『xxxHOLiC 19巻』より。
OAD『xxxHOLiC・籠~あだゆめ』付き限定版の19巻を購入。”楽天ブックス”で予約注文していたにもかかわらず、地震以前のシステムトラブルにて、発売から1週間ほど遅れてようやく手元に届いた。
原作は2月に連載が終了したとは聞いていたが、この巻が最終巻になるとは知らなかったため、あまりに唐突な最終回といった印象。自分の時間を止めてしまった四月一日なので、いつかそんなことになるのでは?とは思っていたが、「ちょっとイキナリすぎませんか?」なぶっ飛び具合には驚くよりも唖然とした感じだった。
オリジナルアニメは「やっぱり」というお話。すごく懐かしい映像も含まれており、最後を意識したものと思う。どちらかといえば原作の最終回を見届けてから、アニメ”あだゆめ”を観るほうをオススメかな?(以下、ネタばれしているのでご注意を)
術者としてどんどん力を強くしている四月一日。なかでも”夢の中”がその力を一番発揮できるらしいが、夢の中での遙さんとの対話は、話の途中で打ち切りになる(目覚める)頻度が高くなっているとのこと。といってもそれは、遙さんが四月一日にヒントを与える必要がなくなってきている事の証左であって「裏返しの作用」といった感じなようだ。
今回は、重陽の節句から(奇数の重なる月日は陽の気が強すぎるため、特に1桁の奇数で最大の9が重なる9月9日は非常に不吉とされているとのこと)、それを払う行事をなんなくとり行う四月一日で、厄払いに四月一日の身近で大切な人たちの息災を願う”菊酒”が振る舞われることになる。
儀式には菊の花が必要だが(しかも四月一日の希望は朝露付き)、旧暦と現行の歴の差から季節外れであり、四月一日は雨童女に依頼したのだった。届けられた菊から微かに座敷童の気を感じ取る四月一日。雨童女によると菊は座敷童が四月一日のために摘んだのだそうだ。座敷童の一途さや健気さは切ないくらいに全然変わっていないのだね。(別の意味で同じくらい四月一日も頑なだといえそうだけど)。雨童女も相変わらず四月一日に対しては遠慮がないけれど、ズバリを発せられる言葉と内容の重さは、素直に受け止めたいところ。シリーズでは準レギュラーの2人だし、チラとでも最終巻に登場してくれて嬉しく思う。
”菊酒”は当然小羽ちゃん(&おばあちゃん)、ひまわりちゃんに届けられる。
ひまわりちゃんはすっかり電話だけの登場になってしまったけれど、「ああ、やっぱりひまわりちゃんだなぁ」と感じられる会話が懐かしかった。そして小羽ちゃんはすっかり大人に。四月一日が店で待ち続けている以上、もはや2人が共にあり続けることは不可能なのだけど、それだけに、四月一日をずっと見守り続けることになる”百目鬼”と歩むのは必然ってことなのだろうね。
それをほのめかすエピソードが次に収録されていた。百目鬼が大学の教授から預かったモノを四月一日が見極める、といったお話。おちゃめな付喪神(しかも酒豪)が登場し、四月一日の力を見せつけるとともに、ほのぼのとしたエピソードになっているのだが、それを切っ掛けに「少し先の未来」を察知する四月一日だった。(そしてそれはOADでハッキリ示されることになった)。
そして、最後の話となる。四月一日の夢に毎回”蝶”が現れるようになり、やがてその”蝶”が四月一日に大切なメッセージを届けることになる。あるいは「気付かせる」とでもいおうか。
HOLiCでは、いつも”対価”というものが意識づけられ、様々なモノの対価を見せながら最終的に「”命”に匹敵する対価は無い」と結論付けらていたように思う。それを踏まえると、侑子さんは既に生命としては無い存在であって、四月一日がどれだけ待ち続けようと、どれだけ力をつけようと、侑子さんの復活は決してあり得ない、ということになる。
当然侑子さんは解っており、さらに四月一日が願い続けることも想定して、然るべき時になってはじめて開かれる”夢”を残していた、ということだった。
同時に侑子さんは百目鬼にも”卵”を託していたのだが、「何も生まれない」という”卵”が何に使われるのかずっと謎になっていた。そしてその謎は夢の開示と共にようやく判明した。(四月一日は知らないままであり、知る必要がないものとして理解)。
