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2011/06/03

「マイ・バック・ページ」みた。

My_back_page

昭和30-40年代での学生運動が盛んだった頃は、まだ生まれていないか赤ん坊であり、彼らと同じ年頃になった時にはバブル真っ盛りという世代のため、未だに彼らの心理とか行動原理がのみこめない私で、どうもこの頃の話は苦手だったりする。
しかし、松山くんと妻夫木くんが高い評価を得ている作品を逃してしまうのも勿体なく思い、意を決して鑑賞。
やはり食わず嫌いはするものじゃないね。これは観て良かった。

とはいえ基礎知識が不十分であり、ちゃんとしたレヴューは書ける気がしないので、印象に近い感想のみにしたいと思う。よってあらすじや考察を知りたい人は、どこか詳しく書かれているところを探して欲しい。

実のところ、もっと嫌悪感を持つような作品と想像していた。予告編から松山くん演じる梅山は明らかに口だけ男の匂いがプンプンしていたし、妻夫木くん演じる沢田も功を焦っているだけの若手ジャーナリストっぽい感じだったから。
実際そうなのだけど、梅山はあれほどまでに幼稚で空っぽなのに、よくもまぁ次から次へと嘘が付けるというか、そういうところだけ頭の回転が速いのは一種の才能?とか思えてくるのは何だろう?と思い、沢田も沢田で自分の望む姿に映るフィルターを自ら掛けていることに気が付いていないだけと分かるため、なんとなく同情しちゃうところがあり、馬鹿な意地も沢田自身に跳ね返るだけと思えば、特に何も言うことはないという心境になってくる。
でも、きっとそれは松山くんと妻夫木くんが演じたからだと思い、救いかなと感じる。それでも、一連の事件としては梅山の革命家きどりも、彼を心酔する同志?も、沢田の他力本願もみんなウンザリだし、特に命を奪ったことに対するあまりの無関心さと、挙句に屁理屈で殺人を誤魔化すところは怒りを通り越して呆れるところで、ずっと心の中がザラザラしていたことは間違いなし。おそらく、普段ならば一言「気持ち悪い」と書いたんじゃないかな。

ところが、そんな私のモヤモヤな気持ちを、表紙のモデルをやっていた女の子がズバリ言ってくれたところが良かったなぁ。そして、最後の沢田の大泣きが映画の後味をがらっと変えてくれたように思う。(それにしても冒頭の”ウサギ売り”がこんな伏線になっていたとはね)。
沢田はここでやっと自分のフィルターに気が付いたのかなって。そもそも「こんなはずじゃなかった」というタイプにありがちだけど、「コイツらとは住む世界が違う」みたいなエリートフィルターをしっかり自分に掛けていた沢田で、梅山が逮捕されてもまだ外しきれていなかったフィルターがやっと外せたように思えた。最後はボロボロと目から鱗を落とすような泣き笑いに変わってなんだか嬉しくなったしね。

重いは重いけれどそれほど重さを感じない、見応えのある映画だったと思う。

総評:★★★★  好き度:★★★++  オススメ度:★★★★

けど、松山くんの”空っぽ男役”はあまり見たくないなぁ。嫌いになりそうだもん。上手すぎで

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コメント

私も学生運動の時代は全くしらないのですが、
監督や俳優陣のおかげで、当時の雰囲気を身近に
感じることが出来たように思います。
それにしても梅山の最低なことといったら!
松ケン上手いですよね~まったく(笑)

投稿: KLY | 2011/06/03 23:26

■KLYさん、こんにちは
脇役陣も良かったですよね。昭和の雰囲気をバリバリ出してくれていましたし。

梅山みたいなヤツは、いつでもどこでもいますよね。あることないこと言って責任逃れする技?は悪い意味で見事です。
それを自然に演じてしまった松山くんは、良くも悪くも見事です!(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2011/06/03 23:33

この時代って、この時代に生きた人にしか分からないものがあるんでしょうね。
現代に生きる私達には日本赤軍って北朝鮮に亡命したり、リンチとしたりして、結局何をしたかったの?と思うのと同じなんでしょうけどね。

あのラストの涙の意味は見る人によって様々な意見があって、凄く面白いです。

投稿: にゃむばなな | 2011/06/06 22:01

■にゃむばななさん、こんにちは
簡単に言えば、その時代に興味があるかないかなのかもしれません。
どちらかというと「ない」ほうなのだけど、それがあって今があると思うと、やはり知って損は無し、って気がしてます。
それにしても、梅山みたいな人間って今もいますよねw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/06/08 22:16

こちらでは、近場の劇場はまともにやってたのは1週間だけで、すぐに夕方の回の1回きり。2代若手スターなのに…と思う反面、やはり題材でしょうか。
ちょっと遅れて、しかも、遠出して観てきましたが、観て本当に良かったです。
70年代のノスタルジーを感じました。

妻夫木君の泣きはよかったですね。

マツケンと2人で歌った「雨をみたかい」を聞けただけで、映画を観に行った価値は十分ありました。

投稿: mariyon | 2011/06/10 18:32

■mariyonさん、こんにちは
こちらも上映館は多くないですね。期間はそこそこだけど。
良くできたいた良い映画なのにね。
俳優は人気でも、一般受けするものでもないからかな?

あの「泣き」は感慨深いものがありますよね。


さてさて「阪急電車」が2週間しか期間がないので早く行かなくちゃですw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/06/12 09:28

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