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2013/01/21

「スリジエセンター1991」 (著)海堂 尊

Surijie1991『スリジエセンター1991』は、『ブラックペアン1988』、『ブレイズメス1990』の続編であり、シリーズ完結編になっている。既に“桜宮サーガ”の本線だった(はず)の「田口&白鳥」シリーズも『ケルベロスの肖像』を持って終了していることから、またひとつ続きを待つシリーズが終わってしまったのが少し寂しい。
しかもこの『スリジエセンター1991』は既に確定している未来から、間違いなく残念な気持ちになるであろう展開になることが最初から決定的で、意識的にも無意識的にもつい読むのを先延ばしにてきたものでもある。そしてようやく読み始めても読み進むにつれて、表にも裏にも鳴り止まない不協和音が一層の激しさを増して行き、やがて容赦なく桜の新芽を根こそぎ摘み取ってしまうような、予想どおりに今までで一番切ない結末が待っており、涙した私だった。

今作は、「スリジエ・ハートセンター」の設立が如何にして頓挫してしまったのかという謎がついに明らかにされることになる。そして天城と世良のその後。うぅ...weep
世良はのちに『極北クレイマー』で電撃的な再登場をはたし、『アリアドネの弾丸』や『浪速モンスター』では不気味な存在感をチラつかせ、『極北ラプソディ』では私的な部分で救済されることになるが、渡海先生といい、天城先生といい、準じる速水にしても、このシリーズに登場した天才たちの末路は哀しいものばかりだ。(未来から逆算した予定調和になってしまうのは仕方がないが、実に酷な話だ)。

とにかく、佐伯病院長から招聘されて「スリジエ・ハートセンター」の創設を丸投げされた天才外科医:天城と、天城の世話係に定着した世良の前に立ちはだかる最大の敵が、身内である高階先生だということは前作の時点で判っていたことだが、本当に何から何まで高階先生が仕掛け人となり、藤原婦長までもが加わって余計なことをしてくれたもので、ものの見事に全てをぶち壊しにしてしまうのだから何だか2人が恨めしくなってくる。(もちろんすべてが思惑どおりに運んだわけではなく、誤算あり代償ありではあったけれど)。
そして結果論になるが、十数年後の現在にあたる「ケルベロス・・」ではこの時の事を後悔しまくっている高階病院長だ。そう思えば、天才と凡人の視野の差であり、先を見越す能力的時差といった、どうしようもない運命的な悲劇というものなのかもしれないが、どうにもやりきれない。
そんな失敗の経験があって、狸オヤジ“高階病院長”が完成されるのだろうけれど、とにかくここでは「なんてことを!」と非難したくなるような、世良が東城大を去ってしまうも頷けるような話になっている。(ちなみに、彦根が現在に至った原点ともいえるエピソードもここにあった。世良と懇意なのもなるほどといった感じ)。

“桜宮サーガ”も随分と空白期間の穴埋めが進んだように感じられるものの、まだいくつかのサイドストーリーや現在進行形の話が続いている。近く『螺鈿迷宮』の続編であり、東城大学の医大生:天馬大吉が主人公となった『 輝天炎上』が発刊されるとのこと。この作品に限らず、今後もこれまでの登場人物たちは顔見せ程度や名前だけでも出番はあると思われ、網羅こそだんだんキツくなってきているが、気になるラインはできるだけ抑えていけたらと思っている。

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