個として、死に匹敵するものがあるとすれば、それはすべての記憶の喪失。百目鬼はいつでも四月一日から侑子さんの記憶を消し去ることが出来た、ということだったようだ。「その時が来たら躊躇うな」という侑子さんの言葉も頷ける。でも”百目鬼”はしなかった。何度も代替わりし続けながら既に100年もの間、百目鬼の子孫は四月一日を支え続けていた、というオチだ。
少なくとも最初の百目鬼は「出来なかった」のではないかと思うけれど、まさか最後には100年後になっているとはね。そして、四月一日から蝶の夢をみた話を聞いた百目鬼(のひ孫)も(四月一日の真意を確かめた上で)行使しない決断をしたようだ。
侑子さんは、夢には「既に自由であること」、卵には「再始動」を封じ込めていたことになる。そしてどちらも四月一日の前進を望んでいるものと思う。
夢では、鳥籠から飛び立つ鳥を指し示す侑子さんの幻影が現れており、つまり”鳥=四月一日”から、四月一日は既に籠(店)から出られるほど力を付けており、それに値する時が流れていたことを自覚することになった。(”華押”を鳥にしたエピはこのためでもあったのだね)。
侑子さんの復活は全否定された結末。それでも「待つ」という四月一日の選択は、侑子さんの想いが四月一日には届かなかったと取れる分だけ解釈が難しい。
まず自由の身でありながら、籠ることで現実逃避と自己満足に浸っているといえる。(しかも、百目鬼家を巻き込んで)。だけど、すべてを承知で尚「待つ」ということもまた”自由であること”、それを侵害する権利は誰にもない(百目鬼も自分の”自由”で四月一日に関わっている)ともいえ、そうした決断を間違っているとは言い切れないように思う。
私としては、最後には願いが叶ってもう一度侑子さんが現れると信じていたところもあったので、希望が打ち砕かれたところは残念に思ったけれど、「囚われていない」という事実だけでも随分と前向きな「待ち」に変わったように感じられた。「待つ」とは言いながらも、停滞の時期は乗り越えたんじゃないかなってね。だから「消す」必要がない、そういうことなんじゃないかって。
もともと含みの多い作品だし解釈は人それぞれと思うけれど、「待つ」「見守ること」が「必然」と考えるならば、あまり否定的には捉えたくないなぁと思う。これで本当に最終回なの?って感じではあるけれど、終わりと言うのならば尚のことってね。
「ツバサ」はフォローしていないし、アニメ化が切っ掛けで原作を読み始めた途中参加組だけど、色々と思わせてくれるマンガだった。(夜に爪切りするたびに後ろを振り返りたくなったりするしね)。過不足のない対価という考え方は勉強になったし。
集大成の「xxxHOLiC全書」も購入予定。じっくりおさらいしたいと思っている。
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コメント
私はツバサのアニメから入ったのですがやはりこの漫画は詰め込みすぎな気がします・・・
私がまだきちんと読み込めてないこともあるとは思いますがいろいろなアイディアを入れようとして飽和している気がします。。。(ジャンプのバクマンで話題になっているような状態←わかりにくいかな^^;)
考え方は私も面白いと思いますし、参考になりましたが、もう少し読者に優しい本であっても良かった気がします・・・まるで竜騎士(ひぐらしの作者)のように読者を突き放してる感じを最後のほうでうけました。(クランプの作者の特性上しょうがないが・・・)
今回の最終巻はちょっと掴みにくかったのですがこのレビューで少し理解が深まった気がします。興味深いレビューありです^^
投稿: 瞬光 | 2011/03/18 11:12
■瞬光さん、こんにちは
私も、正確に言えば劇場版「ツバサ・クロニクル」と「xxxHOLiC」の2本立てが最初かも。それでTVアニメは両方全部観ています。
哲学チックなのはこの漫画のウリだとは思うし、だからこそ深入りしたので、詰め込み過ぎでも私はあまり気にならないのだけど、こうなってしまったのは大川さんだからかなって思います。
(無駄に混乱させるのがお好きと言うかなんというか)。
「バクマン。」も12巻まで読んでいますが、1冊読むのにかなり時間がかかりますね。堂々巡りや繰り返しが多いと感じますし、疲れるのは確かかも。
