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2012/08/03

『ケルベロスの肖像』 (著)海堂 尊

Keruberosu『チーム・バチスタの栄光』から続く”桜宮サーガ”の本線:《田口&白鳥シリーズ》はこれが見納めとのことだったが、どうも「”田口&白鳥”が中心となってトラブルに対処する小説はこれでオシマイよ」というだけで、”桜宮サーガ”としてはまだまだ穴埋めが必要で、もはやスピンオフ側からでしかサーガを纏め上げることが不可能になった故のファイナル宣言ではないかと思うものだった。
ファイナルストーリーは、前作『アリアドネの弾丸』で田口がセンター長に就任することになった”エーアイセンター”の完成とその末路について。「東城大病院に奇妙な脅迫状が届く」という設定からミステリ仕立て風にはしてあるものの、基本的には謎も事件も皆無に等しく、”中締め”する為だけにバラバラに散っていた皆を呼び寄せたかのようなファイナルストーリーだと思う。

一口に《田口&白鳥シリーズ》と言ったものの、純粋に医療事故に見せかけた殺人トリックでミステリーを楽しませてくれた第1作目の『チーム・バチスタの栄光』からこの『ケルベロスの肖像』とでは作風も内容も大きくかけ離れてしまい、もはや単に田口と白鳥がセットで登場し、高階院長の無茶ぶりを収める話が《田口&白鳥シリーズ》になってしまっていたこの頃に感じる。それはそれで悪いとは思わないが、本線と世界を同じくした過去や未来が描かれた各種スピンオフストーリーを同時あるいは先行して頻発させたことによる弊害と私は考える。
とはいえ個性的なキャラクターが魅力的なシリーズだけに、スピンオフでの人間ドラマはとても楽しませてもらったし、初めて触れた様々な医療問題についても非常に勉強させてもらったので、「弊害」と考える部分について深く言及するのは止めておくが、『ケルベロスの肖像』はそれらスピンオフと深く繋がっており、スピンオフを読まずに本線のみ楽しんできた方々は、さぞかし唐突に増えた関係者(登場人物)と過去からの因縁に「???」なのではないかと思い、読者に対する不親切さが否めないのは間違いないかと思う。
また、逆にスピンオフを網羅している読者は既に”何も残っていない”先の未来を知っているだけに、田口が脅迫状に対して何をするでもなく、全体的にダラダラと時間(ページ)を費やしているのがもどかしく、一気に畳みかける終盤でさえ彦根による結果報告とこれまでのスピンオフに対する答えを確認するだけの作業と変らない気がしたのではないだろうか。肝心の白鳥と田口でのやり取りも僅かでしかなく、かろうじて”本線”という体裁を整えるだけの扱いに感じられるしね。

とりあえず、”桜宮サーガ”として空白期間のピースが若干埋まり、幾つかの謎は解消され、『螺鈿の迷宮』での”悪夢再び”という落としどころはまずまずであり、それでも田口と東城大病院の日常はこれまで通りにキープされるという、そこそこハッピーな幕引きは無難なものと思う。けれど、逃げ足の速い亡霊はまたしても姿をくらますし、第2ラウンドに突入した彦根の闘いはこれからが正念場で、今後田口に代わる表舞台での主人公は彦根と某府知事にシフトするってことなのかと思うところ。
なんであれ”桜宮サーガ”全体として残された部分を丁寧に纏め上げて欲しいと思う。

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