「そして父になる」みた。
第66回(2013年)カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した話題作がやっと公開となった。 6年前に2組の夫婦の息子が出生時に病院で取り違えられた事実が発覚したことから、両家の戸惑い、とりわけ福山雅治演じるエリートサラリーマン:野々宮良多の苦悩や葛藤を軸として描かれた作品で、そうそう起こり得ることでもないけれど、思わず我が身に置き換えて見て考えてしまう映画だった。 そして、「父になる」というそのままの映画だった。
こうした作品の感想を書くとき、 親子の愛情だの絆だの、いかにもなコトバで分かったようなことは書きたくないと、知った風なことを書きたくないと いつも思ってしまう。 だからひとつだけ。 この映画を見て一番に感じたことは、「親」とは「なる」ものなのだなと。それからすると、野々宮良多はそれなりに家族を大事にしてきたけれど、”父親をやっていた”だけだったのだなと思えた。確かに子供が生まれれば夫婦は必然的に親になる。でも実際のところは子供が親にしてくれているってことが解ってこないうちは「やっているだけ」なのかもしれない。 クールで優秀でエリートの 野々宮良多と、だらしなくて うだつが上がらない斎木雄大はタイプとして正反対。けれど、雄大は子供から見てめっちゃカッコイイお父さんだった。 まぁどっちが良いかはさておき、この対比はとても分かりやすいく、親である前にまずは人間性が重要であることも痛感させられる。 ひとり蚊帳の外に立たされたとき、やっと良多はこれまで見えていなかったものを見ることができるようになり、自己中心的でしかなかった自分と向き合い、過去の自分との決別を果たす。 実際問題としては、親よりも子供が一番の被害者。まだ幼い子供たちではあったけれど親の都合であれこれ決めてしまうのはいかがなものかとずっと思っていただけに、最終的に両家(というか野々宮家?)の出した結論は理想的なものと思ったのだけれど、どうなんだろう?ただこの取り違いには衝撃の事実も隠されていて、現実的にこのようなことが起こっていないことを祈るばかり、といったところ。 シビアな状況をとても素直に表現していて必要以上に美談だの感動ものにしていないところがとても良かった。それでも所々でグッときちゃう感じだったけれど。 好感度:★★★★++
そうそう、ピアノ曲:ゴルトベルグ変奏曲の「アリア」の持つ独特の雰囲気がとても良く合っていた。アニメ『時をかける少女』にも使用されていて、サントラでたまに聴くのだけれど。
| 固定リンク | 0
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「そして父になる」みた。 :
» 劇場鑑賞「そして父になる」 [日々“是”精進! ver.F]
本当の家族になるということ…
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201309240003/
【送料無料】そして父になる [ 是枝裕和 ]価格:690円(税込、送料込)
【送料無料】【予約・新作+もう1枚でポイント3倍】そして父になる オリジナル・サウンドトラッ...価格:2,52...... [続きを読む]
受信: 2013/09/26 16:16
» 映画『そして父になる』 [健康への長い道]
カンヌ映画祭審査員受賞で話題、新宿ピカデリーで先行公開中の『そして父になる』を観てきました。福山さん目当てか、女性客の比率が高いように思います。 Story 学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員・野々宮良多(福山雅…... [続きを読む]
受信: 2013/09/26 23:44
» そして父になる [心のままに映画の風景]
大手建設会社のエリート社員、野々宮良多(福山雅治)は、学歴、仕事、家庭と勝ち組人生を歩んでいる。
都内の高級マンションで、妻みどり(尾野真千子)と6歳になる息子慶多と何不自由のない暮らしを送っていたある日、慶多が病院内で取り違えられた他人の子供だったことが判明する。
相手方は、群馬で小さな電器店を営む斎木雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)夫婦。
病院側から「交換...... [続きを読む]
受信: 2013/09/27 13:13
» 血の繋がりや年月よりも・・・。『そして父になる』 [水曜日のシネマ日記]
カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した是枝裕和監督の最新作。子どもの取り違えという出来事に遭遇した家族の物語です。 [続きを読む]
受信: 2013/09/27 19:15
» そして父になる [勝手に映画評]
第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞受賞。10分間にも渡るスタンディングオベーション。それは、是枝監督が退場しなかったらいつまでも鳴り止まなそうだったので退場したと言うくらい。また、審査員長のスティーブン・スピルバーグは初めて見た時から本作品が賞に値するとい...... [続きを読む]
受信: 2013/09/29 16:31
» そして父になる LIKE FATHER, LIKE SON [映画の話でコーヒーブレイク]
今週末から公開かと思っていたら…先行上映なるのもがあったのですね。
どうせ東京だけでしょ。横浜じゃ先行はないな〜。と思い、
「マン・オブ・スティール」3D字幕の上映館を探していたら、最寄りの映画館でも
横浜の映画館でも「そして父になる」の先行上映をやってる...... [続きを読む]
受信: 2013/09/29 22:24
» そして父になる [だらだら無気力ブログ!]
