『3月のライオン(9)』羽海野 チカ (作)
イジメ問題をなんとか乗り越え、高校受験を目前とするひなちゃん。「おじいちゃんを手伝いたい!」とやりたい事と気持ちはハッキリしているのに、今やるべきことを掴み切れないひなちゃんは進路に迷う。そこで零は気分転換にと学校で行う部活の”流しそうめん大会”に川本家を招待する。そして(まぁ”将科部”は特別だと思うけど)とても楽しそうな学校での零を見て、(将科部のような部が許される?)とても大らかで楽し気な校風であるところを気に入ったひなちゃんとあかりさんで、ようやく志望校を決定したひなちゃんだった。
けれど零が通う学校なだけあって、そこは偏差値高めの私立校。学力的にも川本家の経済事情的にも問題は小さくない。それでも家族に反対意見はなくそれぞれが奮起と覚悟を決め、零は家庭教師をかってでる。
零の川本家に対する思いはもはや恩返しを超えていて、あかりさんの言葉を借りて言うなら「家族愛」になっている。でもすでに零のひなちゃんに対する想いはラブに変化してきているだけにこれはちょっと痛い。零は子供なのに大人だから。
現段階では、ひなちゃんにとって零は「大切な家族のようなひと」という位置づけに感じられるけれど、憧れの人との初恋はひとつの区切りがつき、新たに始まる高校生活から、より多く零を触れ合い、知らない零を知るようになって、どう変化していくのか楽しみといったところ。
とはいえ、完全に川本家から”無害”と信用かつ信頼されている零だけに、どう転んでも後々色々と苦労するには違いなさそうなんだけど。(一皮むけば零はかなり独占欲が強いほうだと思えるし)。
後半は将棋メインの話ながら零の出番がほとんど無しという思い切ったネタ。けれど宗谷名人と幼なじみの土橋9段の静かな対戦から、当事者を含めそれを見守る棋士たち各々が新発見に嬉々したり決意を新たにしたり、といった話。
「家族」の大きさを感じる9巻。そして、人はひとりでは生きられない、ひとりでは生きていない、ということをいつも繰り返し認識させられる漫画だけれど、今回は川本家や土橋9段の家族の支えもさることながら、あの最強の宗谷名人にもちゃんと幼なじみがいて、”ひとりぼっち”じゃなかったこともなんだか嬉しくなってしまうものだった。
10巻に新しい風を期待したい。
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