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2011/01/22

「完全なる報復」みた。

Row_abiding_citizen

日本で言えば、伊坂光太郎作品によくある感じの被害者家族の復讐劇に近いだろうか。とはいっても、トリックも火力もバイオレンスも数倍パワーアップした作りで、何より結末に受ける印象や余韻は随分異なるのだけれど。
被害者家族の感情を無視した、検察側にのみ都合よい判断が招いた結果の凄惨な事件の数々。スリリングかつ重厚な展開は見応えがあった。(以下、内容に触れているのでご注意を)

自宅で強盗に襲われ、目の前で妻子を惨殺されたクライド。ほどなく逮捕された2人組の強盗だったが、狡猾な片割れは仲間を売って司法取引をし、罪の重さに対して破格の減刑となる。殺人者を野放しにする行為によるクライドの心中は察して余りあるもので、彼が逃げ道だらけの法制度と司法体制に絶望するのも無理のないことだった。
そして10年後、クライドの復讐は始まる。まず犯人の死刑囚を死刑執行日に毒殺、もう一人は生きたままバラバラに。だがクライドの復讐劇はそこに留まらず、当時の理不尽な取引に関与した司法関係者への粛清ともいえる報復が始まる。しかし、クライドは犯人達を惨殺したところで逮捕・収監されており、司法関係者の暗殺には実行犯が必要。手口すら判らず、まったく手掛かりを得られない関係者は恐怖に晒されることになる。

どこに、誰に、視点を置くかで見え方も感想も異なるだろう作品。どちらかと言えば、当初の被害者側であるジェラルド演じるクライドに感情移入するよう意図的にリードされており、ジェイミー演じる検事:ニックは(不誠実ではないが)実績のためなら手段を選ばないタイプであまり良くない印象を持ってしまう感じだ。よってついつい”復讐鬼”を応援し、華麗とも言える犯行の成功に拍手を送りたくなってしまうのだ。特に”釈放”についてのクライドの発言は人権と刑罰とが両立し得ない関係にあることを簡潔かつ的確に言い当てたもので、様々なケースがあるとはいえ現実的にも「一理ある」どころの話ではない。けれど(濫用は以ての外だが)司法取引の有用性を完全否定できない気もする。ただし線引きは検察側のモラルに委ねるもので、安易に頼った結果がコレならば廃止すべきとも思うけれど。

この手の作品を見るといつも「正しい正義」って何だろう?と考える。
この映画は正しいだろう幕引きをした。けれど私としてはせめて相討ち位のブラックなラストを期待していた。そちらを”ブラック”として考えているあたりで、やっぱり敗者の行いを”正しくはない”と考えているってことになるのだけど。
クライドは常に正気であり、自らの罪も他人の罪も正しく理解した確信犯だった。それでも犯行を続けた理由をニックが理解したと感じられる終わり方は嫌いじゃない。もちろんニックだけ身につまされたってダメなワケで、都合の良すぎの逆転劇と併せて「ちょっとキレイに纏め過ぎでは?」って感じだが。
社会派だけど後味はエンタメ風といった、見やすい作品と思う。クライドの計画はとにかくド肝を抜くものばかりだし、面白かった。(あまりのことに直視できず、音声のみになったところもあるけどsad

総評:★★★★  好き度:★★★★   オススメ度:★★★★

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コメント

微妙なラインで終えたかなと。
結局犯人や、犯人の弁護士ぐらいまでなら惨殺しても、観てる方も納得というか、共感すると思うんですが、同僚の女性検事を殺したあたりから「それはちとやりすぎじゃないの?」って空気が出てきますよね。
復讐に取り付かれたらもう止まらない、とうかもう彼は死に場所を探しているとしか思えなかったので、その想いのまま突き進むしかなかったのかもしれません。

でも個人的にラストシーンはちょっと嫌でした。

投稿: KLY | 2011/01/23 02:41

■KLYさん、こんにちはsun
やり過ぎ感はあったけれど、そこまでしても世の中は分からないだろうなって私自身が思っているので、私は気になりませんでしたよ。特にクライドが暴走しているとも思わなかったし。

だから、私は綺麗ごとかもしれませんがニックが「殺人犯とは取引しない」と誓った結論は嫌いじゃないです。「テロリストとは取引しない」と国が言っているのに、こちらがエスカレートしたら、いつかきっと同じことになりそうだから、希望も込めて。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/23 14:12