どんな話題になっているかはわかりませんが、読む人が多彩な中から何に重点をおいても良いと思います。私の中では「成長物語」なので、ありです。
優しくない、というのは同意見です。ただ、これも「四月一日の成長物語」でしたし、「気付き」を待つ話だったから、ストレートな答えが無いのは意図的なものと思ってます。
だから本当は考察めいた感想は書きたくない類の話なんですよね。だけど始めちゃったからには最後までやらなくちゃって、この面倒くさいラストを自分なりに整理してみました。
基本的に四月一日って良い子だから、彼の思うようにさせてあげたいって贔屓目は入っていると思います。
最初は、時を止めたら心も止まってしまったかに思ったのだけど、少なくとも「籠」に入ってからはそうだったと思うのだけど、最後の最後にふっ切ったと私は感じました。
例えるならば、亡くなった家族のことを忘れる必要がないのと同じ状態になったといえば言えばわかるかな?
仮にそれを「待つ」と表現しただけ、とりあえず四月一日を信じようと決めました(^^)
投稿: たいむ(管理人) | 2011/03/18 22:31
丁寧なレスありです^^
とてもわかりやすかったですw
やはりこういう漫画はある程度は話をぼかしたりして、広がりをもたせないとキツい部分ってのがあるのかなと感じましたw
感想を書きたくないって気持ちはブログとかしている身としてはよくわかります^^;
今回は前にも書きましたが記事がやっぱりうまいなぁと感じたのでコメさせていただきました^^
これからも楽しみにしてます^^
投稿: 瞬光 | 2011/03/19 16:56
■瞬光さん、こんにちは

読み返してみると、(あんまり四月一日が気が付かないから)ズバり台詞にしちゃってるところも結構あるんですけどねー
解釈について、一般的には作者の意図が正解なのかもしれないけれど、それが正しく読者に伝わらなかったり、別の解釈が生まれるのは人間の感性の多彩さであり、結局のところ作者の表現力の問題。誰のどんな解釈も間違いではないと、少なくともケチだけは付けてはいけなものと思っています。
この感想がなにかしら参考になったとおっしゃっていただけるのは嬉しいことです。
いつもありがとね(^^)
投稿: たいむ(管理人) | 2011/03/20 09:04
西尾維新の最新作「花物語」が発売されましたが
HOLiCの推薦文を書いた人だけあってかなりHOLiCの影響を受けた作品に仕上がっているので是非ともオススメします^^
HOLiCや鋼の錬金術師などの代価や禁忌についての名作がここ数年がでてますが今回の西尾維新の最新作もなかなかの出来になっているのではないかと私は思います^^
投稿: 瞬光 | 2011/04/05 12:17
■瞬光さん、こんにちは
丁度いま読んでいるところです。
発売日には買っていたわけで、週末に本気を出していれば既に読み終わっているところでしたが、年度末の多忙から疲労蓄積で息切れ。ダラダラ読書パターンになってます。毎日1章程度しか読み進んでいないので、だいぶかかるんじゃないかな?(気分が乗れば一気もあるけど)。
しかし、巻を重ねるごとにどんどん回りくどくなっていくこのシリーズ。脇道、余談のほうが多くなっている気もするし、ちょっと疲れます。内容は好きなんですけどね。
神原となでこは他のキャラに比べて好きじゃないので、そのせいもあるかな?
投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/05 17:03
買ってましたか^^
まぁ制作期間がほぼ3ヶ月ですから推敲を重ねる時間がないのが現状なのが問題でしょうねw(自分から首絞めてるからなんとも言えないがww)
私は西尾維新は戯言シリーズから好きなのでそこまで苦に感じたことないので1日で読み終わったのですがたしかに駿河の話し方とか好きじゃないと今回はきついかも^^;
きついかとは思いますけど頑張ってください\(*⌒0⌒)
投稿: 瞬光 | 2011/04/05 18:19
■瞬光さん、こんにちは
本当にちびちびですけど読み進んでますよー。
内容自体がちびちびとしか進まないので、そのちびちびに合わせている感じ?
