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2012/02/20

『極北ラプソディ』 (著)海堂 尊

Kyokuhoku

『極北クレイマー』の続編であり、『ブレイズメス1990』や『ジェネラルルージュの凱旋』・『ジェネラルルージュの伝説』の流れを色濃く受け継いでいる作品。
『チーム・バチスタの栄光』に始まった“桜宮サーガ”に登場する多くのキャラクターの中でもジェネラル(将軍)こと速水がお気に入りの私であり、謎の空白期間がいまだに埋まらないままの現在の世良が登場するとあって、“田口&白鳥”シリーズと並んで続編を楽しみにしていたものだった。
“ラプソディ”とつけた理由が分かるような内容。それでいて“彦根”の暗躍もチラチラ見え隠れしており、壮大なる“桜宮サーガ”のパズルの一片としてこれも外すことのできない一篇なんじゃないかな。

今回はこれまでと同じく医療と行政の不協和音という普遍の現状に、熱しやすく冷めやすいマスコミの体質及び移り気で無責任な一般大衆の無自覚、そして危機的状況にある救急医療の現状にドクターヘリの実情を絡め、作者の自論での解決策を提示しながら話が進められているもので、つまりはいつも通りの作風なのだけど、今回は攻め姿勢でガシガシ推し進めるというよりは、気になる再登場キャラと現実を絡ませることで“キャラ読み”から本筋が楽しめるような作りになっているように感じた。(私が速水や世良が好きだってだけかもしれないけれど)。

・・ということで、とりあえずは主に極北市民病院の外科医師:今中先生(おそらく主人公)を中心にして描かれており、世間一般的な観点(表層のみでの視点)から、理不尽や詭弁と思しき世良の理論に対する疑問や苦言を今中に代弁させ、それに対してひとつひとつ世良が打破しながら模範回答へと導くような流れで読ませているのだけど、それはそれとして、いきなり救世主?(再生請負人)として極北市民病院の院長に就任した世良自身のことであり、極北救命救急センターの副センター長となった速水の活躍であり、極北に集結した世良と速水と花房の微妙な三角関係など、気になっていた「謎」の解明の方によりワクワクしながら読み進むことになった。
とにかく、世良は『ブラックペアン1988』にて研修医で登場し、『ブレイズメス1990』では中心となって活躍したものの、これからというところで終わったままになっている。そこから十数年の後にあたる『チーム・バチスタの栄光』ではまったく世良の存在は消え、「いずこへ行ってしまったのか・・・」と思っていたのだが、『極北クレイマー』のラストでの思いがけない登場に驚愕させられることになった。
”桜宮サーガ”は執筆順と時系列がバラバラで、色々後付けで歴史が埋められているシリーズだから、既に過去のエピからそのままでは繋がらない現在や未来(結果)が幾つもある。よって新刊(各続編)が出る度に、多少なり”空白期間”のピースが埋まることを期待してしまうんだよね。
また速水も、期待した『極北クレイマー』での登場がなかったことから、遂に”ドクター・ヘリ”を手に入れ、”極北”でもきっと変わらない速水”将軍”の健在っぷりを早く確認したくて、気持ちが逸ってくる。

・・で、『極北ラプソディ』では、世良の空白期間こそまだまだ埋まらないものの、速水に関してはしっかりたっぷり将軍の健在っぷりが描かれていて、私としては大満足のもので嬉しくなった。世良の恋人だったハズの花房が速水に鞍替えした謎もようやく判明。けれど、やっぱりジェネラル速水はジェネラル速水であり、花房も花房であり、世良もずっと世良だったということで、元鞘のカタチで三角関係に終止符が打たれたのが切なかった。速水の名誉のために補足するが、患者第一の速水が悪かったわけじゃなく、速水なりに花房をかけがえのない存在として愛していた思う。花房も速水の恋人としても仕事のパートナーとしても敬愛していたと思うし、それを世良が奪い返したわけでもない。だた、そうなるのが自然だったという事なのだと思う。
なんだか速水は「孤高の将軍」という星のもとに生まれついていて、神憑りの能力で我が道を突き進むことの代償が「孤独になる」ってことなんじゃないかと。それは大月と越川というドクターヘリスタッフとの”ミッション・インポッシブル”と別れでも顕れているしね。ますます速水が好きになったというか、ぎゅーってハグしてあげたい感じだなぁ。

前半は「我こそが孤高の医師」と世良の独壇場だったものが、最終的には「孤高」の株を速水に謙譲し、4章「第四部オホーツクの真珠」で優しさに癒された世良。『ナニワ・モンスター』の流れから”スカラムーシュ彦根”のミッションに応える世良であったはずで、こんなに変わっちゃっていいのか?と思わなくはないけれど、「世良くん、おかえり!」って感じは悪くない。
実は、当たり前な内容だったりするのだけど、速水好きはもちろん、世良が気になっていた人には「是非に」とオススメの『極北ラプソディ』と思う。

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