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2011/07/11

「囮物語」西尾維新/著

Otori

2nd.シーズン4作目となる『囮物語』は【なでこメデューサ】。
語り部は一応千石撫子。なぜ一応なのかと言えば、この「囮物語」は撫子そのものの事だから。羽川や神原が心中を吐露していた語りとは趣が違い、撫子による自作自演の物語であるため彼女のコトバでは全体的にどこまで信憑性があるものか判断に悩む、ということで一応とした。
若干異質で結末さえない今作。よって読者の賛否は大きく割れるかと思ったが、Amazonあたりの投稿では案外評判は上々といったところ。私も作品としての『囮物語』はこれまでのシリーズ同様に”ヤラレタ感”満載で、期待を裏切らないものと太鼓判を押すところだ。でも、それとは別に感情的なところでは拒絶反応もあったりする。
撫子の“可愛さ”全否定及びその本質(本性)がまざまざと描かれているのが『囮物語』。撫子への共感の有無で180度違った感想を持つのではないだろうか。

『囮物語』は、阿良々木暦が高校3年の2学期、9月から11月にかけて起こった出来事だった。『猫物語(白)』から少し後にあたるわけだが、なんと羽川はこの時点で休学届を出して世界視察のための下準備に出掛けてしまっていた。『花物語』にて卒業後本格的に旅に出たとは語られていたが、まさか下準備までしていたとはね。もしかして失恋旅行かな?よって羽川は名前のみの登場。また神原も“蛇”がらみで関係者だったから登場するかと思いきや、同じく名前のみだった。
とにかく時系列がぐちゃぐちゃな上に棚上げ・有耶無耶は西尾作品の真骨頂だが、今回ほど救われない後味はなかったように思う。(少なくともこのシリーズでは)。先にも書いたが、とりあえず毎回書かれていた“後日談”あるいは“オチ”が今回はない。何故ならば、決着が半年後に先送りされているからで後日談は書きようがないわけだ。強いて言えば『花物語』が半年以上先の物語であるため、最悪の事態で終了した今回の事件もなんとか無事?に解決するものと、たとえ経緯が書かれていなくても安心だけはできるのだが、やはりスッキリはしない。「あとがき」によれば12月発売予定の『恋物語』(まさしく半年後だ)で“卒業”について触れられるとのことから、ここでようやく事の顛末が明かされることになるとは思うが、西尾作品は(良い意味で)裏切るのが大得意だから油断ならないし、主人公が戦場ヶ原にシフトしてしまえばまったく異なる角度からのものになる可能性が強く、安易に“続き”とは考えない方が良さそうだと思うところ。

さて、見事に暴露されてしまった撫子の本質なのだが、私としては意外でもなんでもなく、「ああ、やっぱりね」というものだった。それは私が彼女を好きになれなかった理由そのものだったから。それでも「嫌い」としていなかったのは、彼女は確信犯だけど半分は天然でソレをやっていると思っていたから「まだ許せるかな」といったところ。しかしながら彼女を「可愛い」と思ったことは一度もないし、むしろズレててウザくて気持ち悪い子という位置づけだったことは間違いないのだけどね。
とにかく登場当初から撫子とファイヤーシスターズ(特に月火ちゃん)との関係は“友達”と言えるほどの親密さは微塵も感じられなかったわけで、撫子のような子と付き合いがあったこと自体疑問に思っていたくらい。でも今回、月火ちゃんも私と同じように撫子を見ていたことが判り、更に月火ちゃんがまるで容赦のない形で撫子をメッタ斬りにしてくれたことで気分は爽快、思わず月火ちゃんに拍手喝さいしてしまったのだった。また同時に忍ちゃんも歯に衣を着せぬ物言いで撫子の本性を暴いてくれたのが良かったなぁ。思わず「そうだ、そうだ!」とエールをおくっちゃったし。

正直なところ、前半は言い訳ばかりして好んで停滞している撫子語りにうんざりで、ちっとも読書がはかどらなかったのだけど、これらのおかげでスピードが上昇、あとは一気に最後までとなった。

それにしても、開き直った撫子の逆切れ加減のすさまじいこと。反動なんてもんじゃないというか、もはや加減なんてありゃしない豹変にはドン引きするところ。(『刀語』の七実お姉ちゃんっぽかったなぁ)。
ぶっちゃけて言うと、撫子は自ら自分の殻に閉じこもることで全ての厄介事を拒絶し、自分が傷つかないように現実逃避した安全地帯の中で安定を望んでいる単なる怠け者で、幼稚で我儘で嘘つきで、自分だけが可愛い“ガキそのもの“ってことなのだけど、それすら自分に暗示をかけて気が付かない振りをしていた、根っから救いようのない子だったわけだ。
漢字もろくに書けない頭の悪い子。思慮の浅い愚かな子。聞きたくないことは聞こえないし、見たいものを見ることができる痛くて可哀想な子。
それに比べて、怪異でありながらしっかり”人間”として成長している月火ちゃんであり、戦場ヶ原ひたぎのなんとカッコよいこと。可愛さ余って憎さ100倍から変身して暦&忍コンビをボロボロにしちゃった撫子への戦場ヶ原の対応は見事としか言いようがない。そもそも知性も行動力も格が違ってるから当然と言えば当然かもしれないが、実際のところ、暦が瀕死と聞いた時の戦場ヶ原の心中が幾ばくのものであったかは計りしれない。それでもとっさにも頭の悪い撫子からもぎ取った半年という時間が暦の命運の鍵になったといっても良さそうで、この物語の唯一の救いになっているところがスゴイと思った。

2nd.シーズンを始めるにあたってすべて副題までが最初に発表されていたが、その時点で個別にここまでの構想が出来ていたのかと思うと、もう脱帽するしかない感じ。実際のところを一度作者に聞いてみたいところだ。

