« 「テルマエ・ロマエ」みた。 | トップページ | 「幸せの教室」みた。 »

2012/04/30

「わが母の記」みた。

Wagahahanoki

文豪:井上靖の自伝的小説『わが母の記~花の下・月の光・雪の面~』の映画化作品。
時代劇『三匹が斬る』の頃から好きだった役所さんだけど、最近ますます好感度がアップしており次なる出演映画を待っている感じだが、また惚れ直した今回だった。そして樹木希林さん。希林さんに粋な老婆をやらせたら右に出るものなしだが、今回も痴呆症の年老いた(でも元気な)母親役で魅了してくれた。
笑いあり、涙あり、素敵な”家族の肖像”が見られる良質な映画だった。

希林さんや役所さんの名演技は言うまでもないが、3女の琴子として中学生から大人の女性までをまったく違和感なく演じてしまう宮﨑あおいちゃんもお見事としか言えない。伊上(役所)の妹役:キムラ緑子さん、南果歩さんらの存在感も侮れず、とにかく役者の良さがこの作品を何倍にも豊かにしてくれたのではないかと感じられた。特に伊上を取り巻く女性たち、個々の性格や役割分担が明確な母・妻・娘・妹を女優陣がバランス良く立ち回っている様が素晴らしい。

幼き日に、理由はどうあれ母親に捨てられたとしてずっと心にわだかまりを持ち続けている息子と、年老いてそうした事実をすっかり記憶から消してしまった認知症の母親。痴呆の進行から無邪気に毒を吐く母親に心を傷つけられ、振り回わされる身近な家族たち。
これほどシリアスなテーマでありながら、自然に何度も笑える作品はこれまでなかった気がする。もちろん押さえるところはきちんと押さえてあるから、ドカンと一発で涙をさらってゆくしね。

そもそも伊上家が裕福層で、伊上自身もベストセラー作家で秘書やお手伝い・お抱え運転手を雇う上流家庭という特殊性には自分とは同列に考えられない”物語”に感じるところもあるけれど、痴呆を冗談のネタに使ったり、ストレートに毒づいたり、怒り心頭で愚痴ったり、”家族間”ならではの”言葉”や”気持ち”といった点では、共感できるものがたくさんあった。

タイトルからして固くて暗くて重そうな印象をもちそうだけれど、「騙された思って観てご覧よ」と、重苦しいのを好まない20-30代にも薦めたくなる素敵な映画だった。

好感度:★★★★★

役所映画にハズレなし、って言ってもいいよね?

|

« 「テルマエ・ロマエ」みた。 | トップページ | 「幸せの教室」みた。 »

コメント

今作の役所さん良かったですね〜

役者陣のアンサンブルと,
品のある演出が素晴らしくて,
おおいに満足しました!

投稿: AKIRA | 2012/05/01 18:09

■AKIRAさん、こんにちはsun
中身はシビアだし、ばあちゃんの発言は結構毒があるのだけど、笑っちゃえるし、品も損なわれたりはしないんですよね。

キャストも内容も大満足でしたw

投稿: たいむ(管理人) | 2012/05/02 13:05

確かに最近の役所さん映画にハズレはないですね。
ただこの映画はやっぱり金持ちさんの話なので、そこが入っていけるかどうかの評価の分かれ目だと思うんですよね。

いい映画なんですけど、一般家庭の「わが母の記」にしても良かったのではないか?と。
でもそうなると井上靖の自叙伝にはならないのか~。

投稿: にゃむばなな | 2012/05/04 20:51

■にゃむばななさん、こんにちはsun
そうなんですよね、お金持ちだから専任のお手伝いさんが付けられたり、別荘に行ったりできるわけで、そこは一般人の苦労とは比較できないところ。
ただ、この映画は苦労ではなく、もともと持ち合わせていた苦悩やわだかまりについてを思うものであって、痴呆は事象のひとつですもんね。
井上靖の物語として観る分には問題ないかなと。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/05/04 21:01

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106009/54594547

この記事へのトラックバック一覧です: 「わが母の記」みた。:

» わが母の記 [LOVE Cinemas 調布]
井上靖が自らの家族との絆を元に書いた同名の自叙伝的小説を映画化。とある小説家が老いて記憶を失ってゆく自らの母親との関わりを中心に、その家族の姿を映し出している。主人公の小説家を『きつつきと雨』の役所広司、その母に『悪人』の樹木希林、小説家の娘を宮崎あおいが演じる。共演には南果歩、キムラ緑子、三國連太郎といった演技派が揃った。監督は『クライマーズ・ハイ』の原田眞人。... [続きを読む]

受信: 2012/05/01 00:25

» 『わが母の記』 これは松竹らしいホームドラマではない [映画のブログ]
 『わが母の記』は、テレビドラマ『初秋』に先駆けて原田眞人監督・脚本、井上靖原作、役所広司主演で作られた作品だ(公開時期は『初秋』の放映より後)。  この作品の注目すべき点は、まず松竹映画であるこ...... [続きを読む]

