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2012/10/09

「最強のふたり」みた。

Saikyounofutari 首から下が麻痺した大富豪と彼を介護することになった黒人青年との、アンバランスで一風変わった友情の物語。実話に基づいた話であり、エンディングには現在における実際のお二人とその後が少しだけ紹介されている。
障がい者が主人公の話で”R指定”だなんて、そこだけ切り取ったら誤解しかねないところだが、この物語は”悲劇”ではなく、どちらかと言えば”喜劇”。不謹慎さに嫌悪するか、破天荒を一緒に笑うかは受け手の受け取り方次第だけど、きっと最後のほうはみんなが笑ってしまうんじゃないかな?

大富豪の介護者募集に、失業保険申請のための就職活動を証明する書類欲しさで面接を受けたドリス。どころが面接でズバリ「既成事実が目的だから不採用通知を早くくれ」というドリスのあまりにあけすけな態度が逆に気に入られ、ドリスは試験的に採用されることになる。
仕事は、事故で頸椎を損傷して首から上しか動かず感覚もないフィリップの身の回りの世話全般。当然のように周囲は介護も介助もド素人で、それ以上に素行の悪いドリスの雇用を危惧する。けれど、「彼は私に同情しない。素性や過去は今の私にはどうでもいいこと」と言うフィリップだった。

健常者が障がい者の心理をどうこう言うのはおこがましいことだが、フィリップにとっては、たぶんその言葉が全てなのだと思った。
ドリスは、私から見ても非常に不躾で不作法で下品で無知に思う。宝石泥棒の前科があり、面接時にはフィリップの”イースターエッグ”をくすねて帰ったりもして、流石に清廉潔白な”善人”とは言い難い。でも、彼は彼なりにプライドを持って生きており、とにかく気持ちだけは真っ直ぐで、思いやりに長け、誰に対しても態度を変えたりしない。(ただし何かに付けて傍若無人なので良し悪しは時と場合によるが)。
それが今のフィリップにとって最も好ましく思える人間だったということだけの話なのだね。まぁズケズケと他人のエリアに踏み込むところや、悪ノリのし過ぎはフィリップ意外に通用するかは疑問だけど、ドリスのまったく垣根のないアッパレな言動は興味深いというか、目から鱗が落ちる感じだった。意識的に意識しないようにしている時点で障がい者をオブラートに包んでいる私なのだと思っちゃったし。(ほとんど暴言なジョークには唖然としたし、フィリップの許容範囲が判らなくてハラハラするところもあったけど)。

特に愉快だったのはドリスのクラッシック音楽評。天下の大作曲家さまの曲を「裸で笑ってる人」だの「トムとジェリー」だのと評し、知っているという曲は「コーヒーのCM」だったり「職安のBGM」だったり。笑った笑った。(でもその感覚は解るよね。例えば”モンタギュー家とキャピュレット家”の曲を聞けばまず”白いお父さん”を思い浮かべちゃうし)。
そして一番可笑しかったのがヒゲそりシーン。ドイツの某総統風は衝撃のあまりブーっと吹いて爆笑!(なすがままでしかないフィリップがこの時はちょっと不憫だったりして)。

シリアスだけどコメディ。大いに笑ってちょっぴりウルっと来るような、でも押しつけがましさのない、後味スッキリなとても良い映画だった。

好感度:★★★★+

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コメント

良い映画でしたね〜

何からなにまで自然な二人の関係が素晴らしい!

理想だけど、これが当たり前の世の中になってほしい!

投稿: AKIRA | 2012/10/09 18:21

■AKIRAさん、こんにちは
もう少しで見損ねるところでしたが、間に合ってよかったです。

こうした自然な関係つくりって、ドリスを見れば案外単純なことって思うのだけど、これがなかなか難しい。
こんな感じの世の中だったら素敵ですよねw

投稿: たいむ(管理人) | 2012/10/10 13:47

『50/50』と同じで腫れ物に触るような接し方しかしない人間よりも、ズケズケと言う人の方に友情を感じる。
ほんと、人間って面白いな~と思える映画でしたよ。

投稿: にゃむばなな | 2012/10/12 20:35

こんばんは。

>”モンタギュー家とキャピュレット家”の曲を聞けばまず”白いお父さん”を思い浮かべちゃう

わはは~~~!!
まさに我々日本人はそうなっちゃったよね(爆)

フィリップの器の大きさが、ドリスを有りのままでいさせてくれたのもあるのでしょうね。
ステキな友情です。


投稿: オリーブリー | 2012/10/12 23:25

■にゃむばななさん、こんにちは
ズケズケが必ずしも良いとは思わないけれど、波長がぴったり合う人と出会えたら幸せですねw
そこら辺がドンピシャな素敵な映画でした。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/10/13 14:18

■オリーブリーさん、こんにちは
♪ダバダ~ダダ、ダバダ~ダバダ~
ならコーヒーなんだけどね(笑)

ドリスのズケズケはフィリップには清涼剤だったかもしれないけれど、ドリスのほうがよりフィリップに教えられたんじゃないかなって。
本当にいい関係になりましたよね。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/10/13 14:30

ドリスはフィリップに出会って、本来の自分の中にあるものに目覚めたんでしょうか?
もともと、自分の境遇を嘆くようなタイプでなく
ひたすら明るく前向きだった。
だから、フィリップも彼の振る舞いに笑っていられたし
たぶん、健常者の時にも、思ってもできなかったことを
ドリスがストレートに言うのを見るのが、楽しかったんでしょうね。

もっと、感動ものかと思ったら、けっこう二人の日常を切り取った作品で、楽しかったです。

投稿: mariyon | 2012/10/17 18:32

■mariyonさん、こんにちは
ドリスも複雑な環境に育っていたんですよね。
卑屈になっている人ほど付き合いが難しいと思うわけで、そんなことすらぶち壊しちゃうようなパワーは見習いたいところ。
でも、並みの精神じゃドリスの真似は無理。
あくまでも理想が現実に合ったったお話で、はちゃはちゃな2人を楽しむ映画かなって思いました。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/10/18 11:16

上映してるところがあまりにも遠いところだったから
DVDになり次第レンタルして観ます

投稿: ミント | 2012/11/17 16:40

■ミントさん、こんにちは
とっても素敵なお話でした。
DVDになったら是非。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/11/17 18:07

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