「終物語(上)」西尾維新/著
ファイナルシーズンとなる第3作目は『終物語(上)』。「おうぎフォーミュラ」「そだちリドル」「そだちロスト」の3篇で構成されており、自称忍野メメの姪と名乗る忍野扇によって暦の過去が穿り返されるといった内容。
3編とも謎解き仕立てで話は進行するため、いつものような脱線はほとんど見られず淡々事実が明らかになっていくのでテンポは良いのかもしれない。けれど、私は気持ちが悪くて気持ちが悪くて、何度も中断しながらやっと読み終えた感じだった。こんなにも嫌悪感が先立つ作品って、京極夏彦氏の『死ねばいいのに』以来かも。
とにかく、催眠術なのかなんなのか扇によって暦の思考が誘導されているようで、何でもかんでも言われるがままを受け入れ、言いなりになっていることすら正しい判断として気にしない暦は、まさしく”愚か者”に成り下がっている。それでも、最後は羽川の援護から暦も底力を発揮することとなり何とかふんばることができたけれど、この先もまだまだ扇の暗躍が続くのかと思うと気が重くなる、そんな『終物語』上巻だった。
内容は、阿良々木暦の“始点”ということで、暦の2年前、そして中学・小学時代の話へと遡るため、またしても新キャラが登場。けれど、表面上過去を清算するものとして描かれていることから、暦の昔馴染みでその人生に多大な影響を与えたといっても過言ではない少女:老倉育が新たにヒロインズに加入することはなさそうだ。まぁ既にあるその後のシリーズに影すら登場していない彼女だから当然なのだろうけれど、ちゃんと辻褄を合わせるように老倉のキャラの弱さが扇の発言にあり、話もとりあえず決着がついているので現在進行形としても再登場の可能性は薄そう。ただ、何故扇が暦の過去を蒸し返したのかがポイントにように思われ、この段階であえて記憶に戻された老倉との過去話が、扇の思惑とどうつながっているのかが気になるところではある。いったいどんな因縁が絡んでくるのか想像もつかいないのだけど。
いずれにせよ、いつも絶妙のタイミングで馴れ馴れしく近づいてきて、さらに確信的な情報を吹き込んで事態を促進させるような言動を繰り返していた謎めく忍野扇”のベールが剥がされ始めてきたということで、シリーズも本当に終わりに近づいているのだと実感するところではある。
けれど、実はまだまだ歯抜けで謎もたくさん残っているところに、新たなる謎が追加されたと言えなくもない。出し惜しみな作風ももう少しなんとかして欲しいところで、今回の謎解きも誰の目にも真実は明らかなのに、ただひとり暦だけが解らないことでグダグダと回りくどくページを重ねていたように感じる。百歩譲ってそれが扇による細工だとしても、今回の暦の頭の回転の悪さや判断力の低下は最悪といえる。これが続くのかと思うと、やっぱり気が重い。
あとがきでは「中巻」の可能性もほのめかされていた。でももはやそれが嬉しいと思えない私は予告どおりあと2冊で綺麗サッパリ終わってくれることを祈る。そして最終的に後味の悪い作品として完結しないで欲しいと願うばかりだ。
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コメント
お久しぶりです(`・ω・´)ゞ
映画の記事と共に楽しく拝見させてもらってますm(_ _)m
今回は久しぶりにまとも?な本だったなぁと安心したのと共にあとがき見て案の定の中巻の存在が出てきて辟易したのは私も同じです(ーー;)なぜなら戯言シリーズという前科がありますから・・・
私自身はそこまで悪いとは思いませんでしたが謎がすぐ解けた人には確かにまわりくどくてつまらなかったでしょうね(^_^;)私は全部の条件を見てから考えるタイプなので程よい感じだったのですが私が一番愚かな子だったのかなorz京極に似た気持ちの悪さってのは完全同意ですね。あれもわざわざ誘導する感じのあやつり人形みたいな視点ですし・・・謎自体が近年のコナンみたいな低品質ってのもありそうですが・・・
私は円盤も全部買っちゃってる人なんですが、今までも蛇足みたいな文章の集まりの奴もあるし、いくら言葉遊びが売りとはいえ商業主義でこれ以上変なの増やすのは信者としてもやめてほしいです(´;ω;`)そして傷物語の映画はどこいった・・・
老倉についてはたいむさんの考察に同意ですし、扇が老倉の転校について関わってることから多分西尾お得意の作品からの退場という扱いでしょうね・・・過去に触れた下りはそれこそ下巻に出てきそうな感じかなぁと私は思ってますが出てなかったら最終巻怖いなぁと思ってます^^;
伏線について述べられてますが・・・多分2巻じゃ回収しきれないでしょうね・・・もはや何がどうなってるのかすら確認できないくらいばらまいてますし・・・そこらへんも含めてこんなに長くしたような気もしますし・・・
長文レス失礼しましたm(_ _)m
これからも更新楽しみにしておりますヽ(・∀・)ノ
投稿: 瞬光 | 2013/11/18 18:10
■瞬光さん、こんにちは
こちらこそご無沙汰しています。
>今回は久しぶりにまとも?な本
そうですね、無駄話が少ない分そんな印象ではありましたが、私としては回りくどさはいつもと変わらないように感じて、やっぱり読むのに苦痛を感じてしまいました。
どうにかならないんでしょうかねぇ、この長さ。
いや、京極ファンの私なので分厚い本は平気だし、逆に京極本は読み終えるのが勿体無く感じてしまうくらい好きです。「死ねばいいのに」を除いて。でも本当に今回はそれに匹敵するくらいの気持ち悪さに襲われてしまい疲弊しました。
この手の作品は2度と読みたくないって思っていたのに、あと1冊ないし2冊続くかと思うととてもにつらいです。
それに本当にすべてをアニメかするんでしょうかねぇ。
そして映画はどのタイミングで差し込んでくるのか・・・。
>伏線について
>もはや何がどうなってるのかすら確認できないくらい
前作で時系列が多少なり整理できてなんとなく復習できた感じはあったけれど、既にすべてを手放して、唯一アニメの本放送と再放送を繰り返し見ている程度の私です。なのでとにかくいつか終わってくれればいいやな気持ちになりつつあります。アニメで蛇足の部分を省いた要点の部分だけで分かればいいやって感じに。
言ってもしょうがないことですが、人気に乗じてセカンドシーズを書き始めたのが間違いだったんじゃないかって・・・、なんてね。
もはやこんな感想しかかけないのが残念でなりません。
せめて、終わった時に「いろいろあったけど良かった」って感じに終わってくれると良いですね。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/11/20 16:29