見応えあって考えさせられる一本 [続きを読む]
受信: 2013/09/30 01:14
» 『そして父になる』 血か情か? [映画のブログ]
かつて社会問題になるほど頻発した「赤ちゃん取り違え事件」。
『そして父になる』は1977年に発覚した事件を参考にしつつ、赤ちゃんを取り違えられてしまった二家族の苦悩を描く。
現実に取り違えられた二人の女の子がたどった人生は、奥野修司氏が『ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年』に著している。
だが、映画の公開時点で42歳になる彼女たちには、今の生活がありこれからの人生もあ...... [続きを読む]
受信: 2013/09/30 01:43
» そして父になる : 父親とは不器用なもんですよね [こんな映画観たよ!-あらすじと感想-]
今日は、久々の30度超え。全くもって、おデブさんには辛い世の中になってきたもんです。そんな中、消費増税が発表されますが、その後の経済の流れ、格差問題、どのようになって [続きを読む]
受信: 2013/10/01 14:02
» そして父になる [みすずりんりん放送局]
『そして父になる』を観た。
【あらすじ】
申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた野々宮良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する。...... [続きを読む]
受信: 2013/10/01 19:32
» 『そして父になる』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「そして父になる」 □監督・脚本 是枝裕和□キャスト 福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、 黄升?、風吹ジュン、國村 隼、樹木希林、夏八木 勲■鑑賞日 9月28日(土)■劇場 TOHOシネマズ...... [続きを読む]
受信: 2013/10/05 12:27
» そして父になる [にきログ]
こちらカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞した作品ですね
是枝監督監督作品は「誰も知らない」以来の鑑賞ですね
いやぁ面白かったです
この監督はやっぱりTVドラマよりも映画畑の人間ですね
あらすじ
申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたこ...... [続きを読む]
受信: 2013/10/06 03:03
» 「そして父になる」 言葉の少なさがリアリティを生む [はらやんの映画徒然草]
6年間育てていた子供が実は他人の子供だった。 その事実に直面した2組の家族・・・ [続きを読む]
受信: 2013/10/06 17:54
» 映画「そして父になる」 [FREE TIME]
話題の映画「そして父になる」を鑑賞しました。 [続きを読む]
受信: 2013/10/06 18:43
» そして父になる 子が父を育てるんだな~(実体験として) [No War,No Nukes,Love Peace,Love Surfin',Love Beer.]
