「あなたを抱きしめる日まで」みた。
フェスティバルでナンパされ、ちょっとした好奇心から身体をゆるし、妊娠してしまった18歳のフェロミナは、親から強制的に修道院へ送られてしまう。
修道院にはフィロミナと同じような未婚の母親とその子供たちが収容されていた。しかし純潔とか貞淑とかを重んじるカトリック系の修道院とシスターたちにとってフィロミナらは許しがたい存在でしかなく、侮蔑の対象として奴隷のように扱い、子供たちとの面会も自由にならない生活を彼女たちに強いていた。そして彼女たちの子供たちもやがては養子縁組という建前のもと、米国へと売られていくことになる運命にあった。
けれど養子縁組については、母親たちの同意の元に行われたことになっており、フィロミナも、今後子供と縁を切ることを謳った誓約書に「贖罪」として自らの意思でサインしており、母親たちが敬謙なカトリック教徒だったということが、事実を50年も隠匿させたという、なんとも皮肉な話にもなっていた。
それでも時代は変わり、とうとう息子を探そうと決意し、行動にうつすフィロミナ。幸運なことに娘の知人であるジャーナリストの協力も得られた。けれど頑なな態度を貫く修道院の非協力的な態度に有力情報は得られない。それでも、米国に養子に出されたことを突き止め、思いのほかあっさり息子の消息を掴むことになる。けれど・・・だった。
息子との再会を前に、「デブだったらどうしよう」「ホームレスだったら?」と、様々な思いを馳せるフィロミナがとてもキュート。不幸な過去を抱えた女性とも思えない彼女の純真さは信心深さの賜物か。(ハッピーエンド確定なベタなシンデレラストーリー好きはそれゆえにも思うが)。
もともとフィロミナは賢い人だったんだろうなって思う。ただ好奇心が旺盛すぎてしまった。息子が出世したのはアメリカでの家庭環境もあっただろうけれど、母親譲りの才能もあったように思う。(娘も出来が良さそうだったし)。
結局のところ、そうしたフィロミナだったからこそのあのラストになるのかもしれない。何度も何度も繰り返して考えたであろう彼女の出した結論は尊敬に値する。
まぁ寛大すぎるともいえる彼女の結論は、今だからこその第3者には若干しこりの残る部分もあるけれど、そこは同行したジャーナリストが代弁してくれているんだよね。
非人道的な事実、宗教的な思想はともかくとしても、人として気持ちのよい作品。良かった。
好感度:★★★★
アメリカ人にアイルランド系が多いのは移民が理由というだけじゃなかったんだね。全然知らなかった。逆にいえばアイルランド系が多いから養子(売買)もごく当たり前に行われていたのかと、変なところで目から鱗が落ちてしまった。
| 固定リンク | 0
コメント
一般論から言うと、あの修道院は赦せません。
でも信仰心の厚いフェロミナの立場で考えると、あの「赦します」という一言には熟考に熟考を重ねたうえでの答えなんですよね。
一時の怒りで出した答えではない答え。
ほんと、フェロミナという方は頭のいい方だと思いますよ。
投稿: にゃむばなな | 2014/03/17 17:36
■にゃむばななさん、こんにちは
フェロミナの赦しって、実はなんだかちゃんと報復にもなっているように思ったりして。
いまだにあの態度を取る頑ななシスターにとっては、フェロミナなんかに赦されるってきっと屈辱的なことのように思うので。
それが思索によるものではないにしても、やっぱり頭は良いんだと思います。世界が狭いだけで。
投稿: たいむ(管理人) | 2014/03/19 17:25
ジュディ・デンチの演技が愛くるしくって、
物語的にはシリアスなのですが、楽しめる感じもしましたね♪
記事にして欲しくないと言っていたフィロミナですが、
最後には記事にして欲しいと頼む辺り、彼女の葛藤も描かれていると思いました。
投稿: BROOK | 2014/05/17 14:46
■BROOKさん、こんにちは
そうそう、シリアスなのに、フィロミナの天然キャラから微笑ましいところがいっぱいあってシリアスになり過ぎないのが良かったです。
投稿: たいむ(管理人) | 2014/05/18 16:46
こんにちは♪
フィロミナの赦しますって言葉が本当にすごいって思いました。
私たちの気持ちは間違いなく同行した記者と同じ感情ですよね。
ジュディ・デンチの演技がとっても素敵で、かわいかったです。
ところで台風は明日にはそちらに上陸とか、
気を付けてくださいね。富山はやっと通り過ぎていきそうです。
投稿: Nakaji | 2014/08/10 20:20
■Nakajiさん、こんにちは
ジュディ・デンチ、可愛いですよね。
「M」のような出来る女も雰囲気出てましたけど。
アイルランドにこのような過去があったなんて一欠けらも知らなかったし、学ぶことの多い作品でした。
投稿: たいむ(管理人) | 2014/08/10 20:54