« 「コクリコ坂から」みた。 | トップページ | 文庫版『別冊 図書館戦争Ⅰ』 有川 浩 〔著〕 »

2011/07/24

『3月のライオン(6)』 羽海野 チカ (作)

Lian_6

イジメられていた友達を擁護したことで、今度は自分がターゲットになってしまったひなちゃん。多分そうなるだろうと解っていたのに、自分の正義を貫いたことで、ひなちゃんの学校生活が針のムシロと化してしまう。そんなひなちゃんを家族は褒め、苦しみを優しく受け止め、彼女の辛い戦いを陰で支えるようにして見守るしかない。そして零はひなちゃんのために自分が出来ることを必死に考え、色々なモノを心に本来の自分の戦いに挑む。まさに(帯のコピーどおり)戦う6巻だった。
5巻の後半から続くひなちゃんの辛い話なだけに、早期の鎮静化を期待していたが、現実にもイジメ問題がそう簡単にどうにかなるものではないのと同じで、強いて言うならば「根気比べ」に突入したような状態となった。イジメに特効薬はなしだ。

ひなちゃんといっしょに泣いて、あかりさんや零の気持ちになって泣いて、極めつけに二階堂くんの本気と覚悟に泣かされて、ずーっと泣きながら読むんでいた。ほんとうはとてもとても優しい物語なのだけどね。

結論から言えば、ひなちゃんのイジメ問題はまったく先が見えない状態のまんま。けれど、ひなちゃんにも家族や零、高橋くんといった味方がいる。”家族”として葛藤を抱えながらも必死にひなちゃんを護ろうとするおじいちゃんやあかりさん、友達として変わらず接することでひなちゃんの孤独感を癒し、行動で周囲に働き掛ける高橋くんだ。そして、孤独を人一倍知っている零はその立場から自分がひなちゃんにしてあげられることを模索し、まずは自分が出来ることとすべきことに没頭する。
けれど、寂しい生い立ちから少しズレちゃっている零なので、最初は「守る」「力になる」という意味を微妙に履き違えていた。それでも他者とも自分とも戦い続けるひなちゃんの”戦う姿勢”を見て、また零を”心友(ライバル)”と呼び慕ってくる二階堂くんの常に全力での満身創痍の闘いを知り、ようやくいろいろなことを理解する。
これまでも少しずつ”気付いて”きた零だが、まだまだ「後になって」ということが多かった。でも今回の零の”気付き”は「これから」というところで齎され、その結果、零に勝利を呼び込んだ。攻撃と防御は紙一重。生かすも殺すも自分次第。強さの中にある優しさと思いやり。優しさも思いやりも独りよがりではその意味を成さない。
動機は純・不純様々なものが混じり合っていたけれど、念願のタイトルを取ったことでひとつ壁を乗り越えた零。「誰かに必要とされたい」など人間らしい欲望も出はじめた零には、タイトルはカタチ(実績)として自信につながるもので、零が今後さらにどう変化していくのか期待したいところだ。

『3月のライオン』は最初から割とシビアな内容で描かれてきたけれど、そう感じさせない温かさの有る作品だった。もちろんそれは今も変わっていないが、さすがにイジメ問題が盛り込まれると、重さを受け止めるよう心して読まなければならない。
”普通=大多数”(の意見のようなもの)と世間では捉えがちだが、大多数が必ずしも正しいわけではないことを本当は誰もが知っているはず。しかし、正しさや誤りの判断を棚に上げて”同じ”であることに安心感を求め、いつしかその中での強きものの色に多くが染まっていく傾向は強く、また異端を偏見の目で見て排除したがり、マイノリティを徹底的に差別しようとする傾向はそこかしこで見られる現象に思う。
イジメとは『長いものには巻かれろ』の拡大解釈が齎す副作用とでもいおうか、多くの場合は無関係な大多数による自己防衛本能が事を大きくしてしまうように思われる。人間に限らず、動物でも植物でも世界には必ず強者と弱者が存在する。大きな意味でイジメも自然の摂理と言ってしまえばそれまでだけど、人間には人間にだけ与えられた知性や理性があり、それが唯一解決策に繋げられるもののはず。(まぁついでに感情ってヤツもあるから厄介だったりするんだけど)。
また『臭いものに蓋』という怠慢、(ひなちゃんの場合は担任教師の逃避行動)も事態を悪化させる一例として絡ませてあったが、とにかくイジメは一筋縄では行かない問題で、事を余計に悪化させないために、「環境を変える」「時間が解決するのを待つ」等消極的な対処法しか取りようがないのが辛いところ。本編中にも「万能な解決策はない」とハッキリ描かれており、この物語が一体どういった着地点へ辿り着くのかとても気になる。気持ちとしてはガツンと爽快な展開を望みたいところだが、おそらくそうはならないであろうと、痛みを分かち合いながら、「でも、世の中それだけじゃないんだよ」って方向になるのではないかと思うのだが、悲観的には捉えず、「様々な人間が、何かを取り戻していく優しい物語」という最初からの触れ込みを信じ、次巻を待ちたいと思う。
・・それでも、願わくば、笑顔の多い7巻になりますように。。。なのだが。

今回も「続きはヤングアニマル15号(7/22発売)で読める」なんて帯にあるから気になっちゃうけれど、割り切って7巻の発売を心待ちにしようと思う。

|

« 「コクリコ坂から」みた。 | トップページ | 文庫版『別冊 図書館戦争Ⅰ』 有川 浩 〔著〕 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106009/52292189

この記事へのトラックバック一覧です: 『3月のライオン(6)』 羽海野 チカ (作) :

» 3月のライオン 6 [shaberiba]
勝ちたい 勝ちたい!- そして誰かに必要とされたい----   3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)(2011/07/22)羽海野チカ商品詳細を見る 「ついにやる気を出してくれたのか!熱くほとばしる情熱の炎に ...... [続きを読む]

受信: 2011/08/09 22:37

« 「コクリコ坂から」みた。 | トップページ | 文庫版『別冊 図書館戦争Ⅰ』 有川 浩 〔著〕 »