【55うち今年の試写会6】 うちの娘2人が中高生の頃、我が家のあちらこちらには娘たちが可愛い盛りの頃の写真を飾りまくっておいて、反抗期の娘の言動によって衝動的に生じる娘への「殺意」は、その写真を見ることによって解消していた…、わかる人わかるでしょ。
申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育て...... [続きを読む]
受信: 2013/10/06 21:05
» 映画『そして父になる』観たジ━━…(〃´-`〃)…━━ン [よくばりアンテナ]
公式サイトはコチラ
赤ちゃん取り違え事件なんて今の時代にありえないと思っていたけれど、
みている間に
もしも自分の子どもが取り違えられていたとしたら・・・・と
考えずにはいられない、そしてことの重大さに、衝撃を受けるのです。
エリート意識の強い、人生において勝ち進んできた男・野々宮良多(福山雅治)と
みどり(尾野真千子)の6歳の息子・慶太が他人の子どもだと判明。
...... [続きを読む]
受信: 2013/10/09 15:49
» そして父になる [映画的・絵画的・音楽的]
『そして父になる』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)あちこちで流される予告編で本編を見た気になってしまい、わざわざ行くまでもないのではと思い始めたものの、これほど評判の作品ならばやはり見ておかなければと考え直し、映画館に行ってきました。
映画の始...... [続きを読む]
受信: 2013/10/10 20:44
» 是枝裕和監督、福山雅治主演『そして父になる(LIKE FATHER, LIKE SON)』 [映画雑記・COLOR of CINEMA]
注・内容、台詞に触れています。第66回カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞した是枝裕和監督最新作『そして父になる』出演は福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、樹木希林、夏八木勲、他 物語・学... [続きを読む]
受信: 2013/10/11 20:30
» 子の心、親知らず~『そして父になる』 [真紅のthinkingdays]
大手ゼネコンに勤務し、都内の高級マンションに住む野々宮良多(福山雅治)
は、いわゆる 「勝ち組」 のエリートサラリーマン。妻みどり(尾野真千子)、一
人息子の慶多(二宮慶多)と、平穏な暮らしを営んでいた。 お受験に成功した
慶多の小学校入学直前、ある知らせが一家にもたらされる。
カンヌ国際映画祭において審査員賞を受賞、絶賛を浴びた話題作。日常に即
した家族関係を描き続け...... [続きを読む]
受信: 2013/10/14 18:45
» そして父になる 感想♪ [★ Shaberiba ]
そして父になる---まさにそんな作品。秀悦! [続きを読む]
受信: 2013/10/19 18:25
» そして父になる [タケヤと愉快な仲間達]
【監督・脚本】是枝裕和 【出演】福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、黄升?、風吹ジュン、國村 隼、樹木希林、夏八木 勲
【解説】
『誰も知らない』などの是枝裕和監督が子どもの取り違えという出来事に遭遇した2組の家族を通して、愛や...... [続きを読む]
受信: 2013/10/20 06:55
» そして父になる [C’est joli〜ここちいい毎日を♪〜]
そして父になる
13:日本
◆監督:是枝裕和「奇跡」「空気人形」
◆主演:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、二宮慶多、黄升げん、風吹ジュン、國村隼、樹木希林、夏八木勲、中村ゆり、ピエール瀧、高橋和也、田中哲司、井浦新
◆STORY◆学歴、仕...... [続きを読む]
受信: 2013/11/25 12:36
コメント
たしかに野々宮家と斎木家の対比がとても分かりやすかったと思います。
正反対に描くことで、取り違え問題を上手く浮かび上がらせていたような気がしますね。
最後に良多の下した決断…
やはり6年間という時間は奪えなかったということですね。
投稿: BROOK | 2013/09/26 16:20
■BROOKさん、こんにちは
こればっかりは当事者になってみないと・・といった感じ。
でも、生活レベルとか相容れないところはあったにしても、どうにもならない環境でもないのに、どうしてパッキリと割り切ろうとするのかがずっと疑問だったけれど、最後の最後に出した結論にホッとしました。
何を一番に考えなければならないのか、互いに歩み寄らなくちゃね。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/09/26 16:30
こんにちは。
静かな空気でした。
セリフなくともワンカットごとで見せる感情の起伏に、自然と涙が溢れてきました。
なんと言うか、それこそ数ヶ月の赤子だったら、泣く泣く交換できても、早い内がいいって、全然早くないし(汗)
もうそんなことは出来ない年齢ですよね。
この2家族には、特質な出来事でしたが、父として、母として、成長していくという共通項は誰にも同じ。
子育て終えて振り返ると、反省ばかりですが(苦笑)
投稿: オリーブリー | 2013/09/27 14:54
■オリーブリーさん、こんにちは
私も号泣とか嗚咽とかいうのではなく、自然と込み上がってきたものから震えがくるような、そこからポロポロっと涙がこぼれる感じでした。
それに6歳って全然早くないですよね。
1年生でも自分たちがおかれた状況を想像できないほどではないだろうし。
親に怒られた反動で、自分は橋の下で拾われた子なんだって逆切れ発言もできちゃう年頃ですよね?
