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2012/11/23

「人生の特等席」みた。

Trouble_with_the_curveクリント・イーストウッド主演作品。ただし監督はロバート・ローレンツ。
確か『グラン・トリノ』で俳優はもうやらないと宣言したとかしないとか小耳にはさみ、当時から「そんなこと言わないで~」と俳優業の続行を望んでいたのだけど、まさかの復帰ともいうべきこの作品の公開を知り、とても楽しみにしていた。
疎遠だった父親と娘の和解を描く定番中定番といった内容ながら、使いつくされたネタとは思えない心地良さが感じられる作品で、とても良かった。

いま頑固で偏屈で不器用で本当は愛情深い老人をやらせたら右に出るものは居ないのではないか、と思うくらいガスの役がハマっていたイーストウッド。そしてそれが若い頃の正義感に満ちたはみ出し者の延長戦にも見えるから面白い。(もちろん役としてだが)。
また娘役のエイミーも頑固オヤジに引けを取らない娘っプリだったし、ジョニー役のジャステンの良い人っぷりにホレボレ。

メジャーリーグの敏腕スカウトマンであるガスは、娘のミッキーが6歳のころ最愛の妻を亡くし、直後、娘とは距離を置くようになる。幼い娘は母親を失っただけではなく、父親からも見捨てられたと思い、父と娘は親子という体裁は残しつつも、意思疎通のない関係を続けていた。
しかし、今シーズンの指名を間近に控えたある日、ミッキーは年老いたガスがスカウトマンとして致命的とも言える目を患ったことを、ミッキーを幼い時から良く知るガスの親友かつ球団フロントの一員であるピートから聞かされ、弁護士としてのランクアップのチャンスを目前にしながらも父親の元に駆けつけ、ガスとガスの仕事の補佐を始める。
疎遠になる直前までミッキーはガスの仕事場(野球場から酒場まで)に連れまわされており、意識的にも無意識的にも野球と選手を見る目を培っていたミッキーだ。ガスは愛情表現が不器用なため口にこそ出さないが、ミッキーを誇りに思い、誰よりも愛し信頼しているのが彼の態度から伺われる。

傍から見れば、ガスが素直になりさえなれば、すんなり上手くいくのでは?と思われる父娘関係なのだが、どうも根っこは深いらしく、何故かガスは決して本音を語ろうとはしない。だから互いに頑なで、野球バカで、本当は似た者親子のくせになかなか修復しない親子関係がもどかしい。(まぁガスにはそれだけの理由があったわけだが)。
けれど、言うまでもなく、最後はハッピーエンド。父娘の和解への道と共に同時進行していた仕事(スカウト)も、ミッキーの恋愛も、野球なだけに一発逆転サヨナラスリーランホームランといったところ。
嫌な奴は嫌な奴、良い奴は良い奴とわかり易く、そうなるだろうとわかっていても、この手の展開は気持ちが良い。
久々に良質のヒューマンドラマが観られてとても嬉しい。

好感度:★★★★+

ピーナッツボーイは、ボーの胸元にずばっと正確に投げつけたのを見た時から、コイツがキーマンになるのかと直感したのだけど、あまりの出番の遅さには「やっとだよ~」であり、「そうだろ、そうだろ」って自分の中だけで意味のない優越感に浸らせてもらった。

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コメント

こんばんは♪
ピーナッツボーイは私も同じく思いました。
たぶんみんな思ってますよね(笑)

クリント・イーストウッドは偏屈じいさんをやらせたらピカイチですよね^^
彼しかいないと思うくらいハマリ役でした。

先は読めるしお約束な展開ではありましたが、こういうお話は大好きなんですよね~

投稿: yukarin | 2012/11/24 00:37

まさかピーナッツ売りの青年リゴが最後に活きてくるとは思ってもみませんでした。
最後の最後で上手く伏線を回収したと思います。

やはりイーストウッドが絡む作品は素晴らしいですね。
改めて認識させられました。

投稿: BROOK | 2012/11/24 14:57

■yukarinさん、こんにちは
お約束でも何でも、私もこうしたお話は大好きです。
偏屈ジイさんには「素直になれよ~」って娘視点でイラっとするところはあったけれど、ゆるぎないものっていうのは気持ちが良いですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/11/24 16:31

