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2012/03/27

「サラの鍵」みた。

Sara

地元でようやく公開。
予告編では、「1942年のパリのユダヤ人迫害事件」をひも解くうちに、まさかの事実に直面する主人公・・・ということから少しばかり期待して待っていた作品。
現代と過去が交差しつつ、中盤までは、弟はどうなった?その後のサラは?とドキドキする展開が続く。後半に入ると主人公のプライベートが無駄にゴタゴタして失速感が否めないが、ラストでの”キリンのオチ”にはヤラレタ感があり、歴史を知る上でも良い作品だったと思う。

まず、この映画は物語の部分をネタバレさせてしまうとそれだけで終わってしまうもので、”観てナンボ”の作品だと思うので物語の内容には触れないことにする。

さて、劇中若い雑誌記者が「1942年のパリのユダヤ人迫害事件」を知らないという描写があるのだが、実は私も予告編の段階では”ナチによるユダヤ人迫害を題材にした映画”だと思っていたわけで、”ヴェルディヴ”はもちろん、”パリ警察”(フランス人)による在仏ユダヤ人迫害事件があったことすらを知らなかった。他国のこととはいえ、実にお恥ずかしい次第。
ただ映画はこの事件が発端になった物語ということで、”ヴェルディヴ”でのことも、収容所でのことも、さらりとすくい上げた程度の説明でしかなく、「そういう事があった」という事実を知るだけではある。けれどサラの悲劇的な人生は人の心に消えることなく残り続ける戦争の爪痕を生々しく印象づけるもので、「ユダヤ人迫害」に限らず、人が誰しも持っているだろう抗いきれない残忍性による悲劇の多くが”戦争”が絡んだゆえに発露してしまうという事なのではないかと思うものだった。つまりは完全に無関係な人なんてありえないってことではないかと思う。兎角”戦争”というものはなんでもアリにしてしまうものだし。とはいえ、なんでも”戦争”のせいにしてしまうのは少し違う気もするわけで、「知らない(知らなかった)」という部分ををどう捉えるかなのかもしれない。

若い記者を引き合いにしたのは、過去にこれだけのことがあったにもかかわらず”風化”し始めていることであり、結果論でモノを言い、我関せず的になりつつある現代を懸念したものと思われる。
自国の負の歴史も他国のそれもまだまだ知らないことがたくさんあるようだ。この映画は若干それみよがしなところも感じるが、繰り返し繰り返しこのような映画がつくられるのは良いことだと思う。
邦画でいえば、原爆をテーマに『夕凪の街 桜の国』に近い感じだろうか?もちろん雰囲気とか感覚的に近いと言うだけで、題材もテーマも全然違うけれど。

好感度:★★★++

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コメント

こんばんは。

過去の過ちや辛い出来事は、時間の経過と共に自分の中で折り合いをつけたりしていくものですが、サラの場合は、自分の成長と共にますます後悔の念がつのったのだろうと推測すると、本当に胸が締め付けられました。
ただ、私は現代パートにいまひとつノレなかったのでした(苦笑)

投稿: オリーブリー | 2012/04/03 02:03

■オリーブリーさん、こんにちは
そうなんですよね。
両親も「お前のせいで!」ってなじっていたし、自ら無残な遺体を見てしまったし、自責の念は消えることがなかったものと思います。ましてや、自分だけ幸せになんかなれないって思ったことでしょうし。
それでも、残された日記からは子供のために頑張ろうとしていたようにも感じられ、じわじわくるものがありました。

現代パートは、私もいまいちノれず。
ほんと最後だけ、”ルーシー”にグッときました。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/04/03 15:39

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