文庫版『別冊 図書館戦争Ⅰ』 有川 浩 〔著〕
文庫版「図書館戦争」シリーズもいよいよ別冊へ突入。今回収録された短編はアニメDVDの第3巻に収録された『マイ・レイディ』。小牧&毬江の重要なエピソードでありながら、その内容から地上波未放映(放送できなかった)の1話が収録されたDVD3巻だったこともあり、作者的にもフォローするような小牧&毬江の甘いお話だったりする。毬江にとって大きな恋の障害になっていた年の差は、いざ乗り越えてみると今度は逆に「若さ」という点で小牧を悩ませることに。あの小牧がたかが大学生相手に嫉妬しちゃうんだから恋心とはなんと厄介なものだろう。
相思相愛だろうが恋愛進行中には常に喜びと不安が付きまとうもので、とにかく全編がそんなお話。でも結局のところラブラブ全開な別冊なんだなぁ。
本編の感想は以前にアップしたものを参考にしてもらうとして省略するが、何であれベタ甘が苦手な人あてに警告しちゃうくらい小恥ずかしい内容の物語であるからして、「そんなもんワザワザ再現なんぞできるかっ!」といったところではある。でも、ただそれだけじゃなく、身の回りにふつうにありそうな、ちょっとした社会問題ともいえるような小さな事件を絡めつつラブコメを完成させているところは相変わらずお見事と言え、ベタ甘にはゴロゴロと転げまわりたくなる衝動に駆られつつも、それも含めて気に入っている別冊「Ⅰ&Ⅱ」だったりする。
特に「Ⅰ」は短編集みたいなものでサクっと読めることもあり一番リピートしているかもしれない。そして毎度”アマゾネス笠原”の姿を想像して爆笑し、郁のロストバージンエピをヒヤヒヤニヤニヤしながら見守り、羨ましいぞと思いつつもみんなが幸せという出来過ぎの心地さを味わう(酔う)感じかなと。
そういえば、単行本の表紙(後ろ側)には例の“歯型”がひそかに描き込まれていたのだが、さすがに文庫版用に描きおろし直された今回は、スペースの問題からか無くなってしまったのが残念なところ。気になる方はぜひ書店で単行本を確認してみるのも一興かと。
それから文庫版「あとがき」によると、”Ⅰ”はイチでもワンでもなく、実はファースト(First)と読んで欲しかったそうで、それが正しいのだとか。いや~初めて知った。
短編『マイ・レイディ』も以前の感想を参考にしてもらうとするが、内容をよくよく思うとこの話は「別冊」にぴったりだ。いざ枷が外れてしまえば小牧も堂上も案外大胆で、所構わずヤルときはヤッちゃうみたいなところがある。性格は違えど結構似た者同士。2人の差はボロを出すか出さないかであって、いじりキャラかいじられキャラかで分かれるのはここなんだよね。
文庫用の「有川先生インタビュー」はこれまでアチコチで話されている内容とぶれることもなく、いつもどおりといったところ。目新しさはほとんどないものの単行本派でも立ち読みなどで補完してみてもよいかと。
いよいよ次がラスト。置き去りにされていた手塚と柴崎にも春が来るし、おなかがいっぱいになること間違いなし。見事な大団円をお楽しみに。
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