文庫版『図書館危機』 有川 浩 〔著〕
本編の感想は今回も割愛。ただ、正直言うと「戦争」や「内乱」ではあまりのバカさ加減に好きになれなかった郁が、「内乱」の後半あたりから印象が変わりはじめ、「危機」ではすっかり可愛くなって好きに変わっていたという事実は強調しておこうと思う。
それはおそらく、郁が堂上の正体を知り、衝撃を受けつつもその事実をなんとか自分の中で解決しようと努力し始めたことから郁の成長が感じられ、彼女の欠点よりも長所のほうに目がいくようになり、好感が持てるようになったからと思う。(それまでの郁の未熟な熱血っぷりは目に余ってばかりだし、恋愛面では堂上があまりに不憫で仕方がなかったからね)。
それと同時に、図書館やタクスフォースを取り巻く環境(現実)がよりシビアになってきており、物語としてどれを取っても目が離せない展開に突入。期待を裏切らないとても面白い作品になっていると思う。
短編「ドック・ラン」の内容も、簡単ではあるが既にアップ済みなので割愛。
※「DVD『図書館戦争(1)』」参照
文庫化による時系列の調整及び加筆修正としては、比べて見るとニュアンス的に顕著な修正のように感じられるものだった。
簡単に言うと付き合いの度合いによる反応の変化といったところ。「戦争」序盤であるDVD第1巻の時点と、既に王子様の正体を知っている「危機」の時点では、2人の関係(上司と部下として)は随分と違ってきているわけだ。上司として新人相手と2年目になった部下とでは言葉遣いからして違ってくるのはごく当たり前のことだし、受け手側も2年目となればそれ相当の思考になるし、慣れた態度になっているのもごく普通のこと。
そこでほんの少し追加したり、言い回しを変えたり、削除したりすることで、1年がすすんでいるように感じられる修正がなされたわけだ。
児玉さんとの対談は、まずこのシリーズのテーマでもある「表現の自由」から、本編でも取り上げられていた”表現の規制”(いわゆる放送禁止用語のようなもの全般)について意見交換がされており、「今」をどう考えているか、有川先生のご主人のこと、”漢字”についてなどのお話になっている。実は「文庫版あとがき」でも「禁止用語」について触れられており、有川先生の強い思いが感じられるところに思う。
前回も書いたが、文庫買い直しを躊躇っている方も、文庫収録のこれらは目を通されても損は無いんじゃないかな?(単行本購買者なら、この程度の立ち読みは許して欲しいよね)
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