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2011/06/02

「手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく」みた。

Budda

ブッダと言えば、お釈迦様のことで仏教の開祖である。そんなスケールのでかい物語を、よくぞここまで頑張って作ったという印象。
残念ながら、原作はまともに通しで読んでいないので詳しいことはわからないが、手塚治虫の『ブッダ』はお釈迦様の一生を描く大河ドラマといって良いと思う。
その中で映画は、ブッダがまだ”シッタールダ”と呼ばれていた釈迦国の王子だった頃の話で、熟考の末に出家するまでが描かれている。

正直なところ、内容が内容だけに感想を書くのが難しい。そもそも釈迦にもそれらの時代背景にも造詣が深くないのでほぼウケウリでしかものが書けない。また、ブッダの苦悩など哲学的な部分に関するところで、もっともらしいことをもっともらしく書くのはおこがましくも思え、なんとも書きようがないというのが本音だ。

なぜ殺す。なぜ差別する(なぜ差別がある)。
私としては今のところ、「それが人間」という半ば諦めて放棄している答えしかなく、理屈で何とかなるモノと思っていないところがある。また、「生あるものはすべからく老いや病に苦しみ、死ぬために生きているだなんて、なんて悲しいの」、なんて風に悲観もしていない。もちろん身分制度による理不尽な扱いには憤りを持つし、欲にまみれた無駄な争い、奪う、犯す、殺すには、それこそ「なぜ」と問いたくなる気持ちは同じなのだけど。けれどそれで宗教に興味を持つってことはないんだな。

ということで、内容というよりは作品についてだが、シリアスながらも分かりやすく、子供から大人までが楽しめる良くできた作品と思う。ブッダ(シッタールダ)に関しては、歴史的に伝えられている背景や逸話を踏襲しているようで、勉強にもなる。
チャプラという架空のキャラクターも、結局のところシッタールダの抱く疑問を逆サイドから見せた例えのようなもので、チャプラは偽りで他者を蹴落とし出世してみたものの、最終的に(最初に)彼が望んでいたのは「基本的人権の尊重」と「平和」という、シンプルな願いだったりする。

受け手次第とは思うけれど、案外誰もが見入ってしまう映画なんじゃないかな。ただこの映画は、あくまでもシッタールダが出家するまでであり、強いて言うなら「序章」にすぎず、「これから」ってところで終わってしまう。手塚治虫のフィクションの物語としても、ブッタという偉大な人物?の物語としても、この先が気になるところで、いつか機会があれば原作で続きを読んでみたいと思った。

東映の60周年記念作品ということであり、アニメを見ない大人の興味を引くための話題性づくりとは思うが、吉永さんほか俳優さんの声優起用について、悪くはないがやっぱりイマ イチ感は否定できないと感じた。皆さん役者として素晴らしい方々と思うが、冒頭に登場した永井さんの貫録からして、声のプロとの差は歴然。脇役の声優陣も実力と人気を兼ね備えた方々がほとんどで、どうせならば・・・と思うところ。

総評:★★★★   好き度:★★★++   オススメ度:★★★★

「聖☆おにいさん」のブッタとはかけ離れているけれど、小ネタになっているところが登場するたびにこっそり笑っていた。手塚作品はちょっと・・と思っても、併せて読むと楽しく読めるかも?

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コメント

たいむさんも気に入られたんですね~^^
私も結構気に入ったんですが、どうも少数派っぽい
ですね。(笑)
仰るとおり、大人から子供まで素直に楽しみながら
お釈迦様の伝記に関して一通り学べる良作だと思う
んです。
ただ声優はちょっと…。特に父王はあまりに酷くて^^;

投稿: KLY | 2011/06/02 22:22

■KLYさん、こんにちは
原作に思い入れはないし、期待もしていなかったところはあるけれど、良く作ったなーって思う出来だったと思いますよ。

まぁ、もともとが手塚作品なんでね。客を選ぶというか、ダメな人はダメなんじゃないかと。

>父王
申し訳ないけど、ほんともう少しなんとかならなかったのかなーって思いますね。
底なし沼に落ちる子供もそうだけど。。。(^^;

投稿: たいむ(管理人) | 2011/06/02 22:30

いろいろあったんですが、やっぱり観てきました。
すごく宗教色が強かったらいやだなぁ~~って思ってたんですが、そんなこともなく、お話に引き込まれて楽しく観ることができました。

>アニメを見ない大人の興味を引くための話題
その成果はあったのか、アニメにしてはむちゃ年齢層が高かったですが、やっぱ、声優さんで不通にやってほしかったです。

投稿: mariyon | 2011/06/11 15:17

■mariyonさん、こんにちは
ああ、すみません、お返事したつもりになっていました。

布教とか洗脳っぽい宗教作品は私も敬遠するところですが、どちらかというと伝記に近く、身近な雰囲気で見やすかったですよね。

吉永さんパワーもあったかもしれませんが、やはり”手塚作品”は牽引力があるのかもしれませんね。
けれど、やっぱり声優は本職さんでお願いしたいですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/06/14 22:33

はじめまして。アメリカ在住なのですが、手塚作品は英語版も売られています。ブッダは子どものころから大好きだったので、こないだ英語版を全巻そろえました。レビューを書きましたのでよろしければ。

http://adansonian.blogspot.com/2011/06/buddha.html

こちらの人も「面白い」と数日で読み終えていました。偉大です。ちなみにブラックジャックも買いました。

投稿: adansonian | 2011/06/30 06:41

■adansonianさん、こんにちは
原作の英語版とは凄いですね。
ニュアンスとかどうなんでしょう?
翻訳された方の根性を感じますw(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2011/07/02 01:02

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