DVD「ゴーン・ベイビー・ゴーン」みた。
主人公:パトリックは恋人のアンジーと一緒に私立探偵を行っており、ある日行方不明になった4歳の少女:アマンダの捜索をアマンダの伯母から依頼させる。パトリックを頼ってきたのには理由があった。それはアマンダは今のところただ居なくなっただけであり、身代金等の要求もないため警察は”誘拐”と認めておらず、絶対に誘拐だと信じている伯母が藁にもすがる思いでパトリックに依頼したのだった。
ちなみに何故”母親”ではなく伯母が依頼してくるのか、がこの話のポイントの一つ。アマンダには父親がおらず、母親は薬物中毒のだらしない女だった。そしてそれが後々にまで響いてくることになる。
やがてボストンの街の裏に精通するパトリックは、旧知の情報からアマンダに繋がりそうな手掛かりを得る。アマンダの誘拐には母親とその恋人の欲にまみれたデキ心が絡んでいた。そこで母親らが着服した大金を返すことで、なんとかアマンダを取り戻す見込みが立つのだが、残念ながら取引は最低最悪の結末を招くことになる。
そしてそのまますべてが終わったかに見えたが、また幼児を狙った別の誘拐事件が起こったことから、終わったはずの事件が新たなる展開を見せはじめる。
正直なところ、新展開は早々に看破してしまっていた私。だってどうにも胡散臭いんだもん。「空の棺桶」の場合では良くあるパターンだと思うし、正義感の強いほうがよりアヤシイってね。そして、最終的にすべてがパトリックに委ねられ、今度こそ事件は終わりを見せた。
・・・しかし、なんとも後味の良くない結末だこと。
パトリックの決断はたぶん、正しい。けれど現実はどう?分かりきっていた現実を直視し続けなければならないのは、おそらく正しくない事を見て見ぬふりをするより厳しいことだと彼は本当に解っていて、覚悟の上で決断したのだろうか、と思ってしまう。
パトリックは将来的な「もしも」を想定したとき”自分”の良心が痛まない選択をしていた。しかも先に提示された「もしも」を否定する形で。私はこれが一番よろしくないと感じた。結局彼は、自分を守っただけってことになるからね。その為の報いは必然と思う。
世間的にも法律的にも正しいばかりか、人としても良かれと思ってしたことのすべてが裏目に出てしまったような結果を招いたパトリック。そこに後悔はないかもしれない。でも、ラストの彼と彼女の無言・無表情は希望も失望の色もなく、空虚の現実の中で、ただ無くしてしまった可能性をそのまんま表現していたように見えた。
なるほど。途中でバレバレにならなければもっと良かっただろうにと思えるところが少し残念だけど、評判どおりでなかなか唸らせてくれる作品だった。
ベンは、この作品でも『ザ・タウン』でも、人間とその成長には「環境」という確定的であり不確定的でもあるモノが大きく作用していると語っており、「個」というものは決して「自由」にはならないもので、すべての人間がそういうものなのだと言っている気がした。
どうにもならないものをどうすべきか。人にはそんなモノを決断しなければならない時が必ずあるように思う。その時どうするか、なんだよね。選択肢に気付かなければただ流れに従うのみだし、現在に不都合が無ければそれも良し。その場合、それだけだよ、って意味なんだけど。
話が戻るが、そう思えば、彼女はまだ自分では何一つ選択していないのだから、まったく希望が無いわけではないって思える。なんであれ未来はある。それが救いドコロかな?
パトリック役のケイシー・アフレックは実の弟くんだったのだね。知らなかったなぁ。顔はベンより・・・と最初思ったのだけど、正面からみれば見るほどだんだん「そんなの関係ねぇ」ってか小島よしおに見えてきてしまって困ったが
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コメント
たいむさんこんばんわ♪
ベンの初監督作、たいむさんにとっても概ね好評でしたでしょうか?未公開にしては結構骨太なので、この作品の存在を知って(yukarinさん経由w)鑑賞し終えた時は『久々にアタリ掘り当てた!』って感じで喜んでた記憶があります^^;
未公開の基準こそ全然分かりませんが、やっぱりベンの初監督作だからか、一般では興行的に期待できないとか思われてたのかもしれませんね~?
でも『ザ・タウン』もそうでしたが、ベン作品のオチって何とも言えない余韻を残してあんまりすっきりしない終わり方になってますよねぇ。アマンダも果たしてあれが最良の選択だったのか疑問ですが、先の事までは確かに誰にも分からないので、境遇にめげないタフな女性になって欲しいな~と思うばかりです。
投稿: メビウス | 2011/02/20 21:00
■メビウスさん、こんにちは
そうですねー、ベンの作品は私に合うようです。
なんで未公開だったんでしょうね?
でもまぁ、何が当たるかなんて誰にも分からないというか、あちらとこちらでは文化が違うから口コミも鵜呑みにはできないし、選ぶ方も博打半分なんでしょうね。
微妙な余韻は残るけれど、希望も残されているのも確かな感じ。だからかな?嫌いじゃないのは。
この調子なら次回作も期待できそうですね(^^)
投稿: たいむ(管理人) | 2011/02/21 18:49