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2013/10/06

「ランナウェイ 逃亡者」みた。

The_company_you_keep

ロバート・レッドフォード監督・主演の社会派サスペンス作品。
それにしても、原題は『The Company You Keep』なのに、どうして「逃亡者」なんて邦題にしちゃったのか。「逃亡者」といえば、やっぱりハリソン・フォードとトミー・リー・ジョーンズを彷彿しちゃうんだよね。
確かに主人公:ニックは”逃亡者”ではあったけれど、この映画はスリリングな追跡劇でのハラハラドキドキを楽しむようなものではない。見ごたえのある作品だけに、もう少し上手い邦題をつけられなかったものかと勿体無く思ってしまった。

1960年代の学生運動が盛んな時代、ベトナム戦争が引き金となって運動が過激化し、一部の学生たちがテロリストに変貌するといった実話を事の発端としてベースにした作品。
そのテロ集団”ウェザーマン”は連続爆破事件を最後にして忽然と姿を消すのだが、30年後、元メンバーの1人が逮捕されたことを切っ掛けに、野心家の若手新聞記者が過去の事件の真相を追い始めるというもの。

真実はともかく、シャイアくん演じる新聞記者:ベンは割とあっさり”ウェザーマン”のメンバーであるロバート演じる指名手配犯:ニック・スローンに辿り着くことになる。そこでニックは姿をくらまし、FBIに追われる”逃亡者”となるわけだけれど、そちらはただの流れでしかなく、あくまでもベンが物語のけん引役となって事件の真相から真実にたどり着くまで見どころとなる。(とはいえ、真実については見ている側には早々に大ヒントが与えられているので意外性はないのだけれど)。
その中でもベンと逮捕された元メンバーのシャロン・ソラーズの緊迫した会見のシーンが印象深い。本当の意味でそこから動き出したというところでもあり、そこで一気に惹き込まれた。
それでもスクープ至上主義体質で表面上の正義風を吹かすだけのベンのしつこさはウザく感じられるばかりだったけれど、真実にたどり着いた後、ニックによってグサリと刺された釘の意味を熟考して出した結論は記者としてのベンの成長を感じさせるものだった。
人間社会では、知らないほうが良いこととか、正論だけが正しいわけではないとか、やっぱりあるんだよね。

平均年齢が高くてベテラン揃いというところからも、概ね穏やかな雰囲気で進行していく展開。言葉がなくても伝わってくるようなベテラン同士のやり取りはどこも見ごたえがあったけれど、シャイアくんも負けないだけの存在感を主張できていたと思う。

何がってほどのことはないのだけれど、良い作品だったと思う。あえて音声をカットしたラストシーンも想像が膨らむもので良い余韻となった。

好感度:★★★★

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コメント

結構批判的なレビューが目立ち、鑑賞前はちょっと不安でしたが…
いざ上映が始まると、一気に惹き込まれました。
かなり面白かったです♪

そうそう、ラストの音声がカットされてのシーンは非常に良かったですよね。
ああいった演出、かなり好きです!

投稿: BROOK | 2013/10/08 15:09

■BROOKさん、こんにちは
そうですか、あまり評判良くないんですか、これ。
私は熟年による落ち着いた展開が嫌いじゃないですけど。

父娘の再会シーン。大げさに抱き着くこともなく、何を話しているのかはわからないまま、やがて歩き出してだんだん遠ざかっていくのをしみじみ見つめちゃってました。よいですよね、あの終わり方は。

投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/08 16:20

レッドフォード大好きだったので、
主演で幼い子供のいる設定に、ちょっと迷いましたが
観ておいて損はない秀作でした。

ただ、どこまでが事実かと言うことを全く知らなかったので、途中までは「大統領の~」の再来か・・と思ったり。

でも、脇が豪華でほんとうに見ごたえありました。

邦題・・・ひどすぎですね。

投稿: mariyon | 2013/10/10 11:02

こんにちは。

とにかく、この豪華メンバーを見るだけでも損のない作品でした。
シャイア君、良かったですよね。
そうそう、あのウザさがね~若さありきって感じで(笑)

確かに、邦題はちょっとジャンルが違うと思った。
でもこの原題だと、観客の興味を引く表現にするのも難しそう。

老けちゃったけど、レッドフォードっていつまでもレッドフォードだな~と思います(意味分かる?笑)

投稿: オリーブリー | 2013/10/11 11:54

■mariyonさん、こんにちは
そうですね、どこまで事実を取り上げたものなのかいまだにわかってませんが、私は基本的に時代設定以外は概ねフィクションと思ってみてたので違和感はなく。

評判はともかく、豪華な脇役陣は見ごたえあったし、中身も悪くないと思いました。

投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/11 15:59

■オリーブリーさん、こんにちは
ベテラン揃いの渋さ、見ごたえありました。
シャイアくん、なんとなくヒーローよりもねちっこくて往生際の悪いウザい役が似合いそうって思っていたけど、ばっちりでした。
実際も役どころもジジババに囲まれながらよく健闘してましたよね。

>レッドフォードっていつまでもレッドフォードだな~
ちょっと世代が違うけれど、言っている意味はたぶん、わかる、かな?(爆)

投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/11 16:10

こんばんは~♪
後にも先にも、レッドフォードらしい雰囲気に終始していた
作品という感じですよね~。
スーザン・サランドン以外は、やっぱりもう一世代若くして欲しかった(笑)
やっぱり経過年数とか、数字が出てくるんだもの、
最後までそのシニアなキャストと子供たち(孫にしかみえない)に違和感が~

投稿: kira | 2013/10/26 20:52

■kiraさん、こんにちは
>後にも先にも、レッドフォードらしい雰囲気
まぁ良い意味で分かりやすかったです。
でも、やっぱり年齢的な厳しさは否めず。
いくら自分でやりたい事でも、内容的に主演は考えても良いかもですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/27 15:26

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