「英国王のスピーチ」みた。
アカデミー作品賞を受賞する前から気になっていた作品。2月の公開時に東京で見損ねてしまったため地元での公開を待ち望んでいた。
いやぁ~これは好き。期待どおり笑わせてくれて、ホロリとさせられて、清々しい心地にさせてくれた。
英国の王室を扱った作品って、内容の白黒に関係なく秀作が多いのは何でかな~。それ以前に、”王室”自体が様々なドラマを持っているところがまずスゴイんだけど。
物語は、幼少時のイジメや厳しいしつけといったトラウマが切っ掛けで吃音になってしまったバーディことヨーク公が、言語聴覚士のライオネル・ローグの訓練を受けて失われていた自信を少しずつ取り戻していくもので、英国王”ジョージ6世”として戴冠式のスピーチに挑み、ナチスドイツとの開戦時には全国民に宛てたスピーチを見事に成功させるというところまでが描かれている。
もちろんそう簡単な話ではない。まず”ジョージ6世”がライオネルの訓練をまともに受けるようになるまでには様々な紆余曲折があった。そもそも王族が一介の平民に訓練を受けるなど前代未聞の事だろうし、国王の次男であるヨーク公のプライドも厄介。また”次男”という安全地帯はヨーク公のモチベーションに繋がらないところでもあり、ライオネルとバーディが友好信頼関係を築くまでには途中頓挫を繰り返しながらの長い時間が必要だった。
ところが”ジョージ5世”の長男が放蕩息子だったことがヨーク公の運命を急激に変えることになる。兄の退位から「必要に迫られて」ではあるけれど、本気にならざるを得ない状況に陥る”ジョージ6世”。その頃は口論がもとでライオネルの訓練を中止していた”ジョージ6世”だったが、今頼れる言語聴覚士はライオネルだけしかいないと痛感、和解して再び訓練を開始する。
そこでようやくクライマックスの感動的なスピーチ披露か、と思うところだったがライオネル側の問題として最後の壁が立ちはだかることになる。けれど、そこは”国王”という最高の権力者の胸先三寸でどうにでもなるもので、おそらくこれが”ジョージ6世”最大の英断だったんじゃないかな?
ベートーヴェン交響曲第7番の第2楽章をバックに粛々と放送されるラジオのスピーチは感涙もの。出だしはタドタドしく、時折つっかえそうになりながら、目の前で身振り手振りフォローをするライオネルに促されてなんとか堪える。そして徐々に調子を上げてやがて国王たる威厳すら感じられるスピーチになって行く。もうね「頑張れ、その調子、もう少しだ!」と嬉しくなりつつハラハラしつつ、こぼれる涙を拭きふき長いスピーチを聞くこととなった。
感謝の意を口にしながら”ジョージ6世”は最後まで「ライオネル」と呼ばなかったのは少し残念だったけれど、妃陛下は「ライオネル」と初めて呼び、EDの後日談では「2人はずっと良き友だった」とあったので、いずれはおそらくと思うところではある。
随所に英国ジョークがちりばめられており何度となくクスリと笑わせてもらったし、名優陣には文句なし。とても楽しいひと時だった。TV放送など機会がある毎に見たいと思える作品のひとつとなった。
総評:★★★★★ 好き度:★★★★★ オススメ度:★★★★★
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コメント
単にスピーチを成功させたいだけではなく、その裏にほんのりヒトラーへの対抗意識を持っているところがいいですよね。
そこにヨーク公の男としてのプライドを感じましたよ。
投稿: にゃむばなな | 2011/04/25 21:52
こんにちは♪
遅れての上映だったんですね。
お堅いお話かと思ってましたけど結構クスッとする所が多かったですよね。
ほんと名優陣には文句なしで見応えありました。
投稿: yukarin | 2011/04/26 12:47
■にゃむばななさん、こんにちは
ウジウジしていたヨーク公が本音をさらけだすところはグッと来ました。
癇癪モチも含めて王族らしい立派な方でしたね。
英国王室って面白いですねー
投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/26 20:23
■yukarinさん、こんにちは
そうなんです、やっとですよ~~~。
で、今は「ブラック・スワン」が楽しみで仕方がありませんw
真面目な話かと思ったら実は「喜劇」なんですよね、コレw
期待通りとっても素敵な作品でした(^^)
