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2012/01/14

「マイウェイ 12,000キロの真実」みた。

My_way

いっさいの妥協を排除したと言っても過言ではなさそうなほどに、壮大で臨場感にあふれた戦争スペクタクル作品だった。
主人公となる日韓二人の青年をオタギリ・ジョーとチャン・ドンゴンが好演。
戦争と人間ドラマが絡み合う、実に骨太で見応えのある映画だった。

日本人監督ではここまで徹底して描けないように思える容赦のない日本人の描写。けれど、それは日本人に限ったことではなく、”戦争”という異常が日常化するといつしか人種など無関係に”人間”が狂っていってしまうものだという描き方もされており、人間として胸を締め付けられる思いで最後まで見つめることになった。
戦争において優劣なんてものは刻々と変化し続けているもの。理不尽にも日本軍として戦場に駆り出させた、チャン・ドンゴン演じる何事にも誠実な朝鮮人のキム・ジュンシクはもとより、頑などころか狂気にも似た皇軍としての矜持を持ち続けていたオタギリ・ジョー演じる長谷川辰雄でさえも、戦場の最前線と世界の広さを肌で体験することで、次々と軍服を取り替えてまでも「とにかく生き抜く」ことを選ぶわけで、立場も思想もまるで相容れることのなかった2人が最後はひとつになるという話もあり得るような説得力が、12,000キロにもわたる移動と長き時間の中にしっかりと感じられた。

人間はあっさり狂ってしまうけれど変わることも出来るのだと、人間なんか一度滅んでしまえと思いつつもまだまだ捨てたもんじゃないと、信じられると思わせてくれる映画だと思う。
最前線の戦いでは思わず顔を背けてしまうような生々しいシーンが何度となくあり、本来味方同士である軍内部でも拷問や体罰、あるいは喧嘩で殴りあうなど、まったく血をみないシーンが全体で何分あるのだろうといった感じでかなりキツかったけれど、平和ボケ日本人は痛みを視覚で感じ、覚えて置く必要があるものとして、目を背けずに見なければと思うところだった。
ちょっぴり美談に仕立て上げ過ぎ?と感じる部分もあるけれど良い映画だったと思う。

好感度:★★★★

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コメント

たいむさん、こんにちは☆
骨太の良作でしたね。
「人間はあっさり狂ってしまうけれど変わることも出来る」って、まさにその通りだったと思います。

そうそう、2回もコメ入れなおしていただいてごめんなさい。最近反応が遅いけど、ちゃんと入っているので大丈夫ですよー☆

投稿: ノルウェーまだ~む | 2012/01/14 14:57

■ノルウェーまだ~むさん、こんにちは
ジュンシクが善人過ぎだろ~って思うのは日本人だから?
とはいえ、海外において悪事の限りを尽くした日本人を”日本人”と思うのは当然であり、誰もが国の代表と自覚するくらいじゃないとダメなんですよね。

2度のコメは私もアレ?って
エラー表示がでたんではねられちゃったかと入れ直しました。
お手数をおかけしましたw

投稿: たいむ(管理人) | 2012/01/14 15:21

「プライベート・ライアン」ほど凄惨なシーンがなかったので、
意外と“観やすい”作品となっていました。
それでも、戦争シーンの迫力は半端なく…。

人間ドラマも見応えがありましたね。
ラストのマラソンシーンは行き過ぎかな?とも思ったのですが、
あれはあれで感動的でした。

投稿: | 2012/01/14 15:26

すみません。
上の書き込みに名前を入れるのを忘れていました…。

投稿: BROOK | 2012/01/14 15:27

■BROOKさん、こんにちは
生々しさも色々ですしね。ホラーのように来るところがわかるし、想像で尾を引くものはなかったので観やすくはあったかもです。

冒頭はオダジョーだとわかるし、ラストは「なるほど」なものでした。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/01/14 16:31

日本と韓国がお互いに高め合う関係。それは戦争が終わった現代でもまだまだ未完成のままですよね。
未だに朝鮮を蔑視する人がいたり、日本を侵略国家だと信じ込んでいる人がいたりと。
でもそんな悲しい過去もオリンピックの場では関係ないことを、今年の「ロンドンオリンピック」で目に焼き付けたいと思いましたよ。

投稿: にゃむばなな | 2012/01/14 22:30

■にゃむばななさん、こんにちは
オリンピックでは差別も偏見もない・・と信じたいところだけれど、人間は簡単で複雑ですから。

そういえば今年はうるう年でオリンピックでしたね。
TV鑑賞では時差が厳しいですが楽しみですねw

投稿: たいむ(管理人) | 2012/01/15 10:52

>戦争”という異常が日常化するといつしか人種など無関係に”人間”が狂っていってしまうものだ

これですよね。これがあるからステレオタイプな悪人日本人には見えないんだと思います。
もちろんフィクションである以上、こういった事実があった的な表現を全面的に肯定したくない気持ちもないではないです。ただ、問題はそんなことではなくて、現実問題にそうであると思っている韓国と日本の関係があり、それでもそれは乗り越えられるのだという可能性を見せていることなのだと。
素晴らしい作品でした。

でも、「こうだくみ」って書いちゃ駄目(爆)

投稿: KLY | 2012/01/16 01:25

■KLYさん、こんにちは
加害者の言い分になるかもしれないけれど、歴史的事実は認めるとともに、みんなが歯を食いしばってどこかで折り合いをつけなければいけないのですよね、本当は。
けれど、血の気の多いほんの一握りの人間が何度も覆してしまう。厄介なものです。

理想かもしれないけれど、胸に刻まれるよな良い映画だったと思います。

投稿: たいむ(管理人) | 2012/01/16 08:25

戦争の本質を描いていた気がします。

二人の友情ドラマには物足りなさを感じましたが,
それでも共感せざるを得ない背景の過酷さに溜め息。

スゴかったですね。

見応え抜群でありました。

投稿: AKIRA | 2012/01/16 18:05

こんばんは。

この映画、
思った以上の迫力と感動を与えてくれました。
心揺さぶられた一本でした。

ところで
しばらくお休みになるということですね。
コメントの書き込みもできなくなるのかな?


投稿: えい | 2012/01/16 22:22

■AKIRAさん、こんにちは
あれだけ憎んでいたわけで、辰雄の友情への変化はもう少し何かが欲しいところだったけれど、戦争と人種差別の部分は直球で描かれていてとても良かったです。
見応えありました!


■えいさん、こんにちは
そう、涙こそ出なかったのだけど、私も「思った以上」でした。
最近は様々なタイプの戦争映画が製作されていて嬉しい(というのもヘンだけど)、すごく勉強になってます。


★2週間ほどお休みさせていただき、コメントの返信が遅くなったことをお詫びいたします。
おかげ様で無事に退院いたしました。
またこれからもよろしくです!

投稿: たいむ(管理人) | 2012/01/30 15:04

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