ああ、でも本編でも言っていたけどその手の感覚は「時代」が違うのかな?
昔は「取り違え」を扱ったドラマとか漫画とか結構あった気がするけれど、最近はない?ありえなくなってるし。
受賞も納得の良い作品でしたね。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/09/27 17:03
こんばんはー^^
号泣って感じじゃなかったねー^^
でも、自分についつい置き換えて鑑賞しちゃいました。
自分の立場だったらと思うと辛かったわ。
あーだこーだと振り回される子供が一番可哀想だよね。
投稿: みすず | 2013/10/01 19:31
■みすずさん、こんにちは
そう、子供が一番の被害者ですよね。
そこをまだ小さいからって勝手に決められちゃあ「なんで」ですよね。
ようやくたどり着いた結論にホットしました。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/02 09:14
実の子が取り違えていた事を知って、血のつながりを選ぶのか、愛した時間を選ぶのか、お互いの夫妻にとっては難しい問題だったと思いますが、その答えは子ども達が導いてくれましたね。
いろいろと考えさせられた映画でした。
投稿: FREE TIME | 2013/10/06 18:54
■FREE TIMEさん、こんにちは
なんであんなにハッキリと割り切ろうとするのかずっと疑問でした。
親だけの勝手な判断に対して、子供たちがよく頑張ったなぁって思います。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/07 14:32
自分なら、100%育てた方を選ぶと思っていました。
でも、そんな簡単なものじゃない。
どう転んでも、親も子も大きなトラウマを
これから超えていかなければならない。
そこを考え出すと、結論など出るはずもなく
ただ、ただ、つらくて。
子供に一番いい選択なんて、結局ありえない。
一生比べる対象を作ってしまった、
それは兄弟とかでなく。。。
これから成長していく2人。
離れていても、近くにいても、仲良くても疎遠でも
悪い方に転がるのが当然で、
それが心底いい関係になるって、奇跡のようなものだし。
ラストはほんとうにあれしかないです。
だって、また、時がたてば別のラストになる。
ラストはないってことですから。
ガリレオと同時期公開でなくてほんとよかったです。
できれば、凶悪もづらしてほしかったけど。
投稿: mariyon | 2013/10/10 11:09
■mariyonさん、こんにちは
どちらで暮らすにしても、2組の家族は「比較」から逃れられない一生を暮すことになるんですよね。それがなによりも切ないです。
希望はあっても正しい答えなんてないですもんね。
とにかく、難しい問題を丁寧に扱った良い作品だったとは思います。
また実話としてTVドラマがあるようですが、そっちはあまり見たくないかも。生生しそうで。
ハリウッドのリメイクは見るかもだけど(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/11 15:53
6年は大きい。私はねきっと迷わなかったと思います。
でも相手の家族にもよるかな。どちらももう我が子。
幸せになって欲しい。ソレが親の願い。
結局この家族はこれからも親交を続けて行くんだと思う。きっと---。
とはいえやっぱ被害者は子供。最後まで聞き分けき分けのよかった慶多くんのラストの行動には 爆泣きしちゃいました。福山さんが流した涙もそうですが、言葉がない分いろいろな思いが見えてヤられたんだと思う。
こういう演出なんか好き。惹かれました!
見逃さなくて良かった~!
投稿: くろねこ | 2013/10/19 21:49
■くろねこさん、こんにちは
子を持つ親の立場だと感慨もひとしおでしょう。
親の立場として自分だったら・・・ってね。
実際のところ、この先2組の家族が親交を深め、続けていくのかは微妙なところで、あとは祈るばかり。
一生比較され続ける子供たちが、必要以上に苦しまずに育って欲しいものですね。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/10/22 16:13