全体的に面白かったんですが、ラスト、爆弾使ってクライド殺しちゃったら、ここまで法に従ってやってきた意味ねえ!って思ってそこだけちょっと残念でした。

投稿: よっしー | 2011/01/23 23:41

あ、すいません。
ラストシーンてそっちのラストシーンではなくて、
演奏会でにこやかにしている方のことでした。^^;
何だかこの作品のラストとしては凄く違和感を感じたのです。

投稿: KLY | 2011/01/23 23:57

こんにちは♪
ボクは刑罰等に対して過激思想の持ち主なんで、
クライドにかなり肩入れして観てたんすけど、
中盤以降からどうも彼の行動が意義あるものか
らただの暴走に見えてきちゃったのが些か残念
でならんかったです。
マイナス点ばかりが目立つ作品だけどとてもオ
モシロい作品でした♪ (゚▽゚)v

>司法取引の有用性を完全否定できない気も

上の自分のコメントと矛盾するけど、コレおっ
しゃる通りですよね。
時としてこのシステムを用いることで大きな悪
を潰せることもあったりするしで、本当の正義
とは?法の矛盾と言うものを考えされます。

投稿: 風情♪ | 2011/01/24 10:41

■よっしーさん、こんにちはsun
>爆弾使ってクライド殺しちゃった
そうそう、コレって問題ないの?殺人と変らないのでは?って私も思いました。

せめてもの温情?なんかそれも違いますよね。
私も総合的には気に入っているのだけど、纏め方はもっと作りこんで欲しかったです。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/24 12:37

■KLYさん、こんにちはsun
わざわざ補足をありがとうございます。
演奏会ねー。確かにこの家族だけ被害を受けず、出世までする結果だったから、なんかアレですよね。
まぁ、私としては教訓の一つを実行したことを見せたかったのかと許容しましたが。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/24 12:41

■風情♪さん、こんにちはsun
クライドに肩入れしていても、やっぱり暴走に見えましたか~
直接は無関係な人も犠牲になってましたもんね。でも組織としての連帯責任を思えばクライドの報復対象であり、私は暴走ではないと解釈したんですよね。この場においての見ざる言わざる聞かざるもまた罪だと思いますし。

まぁ、もう少ししっかりとした説明があっても良かったかもしれません。罪を知らずに殺されてしまったのでは意味ないし、浮かばれませんよね。

>法の矛盾
そこなんですよね。だから矛盾を極力回避するために、過去の判例を参考にする裁判ばかりになってしまうのですよね。
割り切れないものを、どうバランスとるかってことなのだろうけれど、そこに更に定義を決めても同じだろうし、ケースバイケースである限りは、ずっとこんな感じかもしれませんね。

投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/24 12:53

中盤くらいまでは面白かったんですが後半はテンション下がりました^^;
思いっきりクライド側で観てたんであのラストはすっきりしません。
変な復讐もの観すぎですね私。

投稿: yukarin | 2011/01/25 23:16

■yukarinさん、こんにちはsun
>変な復讐もの観すぎですね私。
くくくhappy02。ちょっとソレわかる気がしますよ~~

どんどん手口が巧妙になっていたり、グルグルしちゃうような作品が一時溢れてましたもんね。

思いのほかアレレな方向へ向いてしまったのは勿体なかったけれど、私は嫌いじゃないですw

投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/26 21:14

最後の最後であのチェロが爆発するのかとも思ったのですが、
何ともなく・・・
無難に纏めた印象がありますね。

たしかに相討ちくらいのエンディングでも良かったようにも思いました。

投稿: BROOK | 2011/01/27 12:55

■BROOKさん、こんにちはsun
内容的にどーよって逆転劇にするくらいなら、真黒く終わったようが面白かったかもって思ってしまう感じでした。
でも、さすがにチェロはキツイですよー(^^;

投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/28 20:20

たいむさんこんばんは☆

ジェラルド作品はなんだか不調なような、、、、
あんまり最近合うのがないんですよね^^:

というわけで辛口気味評価でごめんなさいー、
やっと今日は面白いの今観てきました☆

投稿: mig | 2011/02/06 00:13

■migさん、こんにちはsun
私はこの作品、嫌いじゃないのだけど、皆さんが「やりすぎ」っていうのもわかります。

ジェラルドねー。ラッセルと雰囲気が近いんだけど、最近はイイトコは持ってかれてる感じ?

投稿: たいむ(管理人) | 2011/02/06 15:41

こんばんは。

妻子を殺した犯人だけでなく、彼らを正当に裁けなかった司法への復讐というテーマは非情に面白く見応えもバッチリだったんですが、後半に大きく失速してしまったのが不満でした。ハードな内容なので、もっとアブナイ結末でも良かったように思います(最後の計画が成功するとか)。

投稿: えめきん | 2011/02/08 18:13

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