« 「あなたを抱きしめる日まで」みた。 | トップページ | 劇場版「名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」 みた。 »

2014/04/01

「ウォルト・ディズニーの約束」みた。

Saving_mr_banks

基本的に”ディズニー”作品には思い入れがないのでスルーすることが少なくない。アカデミー賞を取ろうが、どんなに楽曲が耳につこうが、自分で観たいと思わなければまず観ない。
この映画は予告編が面白そうだったから観ることにした。役者が揃っていて良かったしね。
そして『メリー・ポピンズ』の単なる制作秘話という範疇に留まらない2つの物語の絡み合いがとても良いと思った。
『メリー・ポピンズ』はたぶん1回か2回しか見たことがないと思うのだけど、この映画を踏まえたうえで見直してみたくなった。

予告編から受けた印象から、もう少しコメディタッチな作品なのかと思っていたのだけど、どうしてどうして、それこそ数あるディズニー作品のような砂糖コーティングされた夢物語ではなく、トラヴァース夫人がディズニーに要求した実写映画「メリー・ポピンズ」ような、奥深い映画になっていたと思う。

「メリー・ポピンズ」の映画化にはウォルト・ディズニーが20年かけて原作者であるP・L・トラヴァースと交渉にあたり、ようやく共同脚本ということで制作にこぎつけたものだった。しかしディズニーサイドが作りたい「メリー・ポピンズ」とトラヴァーズ夫人の思い描く「メリー・ポピンズ」との間にはとてつもなく大きな隔たりがあった。
ディズニー側の提案には一から十まで否定するか異議を唱えるトラヴァーズ夫人。歯に衣着せぬ彼女の口撃にはウォルトはじめ制作陣もタジタジ。彼女が納得しなければ作品は決して完成しない。すべてを御破算にしないためにも妥協を許さぬ彼女に懸命に食い下がるという、彼らの涙ぐましい努力があった。

彼女にとって「メリー・ポピンズ」とは何なのか?
何故彼女はあそこまで頑なに固辞しようとするのか?何を守ろうとしているのか?

それは同時進行するトラヴァーズ夫人の幼少期の物語で描かれていくことなる。それこそが「メリー・ポピンズ」の誕生秘話そのもの、彼女そのものだった。
幼き頃から彼女の想像力を養い、”(自称)トラヴァース夫人”を名乗らせるほど多大な影響を与えた父親の存在。そして同時にトラウマ的存在ともなってしまった父親。

どうして彼女があんな風になってしまったのかはだんだん理解出来てくるのだけど、どうしたら彼女の心を溶かすことが出来るか、どうやって彼女の首を縦に振らせたのか、中盤からはそんなことを思いながら見ていた。
そうして訪れた”凧をあげよう(Let's Go Fly a Kite)”  の完成は嬉しかったな。

まぁそれでもその後もひと悶着ふた悶着と一筋縄ではいかなかったようだけど、最後の説得に訪れたウォルト・ディズニーとその説得の仕方がとても気持ちの良いものだった。

トラヴァース夫人の裏表を見事に演じ分けていたエマ、ウォルトの説得力はトムだからこそと思われるものだったし、ダメ親父を演じたコリンもしかり。諸事情から鑑賞がやや遅くなったけれど、観て良かったと思う作品だった。

好感度:★★★★

EDで実際のやり取りが録音されたテープが流されていたけれど、本当にそのまんまだったようで思わず笑ってしまった。
「・・その”巻尺”は母親のお気に入りなのよ・・・」
ものさしではなく、巻尺に拘っていたトラヴァース夫人。そうした意味を聞けば納得だけど、小説はただ”巻尺”でそんなことは一言も書かれていないわけで、「そんなの書いてないじゃん!」っと突っ込みたくなる脚本家の心情を察するところ。ほかでも良くある光景なんじゃないかなって思ったり。
作者がどう思って、どんな想いを込めて文章を書いたところで、きっと読者はその半分も汲み取っていないのかもしれないね。

| |

« 「あなたを抱きしめる日まで」みた。 | トップページ | 劇場版「名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」 みた。 »

コメント

「メリー・ポピンズ」は未見ですが…
未見ながらもウォルトとトラヴァース夫人のやり取り、
さらにはスタッフたちとのやり取りはなかなか面白かったです。

トラヴァース夫人の「メリー・ポピンズ」に対する想いを、オーストラリア時代の回想シーンと上手く合わせている構成も良かったと思います。

投稿: BROOK | 2014/04/01 16:22

■BROOKさん、こんにちは
オリジナルの内容はあまり覚えていないのだけど、楽曲はとても有名で耳にしたことがある者ばかりですよね。
苦心の作だったこととか、意味を知ると感慨深いものがありますね。

媚びず、美化しすぎないかんじが良かったです。

投稿: たいむ(管理人) | 2014/04/02 17:31

こんばんは。

いわゆるDVD特典のメイキングではない、そこに至るまでの制作事情の裏側が興味深く、またひとつの映画として、ユーモアとドラマのバランスが良く楽しめる作品でした。
これ見たら「メリーポピンズ」が観たくなるよね。
トラヴァースって、近くにいたらなかなか大変な人だろうけど、どんな人か分かってしまえば付き合えるタイプかも(笑)
またそう思わせてくれるエマのお芝居と、トムの存在感はさすがでしたね!

