« 文庫版『図書館内乱』 有川 浩 〔著〕 | トップページ | 「まほろ駅前多田便利軒」みた。 »

2011/04/25

「英国王のスピーチ」みた。

Eikokuou

アカデミー作品賞を受賞する前から気になっていた作品。2月の公開時に東京で見損ねてしまったため地元での公開を待ち望んでいた。
いやぁ~これは好き。期待どおり笑わせてくれて、ホロリとさせられて、清々しい心地にさせてくれた。
英国の王室を扱った作品って、内容の白黒に関係なく秀作が多いのは何でかな~。それ以前に、”王室”自体が様々なドラマを持っているところがまずスゴイんだけど。

物語は、幼少時のイジメや厳しいしつけといったトラウマが切っ掛けで吃音になってしまったバーディことヨーク公が、言語聴覚士のライオネル・ローグの訓練を受けて失われていた自信を少しずつ取り戻していくもので、英国王”ジョージ6世”として戴冠式のスピーチに挑み、ナチスドイツとの開戦時には全国民に宛てたスピーチを見事に成功させるというところまでが描かれている。
もちろんそう簡単な話ではない。まず”ジョージ6世”がライオネルの訓練をまともに受けるようになるまでには様々な紆余曲折があった。そもそも王族が一介の平民に訓練を受けるなど前代未聞の事だろうし、国王の次男であるヨーク公のプライドも厄介。また”次男”という安全地帯はヨーク公のモチベーションに繋がらないところでもあり、ライオネルとバーディが友好信頼関係を築くまでには途中頓挫を繰り返しながらの長い時間が必要だった。
ところが”ジョージ5世”の長男が放蕩息子だったことがヨーク公の運命を急激に変えることになる。兄の退位から「必要に迫られて」ではあるけれど、本気にならざるを得ない状況に陥る”ジョージ6世”。その頃は口論がもとでライオネルの訓練を中止していた”ジョージ6世”だったが、今頼れる言語聴覚士はライオネルだけしかいないと痛感、和解して再び訓練を開始する。

そこでようやくクライマックスの感動的なスピーチ披露か、と思うところだったがライオネル側の問題として最後の壁が立ちはだかることになる。けれど、そこは”国王”という最高の権力者の胸先三寸でどうにでもなるもので、おそらくこれが”ジョージ6世”最大の英断だったんじゃないかな?
ベートーヴェン交響曲第7番の第2楽章をバックに粛々と放送されるラジオのスピーチは感涙もの。出だしはタドタドしく、時折つっかえそうになりながら、目の前で身振り手振りフォローをするライオネルに促されてなんとか堪える。そして徐々に調子を上げてやがて国王たる威厳すら感じられるスピーチになって行く。もうね「頑張れ、その調子、もう少しだ!」と嬉しくなりつつハラハラしつつ、こぼれる涙を拭きふき長いスピーチを聞くこととなった。

感謝の意を口にしながら”ジョージ6世”は最後まで「ライオネル」と呼ばなかったのは少し残念だったけれど、妃陛下は「ライオネル」と初めて呼び、EDの後日談では「2人はずっと良き友だった」とあったので、いずれはおそらくと思うところではある。

随所に英国ジョークがちりばめられており何度となくクスリと笑わせてもらったし、名優陣には文句なし。とても楽しいひと時だった。TV放送など機会がある毎に見たいと思える作品のひとつとなった。

総評:★★★★★   好き度:★★★★★   オススメ度:★★★★★

| |

« 文庫版『図書館内乱』 有川 浩 〔著〕 | トップページ | 「まほろ駅前多田便利軒」みた。 »

コメント

単にスピーチを成功させたいだけではなく、その裏にほんのりヒトラーへの対抗意識を持っているところがいいですよね。
そこにヨーク公の男としてのプライドを感じましたよ。

投稿: にゃむばなな | 2011/04/25 21:52

こんにちは♪
遅れての上映だったんですね。
お堅いお話かと思ってましたけど結構クスッとする所が多かったですよね。
ほんと名優陣には文句なしで見応えありました。

投稿: yukarin | 2011/04/26 12:47

■にゃむばななさん、こんにちは
ウジウジしていたヨーク公が本音をさらけだすところはグッと来ました。
癇癪モチも含めて王族らしい立派な方でしたね。
英国王室って面白いですねー

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/26 20:23

■yukarinさん、こんにちは
そうなんです、やっとですよ~~~。
で、今は「ブラック・スワン」が楽しみで仕方がありませんw

真面目な話かと思ったら実は「喜劇」なんですよね、コレw
期待通りとっても素敵な作品でした(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/26 20:25

