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2013/02/18

「横道世之介」(試写会)みた。

Yonosuke

原作は未読。映画『悪人』と同じく吉田修一氏原作とのことだが、今度は“青春小説”を映画化したものであり、『悪人』とはまったくといって雰囲気の違う作品になっている。(監督もタイプが違うし)。
ノリだけでいえば、沖田作品では『南極料理人』に近いかな?(個人的には『キツツキと雨』の方が好みなんだけど)。
若さゆえの勢いとか、過ちとか、男同士の内緒話、恋愛模様、日常生活において自然に生まれるスの可笑しさにクスクス笑っちゃうエピが満載の作品。ただ間のある作品に慣れていないと無駄に長いと感じたり、伝わり難いと感じちゃうところはあるかも。

横道世之介は、そのインパクトある名前と愛すべきキャラクター性から出逢った人々の記憶の片隅にへばりつき、月日が流れても何かの弾みでふいに思い出してしまうような男である。特別優秀でもバカでもなく、適度に空気を読み、適度に鈍感で、適度に調子よく、適度に親切で、それなり面倒臭がり、それなりに欲望もあり、それなりに一生懸命に、まっすぐ生きている一般男子。
映画では、そんな世之介が大学進学のために長崎より上京してからの1-2年間を追うように描かれているのだが、時折、それらのエピソードとリンクするようにして十数年後の友人たちの現在の姿を見せつつ、その1-2年間での出来事を思い出し、世之介を懐かしむようなシーンが挟まれることになる。
そこで共通しているのは誰もが世之介とのエピソードを思い出すと何故か笑ってしまうところ。ただ、そこには友人たちが「彼の現在を知らない」という大前提があるのだけど、とにかく世之介のような人間の愛され度というのは、過去も現在もきっと未来でも変らないのだろうと、少しばかり羨ましくなりつつ、「いるよねー、こういう奴って」と、懐かしの友の顔を思い浮かべる感じだった。

予告編を見ていればネタばれでも何でもないし、知っていたほうが話の流れが理解しやすい事のであえて書くが、実は世之介は35歳で他界をしている。人助けで電車事故に巻き込まれるようにして。けれどそれは決して”泣かせ”を狙ったものではなく、その哀しき事実は事実としても、そこを一気に通し越して笑顔に昇華させてしまうという物語だ。

高良くんは世之介役を好演、吉高ちゃんもお嬢様に成り切りっての七変化を上手く演じていた。もし彼らの姿に自分自身の記憶を呼び起こし、同じ心境に辿り着けたとしたら、笑顔で劇場を後にできる、そんな作品だと思う。

好感度:★★★++

世之介が帰省したときの路線バスのナンバープレート[55-38](ゴーゴーサンバ)に、思わず吹き出してしまった私。偶然じゃないよね?

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コメント

今夜試写会に行ってきました。

路線バスのナンバー、見落としてしまいました(汗)
たいむさんのレビューを読んで、念頭に置いておいたはずなのに…。


作品は、中盤で明かされる“事実”はチラシ等でネタバレしているので、さほど驚かず。
それよりも、たくさんのエピソードでクスクスと笑う感じでしょうか♪
非常に心温まる作品でしたね♪

投稿: BROOK | 2013/02/20 00:01

■BROOKさん、こんにちは
あはは、見逃しましたが。>ゴーゴーサンバ
私って、映画に出てくるナンバープレートってつい見ちゃうんですよね。
「踊る大捜査線」で鍛えられちゃった(笑)

やはり「事実」は知っていてこそ、みたいですね。
それで16年後と16年前の行ったり来たりがすんなり頭に入って、感慨を深める感じかも。

些細な日常にたくさん笑わせてもらいました。

投稿: たいむ(管理人) | 2013/02/20 15:04

こんにちは。

バスナンバー、GO!GO!サンバ!(^^)になってたのですね~。
(あ~ん。見逃しました。最初の方のは確か33-66だったような…:←ここまではチェックしてた私:笑)。
サンバって確かジーコ監督の時にも流行しましたよね。

吉高ちゃんのお嬢様っぷり、良かったですね~。
ぐるぐるカーテンに巻き付いたり、私がお見送りいたしますわ、は可愛らしくって、ポーズして座るところはこれぞ!お嬢!でした。

天性の愛おしさを持ってる世之介が側にいてくれたら
悩み事にもふふっって微笑んで、おしっ!って頑張れそうです。

んふ♪。私も、笑顔で劇場をあとにした人で~す

投稿: みぃみ | 2013/02/26 11:34

■みぃみさん、こんにちは
けっこう車のナンバープレートで遊ぶ監督さん多いですよねw
カメラにバッチリ写っている時は概ねなんか意味があるのよね(笑)

>吉高ちゃんのお嬢様っぷり
微妙に品のないお嬢様だったけど、成り金お嬢様のノリが吉高ちゃんにぴったりだったです。
ただ、ぐるぐるカーテンは予告で見せちゃってたのよね。勿体ない!

決してハッピーエンドではないのだけど、笑顔になれる映画でしたね。

投稿: たいむ(管理人) | 2013/02/26 21:03

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