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2011/03/23

『おおきく振りかぶって(16)』を読んで。

Ohfuri16

県大会はベスト8までが出揃ったが、5回戦敗退の西浦高校はとりあえず秋大、そして最大の目標のために既に気持ちを切り替えて再スタートを切っていた。
・・なのだけど、「おおふり」は主役チームである西浦ナインだけではなく、ライバル校をも手厚くフォローする漫画のため、なんと16巻は半分が『武蔵野第一VS春日部市立』の試合経過だったりする。これはちょっとびっくりした。決勝戦でもない”ベスト8”という微妙な試合をフォローするのはひとえに作者の”武蔵野第一ナイン”(特に榛名かカグヤンか)に対する思い入れの強さからと想像するが、この調子だと西浦が甲子園出場するまでにあと10年、優勝するまでに更に10年かかりそうだなぁーとか思ったり。
成長過程をじっくり描くことに異論はないし、後々関係してくるだろうライバル校の裏打ちもあってしかりと思うけれど、「ほどほどに」ではあるかなぁ。
もちろん話はちゃんと進んではいるけれど、「番外編か?」という16巻かもしれない。
(以下、ネタばれしているのでご注意を)。

モモカンから練習の一環として、常に行動を共にすることを命令された阿部と三橋。阿部の怪我を切っ掛けに少しだけ歩み寄った2人だったけれどまだまだ2人に温度差は広く、途方に暮れる阿部、緊張いっぱいの三橋といったところ。
まずは医者同行ミッション(トレーニング)から開始。バッテリーと言えどもそもそも性格も趣味も合わない2人。阿部くんも三橋くんもそれぞれに互いの事を想像しながら頑張ってはいるけれど、三橋くんの思考回路はお子様すぎというか、興味のないモノに対する無関心さは筋金入りで、特に阿部くんの前途多難さには同情するところ。だた、逆を言えば三橋くんの興味の対象を引き合いすれば会話を続けることも困難ではなく、阿部くんの課題は、まず三橋くんを知ること(そして自分も知ってもらうこと)、そして三橋くんの興味の対象を増やして散漫な注意力を収束させていくことなんじゃないかと思う。三橋くんは元来努力家だし、本当なら「やればできる」どころのもんじゃないはず。そこで阿部くんの”物差し”も変えなくちゃなんだよね。過保護も大概にすべきだろうし、阿部くんはもっと三橋くんを信用しなくちゃダメだ。それが信頼に育っていくものだろうしね。田島・泉と阿部の差はその辺にあるんじゃないかな。(ちなみに阿部くんは順調に回復に向かっているとのこと)。

とりあえず、朝食当番に任命された阿部&三橋の奮闘が始まる。一緒に物を考えて行動をする”共同作業”ってところが大切なのだろうね。本当に「はじめの一歩」だなぁ。
それにしても、シガポの”栄養と成長(身体づくり)”の講義は凄さまじいのぉ。小難しいながら仕組みも理論も理解はできるが、あまりに詳細で本格的な内容には脳ミソ飽和状態。それを踏まえて「献立を立てろ」と言われても、私だって困ってしまう。
朝食だけとはいえ阿部&三橋はソレをしなくちゃならず、まず三橋くんはアテにならないとなれば、即座にモモカンに「ごめんなさい」してしまう阿部くんはエライと言うべきか。
そこで3日間だけ千代ちゃんを助っ人に迎え入れることになるのだが、ここで思わぬ事実が発覚。そっか、千代ちゃんは阿部くんラブだったのね。でも阿部くんは今のところ野球しか考えていないし、逆に千代ちゃんに片恋中なのが水谷くん。更に三橋くんも千代ちゃんに優しく接してもらってドキドキしちゃってたりするから、どうなっていくことやら。

