« 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」みた。 | トップページ | 「楽園追放 Expelled from Paradise」みた。 »

2014/11/15

「紙の月」みた。

Kaminotuki

角田光代の同名のベストセラー作品の映画化。原作は未読。またすでにNHKにて原田知世主演でドラマ化されているとのことだがそちらも未視聴。
ということから、比べるものがないというのは幸せなことでもあって、ただただ「どうなってしまうのだろう」という思いだけで最後まで見入っていた映画だった。そして女優としてますます磨きがかかった宮沢りえには拍手。

外回り担当の銀行の契約社員で、控えめで平凡な妻であった主人公が巨額の横領に手を染め、果てしなく転落していく姿でありながら、逆に活き活きと美しく変貌していく主人公を描いた物語。

最初はほんの軽い気持ちで客から預かったお金を1万円借りて、次は感情的になったところでの出来心から200万円を横領。それがあっさり上手くいったのを幸いにして、あとはズルズルズルズル、手口も巧妙化。”贅沢”の値段にビビったのも最初だけ。けれどあっという間に理性も価値観も崩壊。あとは繰り返すのみ。
横領の動機ってのはやっぱり男。ただ最初から彼女をカモにしようと近づいてきた最低男に引っかかったわけではなく、いくつかの偶々の重なりから必然となった結果であり、彼女自身も分かってて、自ら欲望のままの夢(偽り)の世界を満喫することを選んだというものだった。そこはちょっと意外な展開。

でも、そうしてどんどん綺麗になっていく彼女が痛々しくって堪らなかった。終わりの予感は最初からあるわけで、迂闊な行動にはハラハラし、いつバレるのか?どう始末をつけるのか?見ていられないくらいソワソワする感じ。
けれど、結局のところ、彼女に対して擁護しようとかひとっかけらも思わないし、彼女が得た幸福感や高揚感は自分自身が同じ状況になってみなければ理解できないものなのだと思った。先輩の女性行員がそうだったように。
とにかく、そのシーンでの宮沢りえVS小林聡美の女バトルが実に見ごたえあった。(怖ぇ~)

とりあえず、大島優子も含めて女優陣の頑張りを評価したい映画だと思う。

好感度:★★★++

そもそも、何が一番最初の引き金になったのかと考えてみたが、旦那が無神経であり、妻に対してほとんど無関心だったからではないかと思う。もし彼女に同情するところがあるとすればそこかな?

| |

« 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」みた。 | トップページ | 「楽園追放 Expelled from Paradise」みた。 »

コメント

この時代って、女性にお茶汲みをさせるとか、ダンナが転勤になれば妻はついていくものだとか、そういう考え方がまだまだ大半を占めていた頃ではないでしょうか。

ですから彼女がこういう道を歩んだのも、ダンナのせいでもあり、ダンナを始めとする男たちのせいでもあるように思えましたよ。

投稿: にゃむばなな | 2014/11/18 23:27

■にゃむばななさん、こんにちは
この時代といっても、バブル崩壊もすぎたころで、単身赴任も一般的になってきたころに思います。

そもそも彼女にはそういう素質があった、そういうことに思えました。

投稿: たいむ(管理人) | 2014/11/21 17:30

こんばんは。
結局、梨花は何を望み求めていたのかがわからないまま終わってしまいましたね。
「1つ狂うと全てが狂う」を地でいく映画だったと思います。

投稿: FREE TIME | 2014/12/03 23:32

■FREE TIMEさん、こんにちは
彼女は自分でも分ってなかったんじゃないかなぁ。
転落の物語、物悲しさばかりが余韻に残りました。

投稿: たいむ(管理人) | 2014/12/10 09:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「紙の月」みた。:

» 紙の月/納得のTIFF観客賞・主演女優賞 [MOVIE BOYS]
2014年の東京国際映画祭で観客賞と最優秀女優賞の二冠を獲得した作品。原作は『八日目の蝉』の角田光代の長編小説。銀行勤めの平凡な主婦がとあるきっかけから起こした横領事件を描いている。主演は宮沢りえ。共演に『海を感じる時』の池松壮亮、『マザーウォーター』の小林聡美、元AKB48の大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司が出演している。監督は『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八。 ... [続きを読む]

受信: 2014/11/15 20:46

» 紙の月 [映画1ヵ月フリーパスポートもらうぞ〜]
評価:★★★☆【3.5点】(F) 始まりはお札一枚を借りただけなんだけどね〜 [続きを読む]

受信: 2014/11/15 23:01

» 『紙の月』 [こねたみっくす]
神様でも赦してくれない罪。それは果てしない金と性の罪。 これは美しき横領犯がその正体を暴かれるまでを描いたサスペンスでもなければ、愛に飢えた女の悲しき転落人生でもあり ... [続きを読む]

受信: 2014/11/18 23:27

» 『紙の月』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「紙の月」 □監督 吉田大八□脚本 早船歌江子□原作 角田光代□キャスト 宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、田辺誠一、近藤芳正■鑑賞日 11月15日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想>   原作は...... [続きを読む]

受信: 2014/11/25 17:31

» 紙の月 [映画的・絵画的・音楽的]
 『紙の月』を渋谷シネパレスで見てきました。 (1)東京国際映画祭での話題作(注1)ということもあり、映画館に行ってきました。  本作(注2)の冒頭は、賛美歌が聞こえるカトリック系の中学校の教室に独り机に向かって座っている女生徒の姿。机の上には1万円札が5枚...... [続きを読む]

受信: 2014/12/03 21:33

» 映画「紙の月」 [FREE TIME]
映画「紙の月」を鑑賞しました。 [続きを読む]

受信: 2014/12/03 23:17

« 「マダム・マロリーと魔法のスパイス」みた。 | トップページ | 「楽園追放 Expelled from Paradise」みた。 »