やっぱり「馬鹿だから」みたいなフレーズとかが頻繁に出てくるのは好きじゃない感じ。
でもちゃんと最後まで読みますよw
こちらもちびちびと思わせぶりに明かされているみんなの近況はすごく気になるし、空白の半年も気になるしね。
投稿: たいむ(管理人) | 2011/04/06 20:23
こんにちは
いきなりの投稿失礼します
たまたま今、肺炎にかかり時間ができたのでホリックを読み返していたのですが
どうしても気になることが…!
百目鬼の嫁は小羽ちゃんではないか?という疑惑が頭から離れません。
そう思って読み返してみると
小羽ちゃんと百目鬼が手を握っていたり
ひまわりちゃんに菊酒を届けにいくときは二人でいったり
何より弊串を作るといったとき
百目鬼の家族を守るものを作ると言った時の4月1日の顔は小羽ちゃんを思っているのではないか
っ思うぐらい穏やかなものでした
それについてどう思われますか?
初めての上に長文で申し訳ありません。
ご意見頂けたら幸いです
投稿: 椿 | 2013/09/19 15:24
■椿さん、こんにちは
初めまして。
お加減はいかがですか?
といっても、いまは具合が良いからコメントいただけたと思いますし、ということはお暇でもあると思うので、即レスです(^^)
ご質問の件ですが、連載が終わってだいぶ経ちますし、もう時効だと思うのでお答えしますが、(まぁ現在また連載されてますが・・・)
その通りですよ。小羽ちゃんは百目鬼の奥さんになってます。公式です。
上の本文中にも「(そしてそれはOADでハッキリ示されることになった)。」と書いてあるとおり、DVDでしっかり結婚式の予定まで報告されてます。
ただ、小羽ちゃんの真の思い人は四月一日なんですが、百目鬼はそれも承知だし、かといって小羽ちゃんが不実というわけでもない、円満結婚です。
記憶違いのないように今見直しましたが、ホロッと泣けるホリックらしい内容です。
何かの機会にご覧になれると良いですね。
それでは、お大事になさってくださいね。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/09/19 16:21
返信ありがとうございます。
大分前のブログでしたので返信は半ば諦めていたのですが
返信して頂いて嬉しいです!
やっぱり小羽ちゃんだったんですね!
自分は単行本しか読んでいないのでDVDの内容が無だったので
公式で決まっていたとは……。
調べが足りなかったですね。
お恥ずかしい限りです。
迷惑承知でお伺いしますが
最終話でマル モロ モコナが一回もでてこなかったのが気になります。
その事についてももしご存知でしたら教えてください。
追伸
身体に対する気遣いありがとうございます。
マイコプラズマ肺炎という咳が止まらない肺炎らしいです。
熱は下がったので後は咳が難問です
投稿: 椿 | 2013/09/19 23:30
■椿さん、こんにちは
どういたしまして、です。
大川脚本なので確かに公式なのですが、本編ではほのめかすだけで、特典DVDだけでの発表っていうのはいかがなものかと思いますよね。
値段を考えれば、だからこその特典なのかもしれませんが・・(^^;
マル モロ モコナについては、かなりバタバタな最終回だったので(しかも一気に百年後)入れる余地がなかったのではないでしょうか?
おそらく3人とも健在だと思うのですが、残念ながらこれは推測でしかありません。
ただ、店の結界でもあるマルモロは、四月一日が健在である限り消えたりしないんじゃないでしょうか?
また、白モコナは時間の旅人ですから、白モコナに何かない限りは対である黒モコナも大丈夫かと・・って希望的観測です(^^)
>咳が難問です
私も昨年喘息気味だったのでツラさは少しわかります。止まらない咳は体力を消耗しますよね。
でも決して治らないものではないので、十分に静養なさってください。
投稿: たいむ(管理人) | 2013/09/20 07:44