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2011/08/03

「偉大なる、しゅららぼん」 万城目 学(著)

Shulala

”マキメワールド”がこんどは滋賀県へ進出。
琵琶湖パワー全開!ということで、歴史あるとある琵琶湖の民(一族)と、古より密かに受け継がれてきた彼らの持つ”超能力”が絡んだお話で、今回もまた「まさか」が当たり前とされ、馬鹿馬鹿しさMAXをこれまた当たり前として大真面目にやってのけるといった物語だ。
主人公が高校1年生の少年なこともあって全般的に軽いノリ。主人公の視点でのみ描かれているため、突然話が飛んだり、引っ張りで必要以上にじらされることはなく、時系列どおり素直に物語が展開していくので気持ち良くサクサク読みすすめるようになっている。
やや幼さは感じられるものの、謎めいたタイトルから持った期待は裏切られることなく、”マキメワールド”らしいパンチと優しさのある物語だった。

読むにあたり、まずは世界観を確認し、「そういうものだ」と思い込むことから始めないといけないのが”マキメワードル”だ。そして今回は”琵琶湖の神秘”を受け入れなくてはならず、長年その恩恵にあずかっている一族にまつわる物語ということになる。

代々琵琶湖のほとりに住み、琵琶湖から”超能力”を授かっているのが日出(ひので)家と棗(なつめ)家。力の根源は同じながらその能力はまるで異なっており、互いを嫌悪し対立している両家だ。両家とも凡人には分からない”超能力”を駆使することで(つまりはインチキで)繁栄してきた一族とのこと。 しかし、時代は流れ、現代にまで至るとそうした力も徐々に弱まり、すでに失われてしまった技術もあるらしい。また、一応両家とも遺伝的に受け継がれる力だが、代々受け継がれてきただけにキチンとした掟やら習わしがあり、”力”自体もそれ相応に訓練をして強化なり制御なりを行う必要があるとのこと。とにかく両家にとって琵琶湖サマサマだというのが基本中の基本で大前提になっているところがポイントだ。

ということで、ありえねぇ超ファンタジーでありながら、何故だかリアルっぽさを感じてしまうのが”マキメワールド”。それは几帳面なまでに細部にまで施された設定によるところで、読み手は知らず知らず(有無を言わさず)納得させられているように思う。(それ故に時折説明がまわりくどかったり、冗長過ぎたりするところもあるんだけど)。

そして、もはや末裔といっても良さそうな両家の子孫たちが今回の主人公で、物語は、決められた年齢に達した日出涼介が、掟に従い親元を離れて修業を行うために本家に居候するところから動き出す。
日出家は“力”で思うままに繁栄してきた一族。本家の住居は正真正銘の“城“で、本家のオジや長男坊はまさに”殿様”を絵にかいたような人物だ。(ついでに長女も常識とかけ離れた存在だ)。力はあれどほとんど凡人の涼介は、非日常が日常化している現状にカルチャーショックを受けまくるのだが、慣れとは恐ろしいもので次第に馴染んでゆくことになる。
長男坊の淡十郎と涼介は同じ歳で、高校では同じクラスに通うことになる。そして棗家の長男:広海もまた同じクラスになったことからアレコレ騒動が勃発。さらに両家と因縁深い家柄の人物が3人の通う高校の“校長“に就任したことにより、両家が存続の危機に直面するといった大事件へと発展していくのだ。

何がどうなるのかは読んで確かめてもらうこととして、映像化したら壮大で愉しそうな作品になるのでは?という感じだが、基本的には少年たちがイニシアチブを発揮しまくった一発逆転劇というものではない。彼らはそのまま我が身の非力さや人間の小ささを知り、それぞれの事、一族の事、両家の事などを学び感じ取り、今自分たちに出来ることをする、ただそれだけの話だったりする。結局のところ、(いろいろな意味で)身から出た錆のようなもので、やや反則気味な収拾の付け方のように感じなくもないが、優しい余韻が漂う終わり方は後味としては悪くない。

単行本ではあるけれど、ライトノベルに近い感覚で読める作品。摩訶不思議で大胆なファンタジーが好きな方におススメの一冊と思う。

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コメント

こんにちは、私はこの本を読んだ外国人です。ちょっと分からないところがありますが、ここで聞いてもよろしいでしょうか?

P.424
かつて相手が自分より背が高いことに腹を立て、夷服岳が浅井岳の首をちょん切り、そのてっぺんがここまで飛んできたという言い伝えがあるが、急な傾斜が続く様はまさに「竹生山」の眺めだった。」

小説の中で「竹生島」についてそう書いていますが、それは竹生島は山口県の竹生山と同じような急な傾斜があると言う意味ですか?或いは傾斜には「竹生」があるからまさに「竹生山」だと言う意味ですか?「竹生山」ってどういう眺めでしょうか?

この感想の文章を読んで、「あ、ここで聞いても大丈夫かな」と思って、つい書いてしまった。迷惑であれば、削除してください。教えって頂ければ幸いです。よろしくお願い申し上げます。

投稿: EMILY | 2011/10/03 11:24

■EMILYさん、こんにちは
はじめまして。
なにやらご質問のようですが、ご質問の内容について、私はまったく疑問にも思わなかったところでしたし、生まれも育ちも根っからの新潟県民なことから琵琶湖周辺の地理にもうとく、正確なお返事は出来ないものと思われます。
それでも、外国の方とおっしゃいますし、改めて聞かれると私も気になりましたので、少し調べてみました。

そもそも「夷服岳と浅井岳」の話は古事記や日本書紀といった古代日本の歴史書に描かれている神様の話のことであり、「Wikipedia」で竹生島を検索すると同じことが書かれていたりします。
昔話風に判り易く書かれたブログさんもありましたので参考までに。

http://blog.ko-blog.jp/imaha-mukashi/kiji/1910.html

そして、どうやら「竹生島」のことを通称「竹生山」と言うことがあるようで、そもそもちょん切られた山(浅井岳)のてっぺんが湖に落ちて”島”になったものだから、”島”ではあるけれど、実際は傾斜からなにから”山”そのものだよねー、ってことなのではないかと推測します。

※コチラも参考までに
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/photodetail.php?did=104356&pid=9af941f02f480adf2281da48ae4665bd

また”竹生”という地名は他にもいくつかあるようで、山口県の竹生山とは無関係と思われます。もともと読み方が「ちくぶ」ではなく「たけお」だそうです。

お役に立てればなによりですが、間違っていたらごめんなさいね。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/10/03 17:45

こんなに早く回答してくださるとは思わなかったので、驚きもし喜びもしました。
詳しいご説明を読んで、大体分かりました。
お手数をかけて、申し訳ございません。
随分役に立ちました、本当に、本当にありがとうございました。

投稿: EMILY(台湾より) | 2011/10/03 21:51

■EMILYさん、こんにちは
台湾の方でしたか(^^)
多少なりお役に立てたようで良かったです。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/10/04 19:52

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 舞台は琵琶湖畔。人の心を操ることができる日出一族と、人の時間を操ることができる棗一族の因縁…とここまで書くだけで、前半 1/4 くらいのネタバラシになってしまうな。オフィシャルでもこのあたりまでは書いてるので許して欲しい。  相変わらず人を食った世界設定なのだが、本作は今までとは一味違う。明確に「戦い」が設定されている。 「鹿男あをによし」でも不思議な力が出ては来るが、これは争いに至らない。 「鴨川ホルモー」は確かに戦いの話で、特に鬼のあたりの描写はなかなかすさまじいのだが、どことなく牧歌的な印象... [続きを読む]

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