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2011/04/11

「花物語」西尾維新/著

Hanamonogatari

2nd.シーズン3作目となる『花物語』は【するがデビル】。もはや「いつものことだが」と前置きするのが妥当と言った風で、まったく予想の範疇にとどまってくれないというか、あっさり想定を超えた設定で肩すかしを喰らわしてくれるのが西尾作品で、まったくその通りというのがこの『花物語』だと思う。
まず、またまた「語り部」が暦からシリーズのヒロイン側、今回は神原駿河に移行している。そして、暦が高校3年の2学期初めに起こっていた事件のひとつで、神原が関わっているだろう事件の真相が明らかになるのかと思いきや、一気に半年以上の時間がぶっ飛び、季節は春、暦らは無事(?)に高校を卒業し、神原が3年に進級したところからスタートしており、まったくもって戸惑うことになる。
戸惑いというよりは、もしかしたら苛立ちのほうが強いかもしれない。事実上、あれもこれも投げっぱなしで先送りを宣言されたのと同義だし、時間は過ぎているのに、お馴染みのキャラの現在がほとんど見えない書かれ方はじれったくて仕方がない。
この辺は、このシリーズは、いつもこうした書かれ方である事は理解しているつもりだが、色々な意味で「忍耐」を必要とするシリーズだとつくづく思うところだ。でも、それを乗り越えて見届けたいシリーズ、と言えるところが一番なんだと思う。だからこうして付き合っている。付き合っていける。そして言いたいことが言える。わかる人には解るよね?、この感覚。

神原だけの物語なだけに、神原だけに関係してる新しいキャラクター:沼地蠟花が登場している。そして時間が経過した分、”忍野扇”なる人物が当たり前のように定着している。(扇くんは明らかに次回作以降の伏線と思われるが、”当たり前のように”居ちゃってるところが私としてはちょっとムカツク感じではある)。
沼地は、簡単にいうと神原のかつてのバスケのライバル。ただしバスケ界において名の通った優秀な選手だったことで神原とは互いに面識はあれど、それ以上でも以下でもない関係でしかない。既に沼地も故障が原因でバスケから離れており、このまま一生出逢うことが無くともなんら人生に支障はないといったところなのだが、再会が神原のこれからの人生に大きく関与することになるからこの物語はあるわけだ。
扇くんは、既に字面から察するとおりで”忍野さん”の遠縁という設定。でも鵜呑みにするほど読者が能天気とは作者も思っていないはず。おそらく”忍野忍”と似たところの境遇(措置)により忍野さんから名字を貰って”縁ある者”になった存在ではないかと思われる。男の子らしいが、もともとは女の子だった風の発言もあり(すっかり忘れていたが、『傾物語』の冒頭に女の子として登場していた)、今のところは謎だらけだ。暦とも懇意の関係にあるらしいが、その辺も含めて”空白期間”における2つの大きな事件に関係している人物と思われ、真相が明かされるのを待つしかないようだ。

さて、この『花物語』は何度も言っているが、神原の物語である。ずばりネタバレを言えば、”結果的”に神原は沼地との再会によって”悪魔の左手”から解放されることになる、それもあっけなく、といった話である。しかし、あくまでもそれは残った”結果”でしかないと言っておく。また神原の物語ではあるけれど、本当はその”悪魔の左手”を引き受けた「沼地蠟花」の物語というのが正しいのかもしれない。だから『花物語』。
・・でも、「引き受けた」とは仮の表現であって受け手側の勝手な解釈(誤解)だということをこの物語では学ぶことになる。よってこの話は沼地が神原を救ったという話でもない(それを言うならばむしろ神原こそ、である)と、同時に言っておく必要がある。
バスケの試合で攻守が秒刻みで切り替わるのと同じようなもので、裏表とも少し違う、色々な要素が組み合わさって成立したひとつの物語と思う。例えば「因果応報」であり、「情けは人の為ならず」であり、正義の定義とは、善悪の境界とは、自分らしさとは、なんてことが混ざり合って化学反応を起こしたひとつの現象のようなもので、家系や友人関係といった環境も含めて、どれ一つ欠いていても成り立たなかったであろう偶然で必然の産物。強いて一言でいうならば、暦の言葉を借りてそのまんま「青春」(=若気の至り)が妥当なのだろう、やはり。いかにも体育会系の神原らしい話だ。

