『ビブリア古書堂の事件手帖⑥』 三上 延(著)
毎度本題に入る前にプロローグでワクワク度アップさせてくれるシリーズだけれど、今回はそのお蔭で逆に安心して読める感じで個人的には助かった。結果ありきではないけれど、”無事”を先延ばしにされるのはあまり好まないので。
ということで、いきなりケガで入院している大輔くんが篠原智恵子に語る回想が本編になっていた。
栞子の『晩年』の焼失偽装を見破った何者かから栞子に脅迫状が届いたのと時をほぼ同じくして、その『晩年』を奪おうとして栞子に大怪我をさせた田中が現れ、それとは違う『晩年』の珍本を探して欲しいと依頼される栞子。
偶然とは思えないめぐり合わせと察した栞子は依頼を受け、大輔とともに嘗て田中の祖父が所有していたという『晩年』の軌跡を調査始める。
そこで47年前にあったさらに別の太宰の稀覯本を巡る盗難事件に行きつくことで、2人の祖父母の関与と、彼等をとりまく奇妙な縁に辿り着くことになった。
ひとつ謎が解明される度、ジグソーパズルのピースが嵌るなんて生易しい話ではなく、出来すぎってくらい芋ずる式に一気に話が繋がっていく。
雰囲気的には、横溝正史の例えば『犬神家の一族』とかの”金田一耕助”の謎解きを彷彿した。あまりに過去の出来事のであり状況証拠しかないので半分は憶測と推理だけれど概ね正解だろうといった真相。そして大黒幕の存在と正体なんかもそれっぽかったし。
でもそれだけではなく、大輔と栞子が彼氏彼女の関係になったこと、それを妹が吹聴して回っていることをやけに入れてくると思ったら、そこにも仕掛けがあって現在の事件に絡めているあたりは芸が細かく、巻を追うごとに巧さが増している気がした。
でも、やっぱり”古書が心底好きな人たちの恐ろしさ”を再確認するような6巻だったように思ったりした。
ただ栞子はそんな狂気を自覚し、自らを律するようになっており、それは大輔の影響なのだろうけれど、とにかく変わってきているように思う。
大輔も彼女のそうした欠点もひっくるめて本気で受け入れる覚悟を決めたわけで、なんかいいなーって応援したくなってきた。
あとがきによると、あと1-2巻でシリーズは終わるとの事。因縁めいた相関関係が明確となった今回で、篠原智恵子出自も大輔の想像どおりなのだと思う。
さてさて、どういう〆になるのかさっぱり見当もつかないけれど、見事な大団円を楽しみに待ちたいと思う。
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コメント
今回の一件で、栞子さんの母親に関わりのある久我山尚大という古書のためなら手段を選ばない人物がでてきますが、今後もまだ、彼の爪あとは残りそうな気がします。
そして、私が一番気になるのは栞子さんの母親が探しているという本の行方と内容です。晩年問題も片付いたので、ラストに向けて、その本が関わってくるのではないかと想像しているのですが…。
投稿: 日月 | 2015/01/14 13:02
■日月さん、こんにちは
本当になんだかスゴイ人が出てきちゃいましたね。
しかも因縁めいた血縁関係まで明らかになったりもして読みなが「うわ~(^^;」って感じでした。
既刊分を読み返していないのですが、そういえば探している本がありましたね。
それもなんだか因縁の本っぽくて薄ら恐い気がしてます。
投稿: たいむ(管理人) | 2015/01/17 08:56