今月はアメコミヒーローまでコレと言った映画がなくて、、、。
結局、なんだかんだと都合がつかず、ジュディお婆チャマをまだ見れてないの(苦笑)

投稿: オリーブリー | 2014/04/03 22:43

■オリーブリーさん、こんにちは
同じく、なんだか体調を崩したり、家事とか、仕事とか、忙しいというほどでもないのだけれど、映画に行くとか、PCに向かうとか、まとまった時間が作れないこの頃です。
それでも、この映画は観られて良かったです。
ちゃんと映画だったのがポイント高かったです。

結局「ローン・・・」は行けるかどうか。気晴らしも兼ねて「リベンジ・マッチ」も出来ればみたいし、なんとか時間を捻出・・と思っていたのだけど、こんどは歯医者の予約が微妙に邪魔してくれるのよ(泣)

そんなこんなであっという間にアメコミ週間になりそうだわ。
GWまでやっててくれたらよいのだけれど。。。。

投稿: たいむ(管理人) | 2014/04/09 19:51

ご無沙汰です~~。
あれ以来映画にはちょこちょこといってたものの、
ブログあっぷもできないくらいばたばたしておりましたww

思いのほかよかったのが、ダメおやじのコリンでした。
トムさんは、予告でも十分うまいなぁ~~って思ってたもので。
あの偏屈ばーさんをどう攻略するか・・・
このあたりが笑いとシリアス部分と交えて、
かなり面白く描かれていたのでは。。。と、
たいむさん同様観てよかったと思えた1本でした。

投稿: mariyon | 2014/04/10 17:50

■mariyonさん、こんにちは
映画もブログも完全に休止状態になってて、メールチェックがやっとのこの頃ですっかり遅くなりました。

コリンって顔からして、カッコよいのよりこういう方が上手いんじゃ?って思うのは私だけ?
一見素敵な父親でも本当はダメ親父、良かったですね。

トムの安定感はもはや言うまではなさそう。
あの実業家風のほほえみ、完璧です(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2014/04/16 07:44

こんにちは。
なんか出ている人すべての人がお見事って思うくらいの演技でしたね。

私も『メリー・ポピンズ』って1回か2回くらいしか見たことなくてなんか歌はすぐに思い出すのですがストーリーが思い出せずにいました(笑)

>後の説得に訪れたウォルト・ディズニーとその説得の仕方がとても気持ちの良いものだった

本当に誠意をもって話していたのが本当にわかってみててよかったです。

投稿: Nakaji | 2014/05/11 22:55

■Nakajiさん、こんにちは
良い作品でしたね。ってかそう見せられた?
なんというか、トムだからディズニーが納得する映画になったって感じ?
もちろん偏屈おばばもですけど(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2014/05/12 17:58

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「ウォルト・ディズニーの約束」みた。:

» 劇場鑑賞「ウォルト・ディズニーの約束」 [日々“是”精進! ver.F]
父娘の物語… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201403220000/ [CD] (オリジナル・サウンドトラック) ウォルト・ディズニーの約束 オリジナル・サウンドトラ...価格:3,675円(税5%込、送料別) 【送料無料】メリー・ポピンズ 50周年記念版 MovieNEX...... [続きを読む]

受信: 2014/04/01 16:20

» 「ウォルト・ディズニーの約束」 [或る日の出来事]
ていねいに、心のこもったドラマがつむがれていって好感。 映画「メリー・ポピンズ」は大好きだから、なおさら感動する。 [続きを読む]

受信: 2014/04/02 07:30

» ウォルト・ディズニーの約束 [心のままに映画の風景]
1961年、ロンドン。 パメラ・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)は、ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)が長年熱望する「メリー・ポピンズ」の映画化について話し合うため、ロサンゼルスへと向かう。 気難しい性格のトラヴァースは、アニメやミュージカルに難癖をつけ、スタッフの脚本や構想にも頑なで、一向に了解を取り付けられない。 手を焼くウォルトは、映画化の契約書に署名してもらおうとト...... [続きを読む]

受信: 2014/04/03 22:33

» ウォルト・ディズニーの約束 [映画的・絵画的・音楽的]
 『ウォルト・ディズニーの約束』を新宿武蔵野館で見ました。 (1)タイトルからはパスしようと思っていたものの、評判が良さそうなので映画館に行ってみました。  本作は、映画『メリー・ポピンズ』(1964年)の原作者であるパメラ・トラヴァース(エマ・トンプソン)...... [続きを読む]

受信: 2014/04/29 20:25

» ウォルト・ディズニーの約束 [C’est joli〜ここちいい毎日を♪〜]
ウォルト・ディズニーの約束 13:米 ◆原題:Saving Mr. Banks ◆監督:ジョン・リー・ハンコック「しあわせの隠れ場所」「アラモ」 ◆主演:トム・ハンクス、エマ・トンプソン、コリン・ファレル、ポール・ジアマッティ ◆STORY◆夢のある映画を作り人々を喜ばせてきた...... [続きを読む]

受信: 2014/05/11 23:02

» メリー・ポピンズが出来るまで、 [笑う社会人の生活]
3日のことですが、映画「ウォルト・ディズニーの約束」を鑑賞しました。 ウォルト・ディズニーは娘が愛読している児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化を熱望し、原作者パメラ・トラバースに打診する。 映画の製作者たちが提案する脚本のアイデアをことごとく却下、なぜ...... [続きを読む]

受信: 2014/10/20 00:45

« 「あなたを抱きしめる日まで」みた。 | トップページ | 劇場版「名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」 みた。 »