■BROOKさん、こんにちは
リゴくん、あまりに出番が遅いのであのまま出番が無いのかと、キャッチポールの音には、一瞬ジョニーが戻ってきた?とかも思ったんですよね。
上手い演出でしたね。

「イーストウッドにはずれなし」で連勝中。まだまだ続きそうで嬉しいです。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/11/24 16:34

ピーナツボーイの出番はちょっと遅すぎますよね。
どうせならスカウトマンが押し寄せる決勝戦で活躍してくれてもよかったのに。
あっ、でもチームに所属していないからダメか~。

投稿: にゃむばなな | 2012/11/24 18:23

こんにちは!

>若い頃の正義感に満ちたはみ出し者の延長戦にも見えるから面白い。

そうそう、それが牽引してるよねぇ~珍しくもない定番な流れのストーリーでも、イーストウッドだからの良さが全体に溢れている。
「いまいましい!」とテーブル蹴り壊す爺さま、最高!!(爆)
あっ、やっぱり甘めになっちゃってる?^^

さり気無くも期待を持たせるピーナッツボーイが良かった。
分かっていてもスッキリ壮快でした。

投稿: オリーブリー | 2012/11/25 12:22

■にゃむばななさん、こんにちは
ピーナツボーイは部活にも入ってなかったですからね~
でも、他球団のスカウトマンがたくさんいたら、ほかの球団も動き出しちゃうかもしれませんでしたしね。
隠し玉で良かったのかも。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/11/25 20:41

■オリーブリーさん、こんにちは
馬小屋でのシーン、あれ本物だった気がしたのですが気のせいですかね?
あのシーンは「ダーティハリー」とか彷彿しちゃいましたし、ハリーが82歳になったらガスかなって思えるんですよね。

>あっ、やっぱり甘めになっちゃってる?^^
イーストウッドってだけでのアドバンテージはそうした歴史の積み重ねって私も思いますよ~

分かってても爽快で心地良い、奥深さはないけれど素敵な作品でした。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/11/25 22:33

たいむさん、こんにちは♪

もう、こんなに予想通りの展開でいいのか?ってくらい(笑)王道の物語ですが、勧善懲悪(ちょっとオーバー?)、幸せな結末っていう映画は、後味が良くて
いいですよね(^_-)-☆

>傍から見れば、ガスが素直になりさえなれば、
すんなり上手くいくのでは?と思われる父娘関係

そうなんですよね。ガスの頑固で偏屈な態度に、思いっきり、ミッキーに感情移入して観ちゃいましたよ(笑)ですが、根が深かったんですね。。。

確かに、ストーリーとかに奧深さはないですが、
良質なヒューマンドラマって、映画館を出る時の気持ちがいいですよね(^_-)-☆

投稿: ひろちゃん | 2012/11/27 11:14

■ひろちゃん、こんにちは
イーストウッド作品のような社会派要素が組み込まれていないので、奥深さはさすがに出しようがないですよね。
でも、その分、都合よくみんながハッピーになっても全然問題なしってことで、とっても心地よい映画でした。

ガスの不器用さをわかってても、身内じゃ感情的になり過ぎるし、どのみち言葉足らずは誤解を招くものですよね。
でも、どれもこれも上手く収拾してくれて、嬉しくなりました。

こういう王道作品は大好きですw

投稿: たいむ(管理人) | 2012/11/27 14:49

こんばんは。
本当にガスとミッキーは頑固者同士の似た者親子でしたね。
疎遠だった2人の距離が縮まっていく過程もよく描かれていました。
あと自分もピーナッツ売りの少年がキーマンになると思っていました。

投稿: FREE TIME | 2012/12/09 20:25

■FREE TIMEさん、こんにちは
親娘の再生が気持ちよく描かれていたと思います。
そして、ミッキーは新しい恋もちゃっかりゲット。
心地よい作品は大好きです(^^)

ピーナツ君は「きっと」と思いながらも出番が遅かったですねー。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/12/10 11:39

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