アカデミー賞作品賞も当然の
秀作でしたね。
私はちょっと寝ちゃいましたけど
レンタル開始時にはじっくり
見ようと思います。

投稿: シムウナ | 2011/04/29 17:03

■シムウナさん、こんにちは
寝ちゃいましたか(^^;
でも、途中いつまでたっても堂々巡りな感じはありましたしね。

私もDVD化になったらもう一回みたいですw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/29 19:26

アカデミー賞に関係なく見たかった気がします。
ちょうど観た日が、アカデミーの発表の次の日だったので、かなりの混みようでした。
作品的には好きなんですが、総なめってのが引っ掛かった気もします。

兄の華やかな経歴の陰に弟の苦悩。
コリンうまいですよね。実際に弟のほうは兄に比べて早くに亡くなってるし、ほんとうに大変なストレスだったんでしょうね。。。あんな風に育てられたことも。

興味深い作品でした。

投稿: mariyon | 2011/04/29 22:56

■mariyonさん、こんにちは
アカデミー賞を受賞しちゃうと、それだけで注目の的になっちゃうから、受賞前とかにみたいですよね。そういう意味では「ソーシャル・・」とか時期的に良かった気がします。

国王って国民の上にある存在でも最大の奴隷といえはそうなんですよね。選択の自由とかほとんどないし。
妃殿下も、吃音だから王室でも・・・なんて本音を伝えるところが良かったです。
日本も色々ありますねー。僭越ながら不憫とすら思ってしまいますし。

昨日はロイヤルウエディングをずっと見てました。
英国王室の恋多き体質は遺伝かしらね?でもこれでいくと隔世遺伝っぽくてウイリアム王子は大丈夫かしら?(爆)

投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/30 17:49

たいむさん、こんにちは。
王室自体にそれほど興味はなかったのですけど、この作品は良かった。「いやー映画ってほんっとに素晴らしいですね」なんて、水野春夫さん的なコメントをしてしまいそうです。

でも最近こういった映画らしい映画って少なかった気がします(私が知らないだけかも…汗)。シンプルな内容なのに心に訴えかけてくるのは、シンプル・イズ・ベストの模範と言えるのかもね。

投稿: GAKU | 2011/05/01 19:18

■GAKUさん、こんにちは
うん、良かった!って久しぶりに素直に言える映画だと私も思いますよ。
実際、昨年の暮れ辺りからコレって作品なかったって思ってますし、気のせいじゃないと思います。
アカデミー賞も地味だったし(笑)

でも、「ブラック・スワン」は見応えありそうで楽しみにしています!

投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/01 19:34

たいむさんこんにちは♪

この映画名優たちの演技に満足って感じでした。
英国王室ってあんまり知らなかったけど、
いろんな方がいたんだな~ってあらためて思いましたわ。
「喜劇」がまたよかったです。

投稿: Nakaji | 2011/05/02 16:32

■Nakajiさん、こんにちは
そうそう、喜劇なんですよね、それも品の良い。
英国王室ってドラマティックでカッコイイです。
歴史も波乱万丈だしw

ロイヤルウェディングも素敵でしたw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/03 08:49

連続書き込み、失礼します。

私も最後“ライオネル”と呼ばなかったのは残念です。
エリザベスが呼んでいたのは印象的でした。

淡々としていながらも、緩急が意外とついていたので、
面白かったです。

投稿: BROOK | 2011/05/10 20:03

■BROOKさん、こんにちは
読んでほしかったですよね。
でも、あの瞬間は公私をまぜこぜにする時ではないって感じもしたので、私的な時にはきっと、と思うことにしました。

判り易くも、起伏のある展開がとても良かったですねw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/05/10 20:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「英国王のスピーチ」みた。:

» 英国王のスピーチ [LOVE Cinemas 調布]
後に「善良王」と呼ばれた英国王ジョージ6世が、ヨーク公爵時代に出会った言語聴覚士ライオネル・ローグの助けで自身の吃音を克服する姿を描いた伝記ドラマだ。主演は『シングルマン』のコリン・ファース。共演にジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーターと言った実力派が揃う。監督はトム・フーパー。第64回英国アカデミー賞では作品賞初め7冠を獲得した。... [続きを読む]

受信: 2011/04/25 00:52

» 英国王のスピーチ [Akira's VOICE]
1シリングから始まる家族と言葉の物語。    [続きを読む]

受信: 2011/04/25 11:02

» 『英国王のスピーチ』 [こねたみっくす]
英国史上最も内気で、繊細で、かんしゃく持ちなうえに、自分に自信がない内弁慶な国王の、男としてのプライドを賭けた静かなる戦い。それがジョージ6世の歴史に残るあの名演説。 ... [続きを読む]