羽川視点の羽川語りだった『猫物語(白)』の時もそうだったが、神原視点から今回も暦はすごくカッコ良く描かれている。「阿良々木先輩」といった名前だけは序盤から何度となく登場していながら、ただ匂わす程度であり、肝心の本人は終盤まで登場することなく、しかも出番もわずかではあるけれど。それでもなんともタイミングの良い登場と暦らしい的を射た受け答えがとても心地よいものになっている。
神原視点の暦は、暦自身が言うように「過大評価」なのかもしれず、事実ダメなところはダメダメだし、決して褒められない変態性も持ち合わせた、謂わば人格破綻気味な破滅型の人間なのだけど、私としても暦に惚れているから彼の言葉はしっくりと胸に沁み入ってくるし、暦の総合評価には素直に同意したいところ。彼の懐に入れたらどれだけ幸せかって思うほどにイイ男だと思うしね、暦は。(ちなみに自動車の免許を取得し、愛車は親に買ってもらった黄色のニュービートル。だが大学生かというとそこは未だ不確定。何をしているのかも不明。ひたぎも暦の彼女として健在だが詳細は不明。羽川は宣言どおり海外でNGOに参加してハードな生活を送っている模様)。
また神原視点からは別の印象も受けることになった。羽川の時はあまり感じなかったが、神原の話(内面)がここまでシリアスタッチに描かれるとは意外であり、暦視点による暦とじゃれ合う神原とは随分と違った印象を持つことになった。正直言うと、案外まともだったのだな、とね。
・・とにかく、人間というものは、見たいものだけを見ることができ、聞きたいことだけを聞くことができ、都合良く解釈のできる便利な生き物だということだ。けれどそこに良し悪しはなく、正解も不正解もなく、全部が正しくて全部が間違っているところが厄介である、というところだけ決して忘れてはならないということだ。

最後にもう一つ。このシリーズは毎度「今回のオチ」で締めくくられ、大抵過去は過去として次なるステップ、一歩踏み出したところで気持ち良く終わっているように思う。だけど今回は一連の出来事を振り返った神原の回想として始まっていることから、全部読み終わったらもう一度「001」を読み返すと良い様に思う。最初は「何のことやら・・」と読み流していた文章だったものが、一歩踏み出す一歩手前の気持ちとして感慨深く受け取れるように変わっていると思うから。

次巻は『囮物語(なでこメデューサ)』、6月発売予定とのこと。『花物語』の本文中で暦は「大丈夫。次回作では何食わぬ顔して高三に戻るから」と言っていた。よって今度こそ9月の続きか、その後卒業直前に起こった事件のどちらかが関係した話になると思われる。扇くんも登場するかもしれない。・・・が、これまでの例のように「作者のみぞ知る」といったところだろう。もはやこれ以上余計な推測は書くまい。

そうそう、忘れるところだったがアニメ化が発表されていた『傷物語』は映画化だそうで。2012年公開予定。これは楽しみ!

追記:『囮物語(なでこメデューサ)』は6月30日発売とのこと。

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コメント

レビューいつも楽しんでみせてもらってます^^

忍野扇に関してですが、前巻のまよいキョンシーで女生徒として出てるし、駿河が可愛いと発言してるから女の子という設定が書かれてるのかと^^;まぁ何かあったのだろうというのに違いはないのですがww

今回は私も沼地の物語ではあると思っていましたが、今回の出来事を表すのに「因果応報」というのはいいえて妙だなぁと思います。正義や価値観なんてものはたいむさんが書かれているように、立場によって見方は異なることが今回のテーマだと同じく思うのですが、そのための一つの事例として貝木が出てきたと思うのですが、そこら辺はどう考えられてるのかぜひ聞いてみたいなと思ってコメさせてもらいました^^

私も自分なりにレビューをまとめてみたのですがここまで上手くまとまらなかったので文才が羨ましい限りです^^

映画に関しては私もすごく楽しみです♪

投稿: 瞬光 | 2011/04/11 20:03

■瞬光さん、こんにちはsun
扇ちゃん、既に登場済みでしたか。すっかり忘却の彼方・・・。
うわっ、冒頭も冒頭に登場してるじゃん!!
これは加筆しとかないとですね(^^;;;
ご指摘感謝♪

