« 「タイタンの逆襲」(3D吹替版)みた。 | トップページ | 「テルマエ・ロマエ」みた。 »

2012/04/24

『ビブリア古書堂の事件手帖①②』 三上 延(著)

Sioriko以前《Prototypeシネマレビュー》のGAKUさんのところで紹介されていたことから興味を持ったのがこの小説。けれど、やはりはじめての作家さんというのは手が出しにくく、忘れない程度に忘れていた本だった。ところが先日、書店の特設コーナーにて「2」が並んでいるのをふいに見つけ、手に取ってパラパラと、『時計仕掛けのオレンジ』の話から読書感想文と前後のやり取りに目をとおしたところ、「これはアリ!」と第1巻[栞子さんと奇妙な客人たち]、第2巻[栞子さんと謎めく日常]を併せて即時購入した次第。
古書を扱っているだけに小難しくて読みにくいところがあるかと思えば、サクサクっと読めてしまう本。登場する古書(本)の内容を知っていても知らなくても問題なし。文庫初のミリオンセラーを達成し、2012年本屋大賞にノミネートされたのも頷ける小説だと思った。

この小説は、北鎌倉を舞台にした、古本屋「ビブリア古書堂」の若い女性店主:篠川栞子と古本の査定依頼を切っ掛けにその後「ビブリア古書堂」のアルバイト定員に納まった青年:五浦大輔による、たぶん“ミステリー“にジャンルされる文庫小説。
”たぶん“というのは、ミステリーといっても殺人事件のように警察沙汰になるような本格的な謎解きモノではなく、もっと身近でほとんど害のない事件(例えば、過去の出来事を探るとか、失せもの探しとか)のみを扱っているから。ちなみにウィキペディアでは”ライトミステリ小説“としていた。(版元がラノベと文芸の中間を意識した【メディアワークス文庫】のため、そんな有るような無いようなジャンルに分類されたと思われる)。

各話のタイトルはズバリ本のタイトルで親切にも著者(訳者)や版元までが記載。けれど、この本は解説書でも感想文でもなく、主に「本」と「持ち主(かかわった人間)」との間に生まれたドラマ(物語)が描かれており、そこに本の中身(内容)がリンクした形で繋がってくる。(その際に多少の解説も盛り込まれる)。「一冊の本との出会いがその後の自分の運命を変えた」なんて話も時々聞くけれど、まさにそんなところに注目しつつ、そこにミステリー要素をプラスした小説といえる。
謎解きの仕方は”安楽椅子探偵“に近く、探偵役(栞子)は手足となる助手(大輔)のサポートのもと、その場に居ながらわずかに残された手掛かりを手繰って真相にたどり着くといった感じのもの。(実際1巻の栞子は入院中で、大輔の情報と手元にある手掛かりだけで真相に辿り着いている)。そして、各話は読み切りになっているけれど、全体としては時間の経過とともに一連の流れがあり、読み切りキャラの再登場も頻繁で、思わぬ伏線に「え?」となるサプライズも忍ばせてある。
また、探偵役の栞子は、まず“本の虫”で、20代半ばでありながら古書店主として十分といえる本に関する膨大な知識を持つ人物で、内向的で人慣れない深窓の美女という儚げでフワフワとした聖女のような印象を受ける描写が多い反面、こと得意分野に話が及ぶと豹変して嬉々と語りまくり、良くも悪くもガードの固いオタクそのものといった人物としても描かれている。栞子は性質が悪い事に色々と無自覚なところがあり、そんな悪気のなさが大輔を打ちのめすという黒いエピソードもチラチラ含まれているなど、厚みあるキャラ設定も魅力的で(大輔も活字恐怖症という特異体質をもつ、鈍すぎず切れすぎない凡人としてバランスの良い道先案内人になってる)、感情移入しやすさが読みやすさになっているではないかと思った。

Sioriko2ミステリータッチな部分のネタバレは慎むが、決め手となった『時計仕掛けのオレンジ』のエピについて少しだけ。実は、立ち読みした部分はほんのつかみでしかなく、話は思いがけない方向へ進みだすことになり、最後まで読んで正解だったと思った。ただ、私が『時計仕掛けのオレンジ』について多少なり知識を持っていたことで、謎解き部分を即座に看破することになり、半分確認作業になった事実はご愛嬌として、上記にて「本を知っていても知らなくても問題なし」と書いたけれど、”むしろ知らないほうが楽しめるかもしれない”と思ったことを付け加えて置こうと思った次第。

”ライトノベル”と言うにはあっさり突き放すような毒があり、”文芸”するにはやや易しい内容。つくづく”大人のライトノベル”という位置づけがぴったりな【メディアワークス文庫】シリーズ。ラノベ全盛の現在であり、橋渡し役として今後も良作をどんどん排出してくれたらと思う。

『ビブリア古書堂の事件手帖』第3巻の発売日は6月23日とのこと。母親に対するトラウマもあって無自覚的に大輔をブロックする栞子だが(そもそも男として眼中にない?)、大輔の努力次第ではまだまだなんとかなるかもしれない恋模様?
続きを楽しみに待ちたいと思う。

|

« 「タイタンの逆襲」(3D吹替版)みた。 | トップページ | 「テルマエ・ロマエ」みた。 »

コメント

たいむさん、こんにちは。
私も2の『時計仕掛けのオレンジ』には「おっ!」となって読んでました。
「映画版はそういう流れで出来上がっていたのか!なるほどー」などと
知識習得にも役立ったりして。

この本ってラノベ風のキャラや物語設定になってるけど
実はちゃんとした文学知識がないと書けない内容だと思うんです。
その点では入口をライトにした文学奨励本と言えるかもしれませんね。

>『ビブリア古書堂の事件手帖』第3巻の発売日は6月23日とのこと。
そうなんですか!これはチェックせねばっ!!
大輔の好意に無自覚の栞子も、2の元カノが出てきたあたりから
大輔をひとりの男として意識し始めてる感はあるので、そのあたり、
どこまで進展するかも気になりますね。
あと、あるラスボスになりかねない母親の存在も注目でしょうか^^

投稿: GAKU | 2012/04/28 07:48

■GAKUさん、こんにちはsun
やはり「時計仕掛けのオレンジ」には映画好きとしても反応しちゃいますね(^^)
”削除”云々に関しては知識として知っていましたし、疑惑には書いたのが誰か判っちゃったけど、それは別としてあの感想文はすげ~って思いましたし、あの感想文を読むと「時計仕掛けのオレンジ」を見たくなりませんか?そう思うと、今後名作映画の原作本も時々混ぜて欲しいなって思います。

社会人を主人公にすることで元来のライトノベルと差別化しているわけで、ハーレムでもじれったい恋バナでもなく、一筋縄ではいかない大人の恋愛が楽しめたら良いなって思います。

>ラスボスになりかねない母親の存在
ですね~。死別じゃないってところから、いつか大輔くんに絡んできそうな気がしてマス。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/04/28 19:02

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106009/54499451

この記事へのトラックバック一覧です: 『ビブリア古書堂の事件手帖①②』 三上 延(著):

» ビブリア古書堂の事件手帖 ─ 本に込められた意味とそれに関わる人の心を描く ─ [Prototypeシネマレビュー]
─ 『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』著:三上 延 ─ この本を読んでみようと思ったのはマイミクさんが面白いと言われていたことがきっかけ。ちなみに2012年 ... [続きを読む]

受信: 2012/04/24 23:50

« 「タイタンの逆襲」(3D吹替版)みた。 | トップページ | 「テルマエ・ロマエ」みた。 »