受信: 2011/04/25 21:52

» 英国王のスピーチ [だらだら無気力ブログ]
「ブリジット・ジョーンズの日記」「シングルマン」のコリン・ファースが、 エリザベス女王の父にして国民から慕われたイギリス国王ジョージ6世を 演じて絶賛された感動の伝記ドラマ。 吃音症に悩みながらも妻エリザベスの愛とスピーチ・セラピストのサポート で歴史的…... [続きを読む]

受信: 2011/04/25 22:32

» 英国王のスピーチ [映画鑑賞★日記・・・]
【THE KING'S SPEECH】 2011/02/26公開 イギリス/オーストラリア 118分監督:トム・フーパー出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、テ ... [続きを読む]

受信: 2011/04/26 12:43

» 「英国王のスピーチ」 友が聞いている [はらやんの映画徒然草]
本作は現在のエリザベス女王の父親にあたるジョージ6世の物語。 ジョージ6世は幼い [続きを読む]

受信: 2011/04/27 22:26

» 『英国王のスピーチ』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「英国王のスピーチ」□監督 トム・フーパー□脚本 デヴィッド・サイドラー□キャスト コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、デレク・ジャコビ、ジェニファー・イーリ...... [続きを読む]

受信: 2011/04/28 19:23

» No.243 英国王のスピーチ [気ままな映画生活]
【ストーリー】 現イギリス女王エリザベス2世の父ジョージ6世の伝記をコリン・ファース主演で映画化した歴史ドラマ。きつ音障害を抱えた内気なジョージ6世(ファース)が、言語療 ... [続きを読む]

受信: 2011/04/29 15:18

» 映画『英国王のスピーチ』を観て〜アカデミー賞受賞作品 [kintyres Diary〜Goo Version]
11-18.英国王のスピーチ■原題:The Kings Speech■製作年・国:2010年、イギリス・オーストラリア■上映時間:118分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:3月3日、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)■料金:1,600円スタッフ・キャスト(役名)□監督:トム・フーパー□...... [続きを読む]

受信: 2011/04/29 17:41

» アカデミー賞効果で激混み「英国王のスピーチ」 [茅kaya日記]
nbsp;「王冠をかけた愛」と言われたエドワード8世の話は有名だけどその周りの人間がどんだけ苦労したかって、特に、弟のジョージ6世は過酷な運命の転換。吃音のために、人前で話すことが苦痛な人間にとっては世紀の恋愛も別の側面から見たら迷惑千万。それにしても、アカデミー賞の威力で劇場はえらく混んでいた。たしかに、コリン・ファースの演技はすごいけど作品賞をはじめ総なめって・・・?うぅ〜〜ん、、アカデミーらしい作品って気はした。... [続きを読む]

受信: 2011/04/29 22:56

» 自分も救われたような気持ちになる ─ 英国王のスピーチ ─ [Prototypeシネマレビュー]
─ 英国王のスピーチ ─ アカデミー賞の作品賞を含む4冠にも輝いたこの作品『英国王のスピーチ』。ただ、正直なところ鑑賞予定には入っていませんでした。名前は知っていたものの ... [続きを読む]

受信: 2011/05/01 18:49

» 映画「英国王のスピーチ」 [FREE TIME]
映画「英国王のスピーチ」を鑑賞。 [続きを読む]

受信: 2011/05/01 21:09

» 英国王のスピーチ [C'est joli〜ここちいい毎日を〜]
英国王のスピーチ'10:イギリス+オーストラリア◆監督: トム・フーパー「第一容疑者 姿なき犯人」(TV) ◆出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター ... [続きを読む]

受信: 2011/05/02 16:47

» 英国王のスピーチ [映画、言いたい放題!]
この映画、アカデミー賞を取ったということもあって 是非観たい映画でした。 折しも観に行った日は、ロイヤル・ウェディングの日でした。 そのせいか、公開から随分経っていましたが その割にはお客が多かったです。 隣のお客さんは、始まる前にロイヤル・ウェディングの話を... [続きを読む]

受信: 2011/05/05 18:00

» 映画用TB [日々“是”精進! ver.A]
ここは4月19日以前の映画レビューのトラックバック用の記事です。 映画レビュー以外のトラックバックは受け付けません。 「ザ・ファイター」 http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201103260003/ 「トゥルー・グリット」 http://plaza.rakuten.co.jp/b... [続きを読む]

受信: 2011/05/10 19:55

» 映画:英国王のスピーチ [よしなしごと]
 言わずと知れた、アカデミー賞4部門受賞、英国アカデミー賞7部門受賞などなど多くの賞にノミネート・受賞に輝いた英国王のスピーチを見てきました。 [続きを読む]

受信: 2011/05/14 01:15

« 文庫版『図書館内乱』 有川 浩 〔著〕 | トップページ | 「まほろ駅前多田便利軒」みた。 »