恋バナついで...ではないけれど、高校男子らしいエロ話に花を咲かせる一幕が面白かった。三橋くんが田島くんから借りていたエロ雑誌を返した際の「どれが好み?」の会話から第三者(泉→水谷)の介入によって妄想話に拡大し、全体に波及していく流れに爆笑なのだけど、それぞれキャラのイメージにぴったりだなぁと感心するところでもあった。
・・と思ったら、アニメで担当した声優さんの実話ネタからの引用だと「おまけ」で暴露されていた。となると「修学旅行の自由時間に琵琶湖で水着水中エッチ」という泉ネタは、じゅんじゅん?
それはともかく、田島くんのモモカン敬愛っぷりは納得だし、巣山・阿部が淡泊(清純?潔癖?)なのも頷けるところ。「聞かれた・・・」と羞恥心でいっぱいになる花井くんもらしい反応。
面白いとはいえ、なぜエロ話に何ページも・・・という感じだったけれど、これは”チーム一丸”を印象づけるエピソードであり、更にモモカンはチーム全体の”モチベーション”を模索中ということらしく、無駄を無駄にしない作品だとつくづく思うところだったりする。

『武蔵野第一VS春日部市立』のスコアは面倒なので割愛。(8回表で1対3、春日部リードのまま8回裏が始まるところまでが収録)。注目の榛名はこれまでどおり4回からの登板予定だったが、加具山が3点取られたため、3回1死でリリーフ。80球制限もこの試合では解禁するつもりでいるようで、榛名の成長が良い感じに描かれている。(阿部視点の榛名とのギャップがより激しくなった感じ)。

朝メシ係の2人の2人っきりのトレーニングもそれなりに順調な模様。三橋観察から阿部くんなりになにか思うところも出てきたようだ。野球の話ならば会話も成立するようになっているようだけど、まだまだ会話の後にはまったく別の事を考えている2人。三橋くんから阿部くんに疑問を投げかけるのももう少し時間がかかりそう。とにかく「自信のなさ」が言葉として出させないところであり、打破して言葉にできれば阿部くんにも有意義な会話になっていくものと思えるのだけど、三橋くんの成長を待つしかないようだ。

丁寧に進んではいるけれど、スローペースなのも事実。
一朝一夕なのも困るが、多少のスピードアップはお願いしたい感じ。
17巻を期待する。

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コメント

アサ先生は本当に丁寧に描写されますね
相手校もじっくり

おりしも春の選抜が始まりました
球児の姿も、みなみ元気や希望を与えるものと思います
その姿をしっかりとらえてじっくり書いているおお振りは確かにあと何年かかるのだろう…と思います
でも、書いてくれる限りはお付き合いさせていただきたいですね
はしょらないでほしい、という気持ちもありますわ

今、本誌連載はお休み中ですけど、
小さく振りかぶってという1P漫画を連載していて、
巣山や西広などスポットをあてて裏設定を出しているのでこれも楽しみです

わたしは結構、他校もじっくり描いてほしい派ですね~

投稿: おくやぷ | 2011/03/24 07:10

■おくやぷさん、こんにちは
私としても、「おおふり」が「成長物語」である以上は都合良く進んで欲しくないので丁寧なのは良いけれど、さすがにこのペースは先が見えなさすぎかなと。
それに、ずっと連載していられるならば良いけれど、これまでにも途中打ち切りが決まり、バタバタな最終回になったり、途中休載から30年経っても完結しない作品など幾つもみてますので、そうなっては欲しくないと思っています。
他校の話題も良いけれど、しょせん高校生ですしどこも似たり寄ったり。風呂敷を広げ過ぎると収拾がつかなくなりがちだし、全体が散漫にもなりかねません。なので、私は「ほどほど」でお願いしたいところです。
でなければ、本編は本編として、他校の経過も折り込みながらも分けてしまうのもひとつの方法と思います。その上で他校は外伝や番外編としてじっくり焦点をあてるといった方法は出来ないものかと。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/03/24 17:18

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