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2015/02/23

「アメリカン・スナイパー」みた。

American_sniper

名匠クリント・イーストウッドが、米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員で米軍史上最強と言われる狙撃手:クリス・カイルの自伝を原作に、ブラッドリー・クーパー主演で映画化。
予告編で流されていた本編冒頭の部分。クリスは女、子供を撃つのか撃たないのか・・・。そして驚きのラストと静寂のエンドロール。
さすがイーストウッド監督であり、心に深く残る映画だった。

クリス・カイル本人の自伝が原作になっていることもあり、あらすじというより彼のプロフィールみたいになってしまうが、クリス・カイルは9.11後に志願して海軍に入隊。ネイビー・シールズ隊員になる為の厳しい訓練を乗り越え、優秀な狙撃手となって2003年から9年間に4度にイラク遠征したとのこと。そして初任務で多大なる功績をあげ、味方からは「レジェンド」と賞賛された。
しかし、強い信念と家族への愛情を持ちながらも、戦場へ赴くたびに彼の精神も蝕まれていき、親友や仲間の被弾や戦死の経験から、帰国していても常に心は戦場にあるという状態で病み苦しむことになる。

そんなクリス・カイルというひとりの男の内面までをイーストウッド監督は丁寧に描き、それに応えるようにブラッドリー・クーパーもクリスになりきっていた。(あの肉体改造は凄い)

また彼の愛国心であり、仲間を守るという強い意志は父親の影響から幼少期に既に培われたいたものだと知る。父親はそれを「狼と羊と番犬」という例え話で子供たちに教えていた。
クリスはいじめっ子という”狼”から弱き”羊”である弟を救う”番犬”だった。
そうして彼はアメリカ合衆国の番犬になっていった。戦場で160人以上もの人殺しを実行した彼自身に後悔の念はなく、むしろ当たり前のことだといってのけるほどに忠実に。

それでも、多数の敵に囲まれた状況での過酷な戦場を生き延び、敵の敏腕狙撃手:ムスターファの射殺に成功したこともあり、ようやくクリスも除隊して家族のもとへとを変える決心をする。
彼が精神的に安定を取り戻すのにどのくらい時間が掛かったのかは具体的には描かれていなかったけれど、やがて彼は同じように戦場で傷ついた退役軍人らに助力する活動を始めていた。
それなのに・・・。
無音のエンディングはこの映画を反芻するのに最適だった。

戦争と人間を考える作品。現実を知り、真摯に向き合うための作品だと思った。

好感度:★★★★++

映画を見ながら「狙撃手は捕虜にはなれない」という話を思い出した。
戦争であれ、狙撃だけは本人の意思によるは積極的な人殺し。クリスを殺害した元海兵隊員は何を思って彼を撃ったのだろう。

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コメント

ただの戦争アクション映画という感じではなく、
アクションと人間ドラマで上手く纏めていた感じですね。
この辺りはさすがイーストウッド監督だと思います。

クリスの最期にはかなり衝撃的でした。
まさか“仲間”に殺されてしまうとは…。
いろいろと情報が飛び交っていて、派遣時にイスラム教に改宗したテロリストなのでは?なんても言われています。

投稿: BROOK | 2015/02/23 13:49

こんにちは♪

本作は戦争どうこうじゃなく、現実と戦争を媒体に
PTSDを語った作品であるのは解るんすけど、戦争下
において、大きな功績を持つ人を英雄だ伝説だと称
すことになんか違和感を覚えちゃいましてね…。
そんなワケで、世間ほどに高評価とはいかずでした♪
(゚▽゚)v

投稿: 風情♪ | 2015/02/24 10:00

■BROOKさん、こんにちはsun
クリスの最後はビックリでしたね。
仲間の2人もですが、流れからなんとなくフラグがたったのは分かったのですけど。

まったく目の離せない戦争映画でした。

投稿: たいむ(管理人) | 2015/02/25 13:52

■風情♪さん、こんにちはsun
スナイパーであるクリスが英雄であるかはともかく、凄腕であり、狙撃で仲間の生存に大きく貢献したのも事実。
仲間からは伝説、敵からは悪魔、そういうことなんですよね。
戦争映画は完全なる俯瞰で描くことが難しいですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2015/02/25 13:58

始めは戦争映画と観ていたんですが、違いましたね。
命の重さ、人間が人間であるべき姿、考えさせられました。
このエンドロールの重みは語りつがれるでしょうね。

投稿: オリーブリー | 2015/02/26 00:48

■オリーブリーさん、こんにちはsun
イーストウッド監督ですし、「単なる○○」ってことにはなりませんね。
戦争を描くにしても、スポットの当て方で随分と違うものです。

ブラッドリーも頑張った!
また痩せちゃうのかな?
マッチョイケメン俳優はウエルカムなんだけど(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2015/02/27 09:23

たいむさん☆
さすがクリントイーストウッド!な作品でした。
何よりもっとも多くを語る無音のEDが見事でしたね☆
クリスを殺した元兵士が、いったい何を思って、どういういきさつで・・・なのか、知りたいですよね~

投稿: ノルウェーまだ~む | 2015/03/04 00:04

たいむさん、お久しぶりです。
今日やっとこの作品を見てきました。
クリスの運命は事前に知っていましたが、そこへ行きつくまでの行程が…さすがイーストウッド監督、見ている私たちまでも4度目の赴任では現地で実際に戦いの場に居合わせ、吐き気をもよおす血と硝煙の臭いに包まれてるような錯覚を起こしてしまいましたよ…

彼は米国にとって英雄だけど、イラクにとってはムスタファ同様「悪人」だったのですよね…
エンディングの実際の葬儀時の写真で称えられているのを見て何だかとても複雑な思いになり、終わってもしばらくシートで考え込んでしまいました。
戦争を美しく語る者を信用するな、と以前述べていたイーストウッド監督。そんな彼の手によるこの作品は、可能な限り多くの人が見るのが望ましい映画だと思います。負わされるものが重すぎますけどね…

投稿: 五郎太 | 2015/03/07 03:02

■ノルウェーまだ~むさん、こんにちはsun
お返事遅くなって済みません。
イーストウッド作品いハズレなし、ですね。

件の元兵士の裁判、気になるところです。
不穏な世界情勢、戦後生まれの日本人もいよいよきを引き締めなくてなならないのかも?

投稿: たいむ(管理人) | 2015/03/09 07:22

■五郎太さん、こんにちはsun
お久しぶりですね、また来てくれて嬉しいです・・と、「おとぎばなし・・」の新刊を読みつつ思い出していました。

戦地の臨場感、半端なかったですね。
私も判っていてもドキドキしていました。

正義は相対的なものと言いますが、本当に立ち位置によって180度変わってしまうのだから恐ろしい。
人間とはなんと愚かで不可解な生き物なのか、特に戦争映画を見るたびに思います。
全体を見る目を持ちたいものものですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2015/03/09 07:33

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