ところで、忍野扇がいっそう胡散臭い存在になっているところもポイントのひとつで、忍ちゃんの「姪っ子きどり」という発言も気になるところ。どうやら撫子をけし掛けた張本人とも言える言動をしたのは間違いないようで、彼女だか彼だかすら定かでない扇にはどんな思惑が、どんな目的があるのか、それはいつ明かされるのか非常に楽しみになった。

次巻は『鬼物語(しのぶタイム)』、9月発売予定とのこと。時系列的にまた少し遡ってようやく学習塾の焼失事件の真相が明かされるらしい。
無理ムリ言いながら、きっちり予定通りに発売しているところもエライと思うわけで、9月を期待して待ちたいと思う。

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コメント

はじめまして♪
突然ですが、相互リンクをお願いしたくコメントしました。

こちらのブログは

映画データベース
http://blog.livedoor.jp/kimagurekobo/

です。
勝手ながら先にこちらからは
リンクを貼らせていただいちゃいました^^

よろしくおねがいします!

投稿: ヤジー | 2011/07/11 23:51

■ヤジーさん、はじめましてsun
リンクを貼るくらいはかまいませんが、記事にまったく関係のないコメントは好みませんので、以後はお願いしますね。

・・その後、一切の音沙汰がないようなので、こちらでのリンクは辞めさせていただくことにしました。
再度申し込まれるようでしたら、改めてご連絡ください。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/07/13 17:55

こんにちは^^

とても共感できる書評でした^^アニメ観たら花澤が可愛く演じてるので撫子の人気が高いのですが本から入った読者からすればそうはいかないですよねぇ^^;
月火ちゃんや忍が正体を暴くとはまぁ予想外だったわけですがたいむさんの言うようにスッキリしましたwww
逆に撫子のような性格は撫子という名前への当てつけってくらいに酷く書かれててびっくりしましたが^^;

私は今作は2シーズンの中では一番だと思います^^何故かというと計算しつくされた西尾節が表現された作品だと思うからです。たいむさんの言うとおり2期を始めるに当たって計算していたのなら脱帽ものですが、戯言シリーズやめだかボックスを同時掲載している西尾ならありえるよなーと思えるのが不思議なところ^^;本人は3期いくんだろうなぁとあとがきに書いてあるのでそこまで計算されているのかと思うと驚愕ですよね^^;

だから扇の存在が一番のKeyな気がして今度整理してみようかと思う今日このごろ^^;;

今年の12月は買わざるを得ない作品にされたことに悔しさを感じると共に大きな期待をしていますw

長文失礼しました_(_^_)_

投稿: 瞬光 | 2011/07/14 10:52

■瞬光さん、こんにちはsun
いろいろと衝撃的な内容でしたね。
確かヒロインの中で一番人気と聞いてましたので、ファンの反応がどんなものかと読後に思わずアマゾンの書評を読んでしまいましたよ。
実際、あちらこちらで話題騒然となったとか。
私としては、アニメでも撫子が苦手でそのためにしばらくは花澤さんまで嫌いになりそうだったくらいなのですんなり受け入れましたが、本当に驚かされる「囮物語」には楽しませてもらいました。
にしても、瞬光さんもそのようですが「小説」としてなかなか評価高いですよね。
商売っ気かどうかはともかく、続きが読みたくなるのはやはり作者の手腕でしょうし、手を変え品を変えこれからも楽しませて欲しいです。
ただbox文庫の値段がもう少し安いとうれしいのだけどね(^^;
あとサードシーズンは・・・ちょっと微妙?
戦場ケ原好きとしては、2nd.でで打ち止めてもいいかなって内容を期待しているので、特に。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/07/15 15:51

たいむさんこんにちは^^

たいむさんはそこまで撫子嫌いでしたか^^;まぁ人の好みはそれぞれですが珍しいですねぇw大学生ぐらいは花澤好きからの撫子大好きってのは多いんですよ^^;萌えキャラとして^^;;

私もそうですがこういうシリーズモノは西尾信者がレビューあげるので話題作は評価が上がりがちなんですよね^^;たいむさんのような中間の人のレビューがとても新鮮に感じて助かってますw
たしかに本の値段にはいつも泣きそうです(´;ω;`)

サードに関してはサードまでいくとたしかにダラダラしそうだし私も戦場ヶ原好きだから2ndの最後でガハラさんに締めてもらいたいなと思ってるわけですがw

次の作品のレビューを楽しみにしてます^^

余談ですが私は今日ハリーポッターの最新作を観てきたのですが個人的にはシリーズで一番よかったと思うのですが観る予定があったらレビュー楽しみにしてます^^

投稿: 瞬光 | 2011/07/15 18:29

■瞬光さん、こんにちはsun
めずらしいですか?
思うに、撫子って男性がこうあって欲しいと思う少女のイメージそのまんまじゃないですか?笑い上戸で、従順っぽくって、オタクネタで攻めてくるような感じの。まったくもって趣味のヒロインってずっと思ってましたよ。

花澤さんは、こばともあんまり好きじゃなくってね。
「海月姫」で初めて好感をもった感じです。(女優の深津絵里っぽくって)

暦は好きだし、サードはあれば読みたくなるのだけど、願わくは引き際は間違えないで欲しいかな。


ハリポタは最初からのお付き合い。
すでに大人になっていたので、レギュラー陣のリアルな成長に対する感慨深さが強くなりますが、ハリーと同世代で共に成長してきた世代は思い入れも殊更でしょう。
3Dにする意味はないと思うけれど、全体として良く纏まっていたし、2部にしたのは正解と思います。
最後までやってくれてありがとう!ですねw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/07/16 15:11

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