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2011/01/09

「傾物語」西尾維新/著

Katabuki_2

2010年暮れも押し迫った慌ただしい時期に設定された発売日から、通販系では「発売日が過ぎても手元に届かない」といった苦情が飛び交っていたこの『傾(かぶき)物語』。店頭在庫も品薄なようだし、シリーズ人気も「本物」といったところだろう。
さて、2nd.シーズン2作目となる『傾物語』は【まよいキョンシー】。『猫白』同様、真宵視点による”真宵語り”になるかと思いきや、再び”暦語り”に戻っていた。(その辺に言及する文章が作中にしっかり盛り込まれているが)。また当然真宵ちゃん中心の話だろうと想像するところだが、確かに彼女が”世界を傾ける中心”にあったけれど、実際は暦と忍の仕業に始まり、2人が真の絆を紡ぎながら未来永劫運命共同体だと確かめ合う、という物語だった。
”暦語り”であることから中盤までは以前と同じくほぼ雑談で出来ているけれど、本音が飛び出すあたりでしっかり泣かされることになるし、事の真相が明らかになるところからはノンストップに読み上げてしまいたくなる内容。意味不明になりつつあったタイトルも最後には巧くこじ付けてあるし、若干反則気味な今作だったけれどやっぱり面白かったと感想を述べたいと思う。

時系列で言えばほとんど『猫白』と同時期なのだが、正確に言えば夏休み明けの新学期前日深夜から当日朝までの話となってる。だたしそれは”ルートA”の世界での話であり、”ルートX”に通じるこの物語ではその限りではない、と言っておく。ちなみに『猫白』では2学期の始業式から数日間姿をくらましていた暦であるが、それとこれとはまた別の話らしく、そこは次回作『花物語(するがデビル)』で明らかになると思われる。

『傾物語』は先に言ったとおり、事の中心に”八九寺真宵”が存在しているのは間違いない。すでに”ルート○”なんていう文言から推察できるだろうが、暦のあらぬ想いと忍の持てる能力によって新たに?生み出されてしまった”もしもの世界”が舞台となる(個人的には)ややシリーズ逸脱気味の物語になっている。
真宵ちゃんが関係していて”もしも”と言えばもはや一つしかないワケだが、いくら暦でもタイムトリップによるタイムパラドックスを懸念する思考能力くらいは持ち合わせている。それでも・・となるのは、ひとえに忍の中途半端な知識(誤解釈)のせいであり、それを実現できる能力があってのことだ。一応忍も自分の記憶力のアヤシさを何度となく暦に申告しているのだけど、「問題なかろう」と聞けば暦としては、「交通事故で死亡する八九寺の運命までは変えられなくとも、せめて”地縛霊の迷子”となって自分と出逢うまで延々さ迷ったりしないよう、母親に会えなかった遺恨を残さないように成仏させてあげたい。その為ならば寂しくとも将来自分が八九寺と出逢えなくなったって構わない」、なんて暦らしい優しさを行使するに至らなかったハズだ。
結局「大丈夫」を真に受けた結果の”世界の滅亡”というあまりにベタな展開にあんぐりすることになってしまうが、そこから先のやっぱり暦は暦だという振る舞いであり、忍の暦に対する真摯な態度、更には最強にして最高のツーマンセルとなった暦と忍の最後まで諦めない姿勢には、「何故このシリーズにタイムトリップなんて異なるタイプのSF設定を持ち出す必要がある?」って”ヤッチマッタ感”を帳消しにするくらいの成長が感じられ、その為に必要で必然の2人だけの冒険旅行だったのだ、なんて思えてくるから大したものだと思う。無事に戻ってきた後、じゃれあうばかりの普段では決して聞けないだろう本来?の真宵ちゃんと暦が本心を語って締めくくられるところも良かったしね。
また、後付け物語にもかかわらず本編(1st.シーズン)での会話(台詞)に巧く絡ませた伏線となる発言や思考が随所に挿入されているし、都合良くも辻褄あわせがとても良くできていて、読後はすっかり好印象へ転じてしまっていた。つまりはすっかり作者の術中にハマっていたってことなのだろうね。お見事!
そして、期待していた”もしも”に影響された人物の登場や、『猫白』で最後の最後に登場した暦の如く「もはやそれは無いか?」と考えてしまう人物であり、やっぱりこの人以外にはいないだろうって救世主の登場には、「待ってました!」とばかりの拍手喝采となった。思わず嬉し泣きしてしまうくらいに持ち望んでいた人物の登場。変わらぬ神通力から出来る事とすべき事を示唆してくれる彼は本当に素敵だ。
このシリーズでの涙って切なくて泣いてしまうところもあるけれど、最終的にはほとんどが嬉し泣きなんだよね。だから読後感が清々しくって次もまた次もって読みたくなるし、「大好き」って思うのだろうなぁ。(元ネタが分かる世代ってところもツボなのだと思う)。

次巻は『花物語(するがデビル)』、3月発売予定とのこと。「あとがき」によるとこの物語のラストシーン直後から、直接休憩もなく続くとのことで、それは『猫白』ともちゃんとリンクしていることになる。果たして暦はどんなトラブルに巻き込まれるのか?どういう経緯で神原を呼び出すのか?学習塾の廃墟が跡形もなく消え去る理由は?今回の件で絆を深めた暦と忍が何ゆえ離れ離れになってしまうのか?どこまで次回で明かされるのか不明だが、いずれにせよ発売をとても待ち遠しく思う。

追記:3月29日発売!今回もネット書店より店頭のほうが断然早く手に入るんじゃないかな?

追記2:地震の影響から、3月31日発売に延期したようです。しかも、私の予想を大きく外し、暦は卒業、神原は高校3年ってところまで時間がぶっ飛んでいるとのこと。学習塾喪失の謎はいつ分かるのかなぁ。

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