもたらす偏見の類は酷いし少し怖いなとも思いましたね。
あんなに評判の良かったどら焼き屋なのに、店員が病気持ちなんじゃないかと聞くと途端に閑古鳥・・。端から見れば憤りを覚えますけど、ただ自分も病気の詳細を何も知らず同じ立場だったらどうだろうか・・と考えさせられてしまう部分もありました。確かにもどかしいですよね。自分なら絶対そういう差別はしない!って断言出来るかと言えば、正直自信が無いですから・・(汗
あと希林さんはやっぱり凄かったですね。永瀬さんと普通に自然にやり取りしてる感じでもあったので、あんまり演技してるって風に見えなかった気がしますw
投稿: メビウス | 2015/06/06 08:54
■メビウスさん、こんにちは
良い映画でしたね。
この手の作品は偽善的な感想になりがちなのであまり書きたくなかったのですけど、放置もしたくない感じで。
希林さん、素晴らしかったです。
客はやたら平均年齢が高かった気がしましたが、自分もそろそろ仲間入り?とか思ったり。
投稿: たいむ(管理人) | 2015/06/09 16:14
いろいろと考えさせられる作品になっていました。
ハンセン病患者への差別…
無知の恐ろしさ…
それらを踏まえつつも、
何とも清々しいラストへ♪
とても素敵な映画に出逢えたと思います。
投稿: BROOK | 2015/06/17 16:49
■BROOKさん、こんにちは
決して面白い作品ではないので、若い人にはなかなか勧められませんが、いつか自ら思い立つ日が来るんじゃないかと思ったり。自分がそうだったし。
つつましく押しつけがましくもないけれど、メッセージが膨大にこめられた映画だと思います。
投稿: たいむ(管理人) | 2015/06/17 17:58
たいむさん☆
ハンセン病をテーマにした重たくなりがちな問題でありながら、明るく希望に満ちていて、心が軽くなってくる見事な映画でしたね。
それでも伝えたいことをしっかり伝えてくる。
最近はSNSですぐに無責任な噂が飛び交う時代です。
深く考えずにリツイートしていくことが噂を広める一因でもあることを改めて考え直してみたいと思いました。
投稿: ノルウェーまだ~む | 2015/07/25 22:58
■ノルウェーまだ~むさん、こんにちは
この病気をはじめ公害病やらアスベストがらみやら震災での原発問題も含め、今となっては訴訟や裁判での結果をニュースで見るくらいしかない第3者。それですら結局「最後は金目でしょ」という目でみてしまいガチですが、ソコではないところを見せてくれる優しい映画でした。
いろいろ難しいことなのですが、無知と無責任の意味と代償をしっかりと受け止めなければと思います。
投稿: たいむ(管理人) | 2015/07/26 12:50