投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/26 20:25
アカデミー賞作品賞も当然の
秀作でしたね。
私はちょっと寝ちゃいましたけど
レンタル開始時にはじっくり
見ようと思います。
投稿: シムウナ | 2011/04/29 17:03
■シムウナさん、こんにちは
寝ちゃいましたか(^^;
でも、途中いつまでたっても堂々巡りな感じはありましたしね。
私もDVD化になったらもう一回みたいですw
投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/29 19:26
アカデミー賞に関係なく見たかった気がします。
ちょうど観た日が、アカデミーの発表の次の日だったので、かなりの混みようでした。
作品的には好きなんですが、総なめってのが引っ掛かった気もします。
兄の華やかな経歴の陰に弟の苦悩。
コリンうまいですよね。実際に弟のほうは兄に比べて早くに亡くなってるし、ほんとうに大変なストレスだったんでしょうね。。。あんな風に育てられたことも。
興味深い作品でした。
投稿: mariyon | 2011/04/29 22:56
■mariyonさん、こんにちは
アカデミー賞を受賞しちゃうと、それだけで注目の的になっちゃうから、受賞前とかにみたいですよね。そういう意味では「ソーシャル・・」とか時期的に良かった気がします。
国王って国民の上にある存在でも最大の奴隷といえはそうなんですよね。選択の自由とかほとんどないし。
妃殿下も、吃音だから王室でも・・・なんて本音を伝えるところが良かったです。
日本も色々ありますねー。僭越ながら不憫とすら思ってしまいますし。
昨日はロイヤルウエディングをずっと見てました。
英国王室の恋多き体質は遺伝かしらね?でもこれでいくと隔世遺伝っぽくてウイリアム王子は大丈夫かしら?(爆)
投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/30 17:49
たいむさん、こんにちは。
王室自体にそれほど興味はなかったのですけど、この作品は良かった。「いやー映画ってほんっとに素晴らしいですね」なんて、水野春夫さん的なコメントをしてしまいそうです。
でも最近こういった映画らしい映画って少なかった気がします(私が知らないだけかも…汗)。シンプルな内容なのに心に訴えかけてくるのは、シンプル・イズ・ベストの模範と言えるのかもね。
投稿: GAKU | 2011/05/01 19:18
■GAKUさん、こんにちは
うん、良かった!って久しぶりに素直に言える映画だと私も思いますよ。
実際、昨年の暮れ辺りからコレって作品なかったって思ってますし、気のせいじゃないと思います。
アカデミー賞も地味だったし(笑)
でも、「ブラック・スワン」は見応えありそうで楽しみにしています!
投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/01 19:34
たいむさんこんにちは♪
この映画名優たちの演技に満足って感じでした。
英国王室ってあんまり知らなかったけど、
いろんな方がいたんだな~ってあらためて思いましたわ。
「喜劇」がまたよかったです。
投稿: Nakaji | 2011/05/02 16:32
■Nakajiさん、こんにちは
そうそう、喜劇なんですよね、それも品の良い。
英国王室ってドラマティックでカッコイイです。
歴史も波乱万丈だしw
ロイヤルウェディングも素敵でしたw
投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/03 08:49
連続書き込み、失礼します。
私も最後“ライオネル”と呼ばなかったのは残念です。
エリザベスが呼んでいたのは印象的でした。
淡々としていながらも、緩急が意外とついていたので、
面白かったです。
投稿: BROOK | 2011/05/10 20:03
■BROOKさん、こんにちは
読んでほしかったですよね。
でも、あの瞬間は公私をまぜこぜにする時ではないって感じもしたので、私的な時にはきっと、と思うことにしました。
判り易くも、起伏のある展開がとても良かったですねw
投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/10 20:33