受信: 2012/05/01 02:07

» わが母の記 [Akira's VOICE]
絶品でございます。   [続きを読む]

受信: 2012/05/01 18:06

» わが母の記・・・・・評価額1650円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
母の消えゆく記憶の中で、唯一残ったものとは・・・。 これは昭和の文豪、井上靖が母親との間に抱えた葛藤を描いた自伝的小説、「わが母の記」三部作を「クライマーズ・ハイ」の原田眞人監督が映画化した作...... [続きを読む]

受信: 2012/05/01 22:46

» わが母の記 [映画とライトノベルな日常自販機]
★★★★★“心地良い自己嫌悪に陥りました”率直に言うと、映画の内容や出演者の演技、人の生活と融合した日本の風景などとても良かったです。 ついつい自分と親、自分と妻や子どもたちなど、自分が家族に対して抱いている感情と重ねあわせてしまい、自己嫌悪を抱いてしまいました。映画の感想というより、自分語りになってしまうかもしれませんがお許し下さいね。 ストーリーは洪作(=役所広司)は母親に対する憎しみと愛情の相反する感情を抱きながら、母親の八重(=樹木希林)に接します。洪作の末娘琴子(=宮崎あおい)はそんな父親... [続きを読む]

受信: 2012/05/02 11:39

» 映画「わが母の記」感想 [タナウツネット雑記ブログ]
映画「わが母の記」観に行ってきました。作家・井上靖の同名小説を原作に役所広司・樹木希林・宮崎あおいが主演を演じる、高度成長期の古き良き昭和の時代を舞台とした人間ドラマ作... [続きを読む]

受信: 2012/05/03 02:00

» 映画「わが母の記」これが日本のかつての原風景 [soramove]
「わが母の記」★★★★ 役所広司、樹木希林、宮崎あおい、 三國連太郎、南 果歩、キムラ緑子、 ミムラ、菊池亜希子、三浦貴大、真野恵里菜出演 原田眞人監督、 118分、2012年4月28日公開 2012,日本,松竹 (原題:わが母の記~花の下・月の光・雪の面~) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい← 「随分前から予告が劇場で流れ 前売... [続きを読む]

受信: 2012/05/03 10:48

» 『わが母の記』 [こねたみっくす]
良くも悪くも「わが母」の記。それがこの映画の評価の分かれ目。 故・井上靖先生の自叙伝を映画化し、第35回モントリオール国際映画にて特別大賞を受賞したこの作品。違和感なき雰 ... [続きを読む]

受信: 2012/05/04 20:53

» わが母の記 [ケントのたそがれ劇場]
★★★☆ 原作は井上靖の自伝的小説だというが、現代の若者の中で井上靖の名前を知っている人が何人いるだろうか。そんなこともあり、映画館はほぼ満員だったものの、ほとんどの観客が70代前後の高齢者ばかりであった。若い人たちのほとんどは、隣のスクリーンで上演されて... [続きを読む]

受信: 2012/05/05 09:45

» 映画・わが母の記 [読書と映画とガーデニング]
2012年 日本 昭和の文豪・井上靖の自伝的小説「わが母の記〜花の下・月の光・雪の面」を映画化 伊上家の長男・洪作(役所広司)は幼少期に実の両親に育てられなかったことから、自分は捨てられたのだと思い込んで生きてきた洪作の母・八重(樹木希林)は幼い洪作と離...... [続きを読む]

受信: 2012/05/12 10:12

» 映画「わが母の記」 [FREE TIME]
母の日に、映画「わが母の記」を鑑賞しました。 [続きを読む]

受信: 2012/05/13 22:13

» わが母の記 [映画的・絵画的・音楽的]
 『わが母の記』を吉祥寺バウスシアターで見ました。 (1)本作は、前回取り上げた思想劇とも言うべき『モンスタークラブ』とは対極を成すような作品で、著名な作家とその母との人間的な関係が大層古典的に描き出されます。  観客も、前記の映画で9割近くが学生でしたが...... [続きを読む]

受信: 2012/05/17 21:36

» 「わが母の記」:上質な映像と見事な役者陣 [大江戸時夫の東京温度]
映画『わが母の記』は、日本映画の素晴らしさに満ちた秀作。とにかく映像の質が高く、 [続きを読む]

受信: 2012/05/20 23:56

» わが母の記 : 華麗なるホームドラマ [こんな映画観たよ!-あらすじと感想-]
 寒気も峠を過ぎたようですが、寒い日が続いております。こんな日は、オコタに入って映画でも観るのが一番かもしれないですね。では、本日紹介する作品はこちらになります。 【 [続きを読む]

受信: 2012/12/11 15:05

« 「テルマエ・ロマエ」みた。 | トップページ | 「幸せの教室」みた。 »