「ダンシング・チャップリン」みた。
とにかく、2幕あってのこの作品と感じる。
1幕目は、2幕目を制作するために周防監督がオリジナル作品の振付家:ローラン・プティ氏に自らの構想を提案して映画化の承諾を取るところ、チャールズ・チャップリンの4男のユージーン・チャップリン氏への取材、2ヶ月間に及ぶオリジナルのダンサー:ルイジ・ボリーニ氏及びヒロイン役の草刈民代ほか数名のダンサーでのリハーサルの様子が映しだされている。
どんなに素晴らしく仕上がった作品でも、制作段階や舞台裏では様々な難題やら障害やらが発生し、紆余曲折の果てに漸く完成するものと思うが、この作品も例外では無く幾度も大きな壁にぶち当たることになる。第2幕では、そうした壁の一つ一つをクリアした(時には強引にブチ壊し?)結果を見届けるような形で披露されることになる。
1幕で過程を見せた部分は必ず2幕で本番がある。つまり1幕と2幕は対なのだね。特に大きな問題となっていた、プティ氏の反発やダンサーの力量不足については、見事に完成させた第2幕を観ることでホッとするような、「やった!」と思うような仕上がりで、2幕ではすべてに於いて納得させられるような、安堵にも似た心地良さを感じることになるのではないだろうか。
映画は一発勝負の舞台とは異なり、”バレエ”にしてみれば、何テイクも撮り直した”完璧”さは逆に不自然だとも言えそう。ダンサーの負担やハードルもその分だけ高くなると1幕の中で伝えられていたが、やはり”完璧”な2幕はとても美しい。バレエの所作・動作に無駄なものは一切無く、とにかく綿密に計算されたもので、完成された「美」なのだと思った。
実際のところ、「公園」の許可は下りていなかったとか?それでもこだわった周防監督の決断は、私は成功だったと思う。これはあくまでもこれは映画だから、常に全体が視野に入る舞台では味わえない映画ならでは効果や演出を存分に楽しむべきものと思い、それぞれの美をプティ氏が納得してくれることを祈りたいところ。
チャップリン役のルイジ・ボリーノ氏は御歳60歳とのこと。ちょっぴりマイケル・ダグラス似のイケメンダンサーさんだけど、なんともお茶目で素敵だ♪ ダンサーは身体が資本の仕事であることを誰よりも痛感している話しっぷりはとても説得力があり、ずっと現役であってほしい半面、良き指導者にもなってほしい方だと思った。
舞台裏を見せるドキュメンタリーは好きなのだけど、バレエだけの本番は退屈しないかと心配だったが、どうしてどうして。素人でも見入ってしまう美しさに感動する映画に大満足だった。
総評:★★★★+ 好き度:★★★★++ オススメ度:★★★★
お気に入りは「小さなトゥシューズ」。本物チャップリンの「パンのダンス」は神業だけど
| 固定リンク | 0
コメント
実はこの作品、完成披露試写会で3月2日に観てるんです。でも余りにも色んなことがありすぎて、なんだかもう遠い昔のように感じます。
私も「小さなトゥシューズ」好きです。まさにダンシング・チャップリンだなって思います。
バレエ映画は好きですが、これはタイトルから想像するよりずっと一般的に楽しめる作品に仕上がっていると思いました。
投稿: KLY | 2011/05/24 00:25
周防監督と草刈さんの名前だけで観た口ですが、
美しいあの映像を観れただけで満足しました。
と、言いつつ眠気が…って、ほんと情けないんですが。
チャップリンと言う映画の原点をダンスで表現、それをまた映画に戻す、それだけでも興味が湧きます。興業的にすごく人が入る映画ではないけど、ダンスに興味がなくとも観てみたいと思わせるコンセプトもすごいと思いました。
投稿: mariyon | 2011/05/24 07:58
■KLYさん、こんにちは
本当に、3月4月はあっという間に過ぎて行った気がしますね。
バレエ音楽はともかく、ほとんどなじみがないので、鑑賞も少し考えましたが、初心者でも楽しめる映画でとても良かったと思います。
投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/25 19:39
■mariyonさん、こんにちは
あの美しさは観る価値ありましたね(^^)
とはいっても2幕だけだったら退屈かな?
周防監督のこだわりが詰まった作品。
左程興味は持たれないかもだけど、観たら納得、太鼓判の作品と思いました。
投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/25 19:42