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2013/02/08

「もうひとりのシェイクスピア」みた。

Anonymous_2

英国王室が絡んだ作品は面白いものが多いけれど、この映画ではエリザベス朝にシェイクスピアが掛け合わされ、大胆な仮説がダブルで楽しめるようになっていて、歴史サスペンスとミステリーを存分に堪能させてもらった。
ただ邦題は少しニュアンスが違っているように感じた。“もうひとりいる”って感じの話じゃないからね。でもまぁ大きな意味では間違いではないし、この邦題だから目に留まったってところもあるか。

シェイクスピアの作品は「4大悲劇」はじめ、有名な作品は結構読んだと思うのだけど、特別好きでも嫌いでもなくといった感じ。「別人説」も言われてみれば聞いたことが有る様な・・といったところで、「諸説あるけれど・・・」と前置きされた上ではじまるこの映画の、なかなかに黒々しい仮説はとても良く出来ていて面白かった。
予告編でもわかるように、この作品では一般的別人説から「シェイクスピアは英国貴族の第17代エドワード・オックスフォード伯だった」という説を採用したもので、貴族の身分で戯作を書くなど許されなかったことから、オックスフォード伯は自ら選んだ戯作者のゴーストライターとなり、世間に自分の作品を発表しようとするわけだ。そして思惑とは食い違いを見せながらも、発表された作品は民衆に影響を与えることになり、時代は動きはじめ、隠されていた歴史までもが紐解かれていくことになる。

映画では、「シェイクスピア」の有名作が劇中劇としていくつか上演され、有名なセリフにニヤリとしながら聞き入ったりするのだけれど、基本的にはオックスフォード伯の人生が中心として描かれ、時間軸も過去と現在を行ったり来たりしながら、少しずつ話が進むかたちになっている。おかげで頭の切り替えが大変なのだけど、とにかく彼の人生は常に過酷で誤算だらけだったというのが良く分かる。
後見役の掌の上で踊らされ、“シェイクスピア”は欲深い男に奪われ、信じた男には最悪のタイミングで裏切られてしまうオックスフォード伯。さらに付きつけらえた衝撃的なわが身の出生の秘密。
結局、老いた彼が唯一許されたのは「匿名」で書き続けることだけ。それによって大切な息子の命を救うことは出来たけれど、これまで引き換えにしてきた全てのものの大きさを思うと、切ないやら、悔しいやら。

ひとつの仮説として、とても見応えのある作品。
英国王室の歴史について、多少なり知識があるとより楽しめる作品かもしれない。例えば映画の『エリザベス』『ゴールデン・エイジ』『ブーリン家の姉妹』とかを観ているだけでもだいぶ違うんじゃないかな?

好感度:★★★★

それにしても、英国王室のいじられっぷりは凄いよね。

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コメント

単なる作者別人説かと思っていたのですが、まさかこんなドロドロした話になるとは驚きでしたよ。
いや~この時代に比べると昨今の英国王室は大人しい方ですね。

投稿: にゃむばなな | 2013/02/08 22:22

■にゃむばななさん、こんにちは
こんなにも話が広がるとは思っていなかっただけに、まさかなドロドロ加減がツボに入りましたよ。

ほんと王室も随分と変りましたね。でももし、ダイアナさんが生きていたらどうかしらね?

投稿: たいむ(管理人) | 2013/02/09 16:41

たいむさん☆
単なる別人説だけじゃないところに、度肝を抜かれました。(笑)
時代がいったりきたりするので、途中混乱仕掛けたりして・・・
しかしオックスフォード伯は不幸だったかというとそうでもないかも。なにより彼の作品は彼の望みどおり今でも『生き』続けていますからね。

投稿: ノルウェーまだ~む | 2013/02/14 22:37

■ノルウェーまだ~むさん、こんにちは
そそそ。予告編にはいい感じにミスリードされたところもあって、意外な方向に転がり始めたら喰いいるように観てしまう感じでした。

で、そうそう、オックスフォード伯の顔がどんどん疲れてくる割には、何であれ作品を発表出来ることの方が大事で幸せみたいなところがあって、他人に託して安らかな死を迎えたって感じに思いました。

焼け焦げの原稿はどうしたんでしょうね?発表後に焼いたのかな?

投稿: たいむ(管理人) | 2013/02/16 08:18

>ひとつの仮説として、とても見応えのある作品。

歴史、謎、愛憎などなど、エンタメにもってこいですよね。
役者さん達が上手だったわ!
映画の醍醐味を感じる作品でした。

投稿: オリーブリー | 2013/02/16 11:27

■オリーブリーさん、こんにちは
>歴史、謎、愛憎などなど
この時期の英国のお話だから尚更にね(^^)

これぞ映画って感じで、私も堪能しました!

投稿: たいむ(管理人) | 2013/02/16 16:07

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