ご質問?の貝木についてですが、私も同意見です。
貝木はやはり貝木で、人間的には何一つ変わっておらず、詐欺師の肩書だってそのままなのだけど、神原に対する言動に受ける印象はこれまでとはガラリと異なってますね。これもどこに視点を置くかで相対的に変わってしまうモノの一例と思います。
暦やひたぎの「宿敵」を神原にとっては「親切なおじさん」として正反対に見せるなんてなかなかニクイ演出ですよね。とはいえ、明らかに神原だけがスペシャルなのも分かるから、私の貝木に対する評価に変化はないといったところでしょう。
案外これは言葉にしないだけで、割と一般的というか、暗黙の了解の事じゃないかなって思います。
現実でも時々「あの人、あれでよく結婚できたよね(^^;」とか思うし(笑)
そして「”蓼食う虫も好きずき”だな」ってそこで思考を止めてお終い。誰が誰を好きで、あるいは嫌いでも他人がとやかく言う問題じゃなく、余計なお世話ってね。
私は”あの人”とはそりが合わないし嫌いだけど、”あの人”を好きな人もいるってアチコチで日常的に目の当たりにしているわけでしょう?
ということで、貝木のトコは分かりやすい一例にはなっているけれど、当たり前のように受け止めてました。

瞬光さんのレヴューはどちらでまとめられたのかな?以前に残してくれたブログでは記事が見当たらないようですが・・・(私の検索が悪いのかな?)

最近は何でも「〆は映画で!」みたいな傾向なのが少しいただけないけれど、「傷」は2時間クラスでじっくり作り込んで欲しい内容で、1時間のスペシャルでも足りないなって思っていたから歓迎です!
前日譚だから初めて見るのもありだし、特別おさらいの必要がないもの良いですよね(笑)

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/11 23:52

貝木に関してのコメありです^^
同意見ということに加えていろいろ補足してもらえたおかげで理解が深まりましたm(__)m

私はゲームと競馬の記事があまりに多いので埋もれちゃってましたね^^;;
趣味のカテゴリに入ってました(-_-;)
拙い記事ですのでご容赦を(´;ω;`)

傷物語はアニメ化物語の冒頭に持って来てて、一番上手い描写を使ってましたから中途半端にはできないだろうという判断でしょうね^^;
ゲームでも近頃ファンディスクに後日談を載せる商法が流行ってて非常に困っているのですが、「〆は映画」という似た傾向があるのは初耳です^^;;

まぁでも今回はありがたい限りで^^シャフトが作ればいいけど発表されてないから怖い・・・シャフトだと映画になるのが遅そうだけど(仕事のクオリティの高さと遅さに定評のあるシャフトなので)
個人的にはエヴァと新海誠の映画などと並ぶ位楽しみなのでたいむさんのレビューが上がる日を楽しみにしてます♪~

投稿: 瞬光 | 2011/04/12 13:44

■瞬光さん、こんにちはsun
どういたしまして。
・・ってなんだか上からですね~(^^;

「傷」が「化」の冒頭に、一般市民の動体視力では決して内容を見極めることなど到底不可能と思われる映像の存在はファンなら周知のことでしょうが、「傷」を読んだ視聴者は「うまい!」って拍手もののダイジェストですよね、あれは。
発表はなくとも新房監督でシャフト以外はあり得ないと私は思っていて疑ってもいませんが、発表されるまでは心配しちゃいますね。そろそろ次の情報が欲しいところですね。

〆は映画・・・なんてのは、最近では「ガンダム00」や「マクロスF」はじめ、「戦国BASARA」に「ハガレン」、「涼宮ハルヒ」なんかも勘定に入ってます。
DVDの特典収録にも随分と踊らされましたが、映画化にも困ったものです。
もともと映画好きで年末に集計しているけれど、年々アニメの比率が上がっているんですよ。しかも上乗せで。

新海監督の作品はジブリなんかよりよっぽど楽しみですが、地元では公開の影すらなくてね。公開にあわせて上京して観ようかなとは思ってますが・・・。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/12 19:24

出張コメありがとうございました^^

〆は映画はそんなにですかぁ。。。言われてみればそうですねぇ。。。年末に集計してるモノは機会があれば載せてもらえると嬉しいです><

新海さんを知っているとはさすがですね^^(周りの人は知らない人が多くって^^;)私も他県まで足を伸ばそうと考えてます^^;

毎回長くおじゃましました(-_-;)

投稿: 瞬光 | 2011/04/12 20:56

■瞬光さん、こんにちはsun
年末の集計と言ってもお気に入りを選んでいるだけですから。ちなみに毎年年末にアップしてます。

新海監督作品はみんな好きです。
特に「秒速5センチ・・」は音楽とのマッチングが最高!
新作が楽しみです!

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/14 23:24

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