「武士の家計簿」みた。
年末にかけて公開される邦画の中で一番期待していた作品。予告編からもほのぼのとした空気が感じられたけれど、まったくそのまんまで羨ましくなるような「家族」が描かれていた。
”御算用”という裏方仕事に誇りを持っていた実在の人物とその家族の物語。地味で地道な努力がもたらす小さな幸せをしみじみ思うような、嫌なところがまったくない心温まるとても素敵な映画かっただ。
いつの世も「芸は身を助く」ってことなのだろうなぁ。
幕末から明治にかけてプライドだけで生きてきた武士たちが居所を失い没落していく中で、猪山家は代々受け継がれてきたお家芸の”算盤と筆”のおかげで変わらず居続ける事が出来た。それ以前に火の車だった家計の立て直しに見事成功しているところが本当に凄いところかもしれない。武家の恥も外聞もかなぐり捨てて、家族全体が腹をくくって取り組んだからこその成功。緻密で計画的な財産管理を決行した直之も豪いが、この時代に家族の協力が得られたというのがかなり凄いと思う。厳しご時世だし猪山家を見習いたいところだけど、贅沢や便利さを切り捨てられないようではまず無理なんだろうなぁ。
身分の上下など無いに等しい現代の日本で暮らしている自分としては、下らないしきたりに縛られまくっている”ちょっとした武士”の家の有様はひどく滑稽に思えるけれど、”それがあたりまえ”という世の中ならば見栄をはってでもしきたりに従おうとしたはず。それを根底から覆してしまうのが猪山直之。
映画では、まず”算盤馬鹿”と揶揄される実直な直之の人となりを説明する為にかなりの尺を使っていた。予告編には借金返済の為の荒療治に抵抗する家族だったり、子供が反発する様子が印象づけられていたため、これには「なかなか本題にはいらないなぁ」と感じたけれど、もし最初から猪山直之の半生を描いた映画として認識していたならば、もっともっと入り込めたような気がしている。堺さん演じる若き日の直之がとてもイキイキしており、家族とのやりとりも面白かっただけに、なまじ面白くて興味がそそられる「予告編」だったのがちょっと恨めしい。
一芸はあるに越したことは無いけれど、あとは知恵と工夫と気持ちの持ちよう、ってことかな。
堺さんに限らず、家族全員俳優陣がぴったりとハマっていてとてもよかった。お正月映画として家族でみんなで和気あいあいというのも一興かと。
総評:★★★★+ 好き度:★★★★+ オススメ度:★★★★+
丁度『天地明察』を読んでいるところで、『塵劫記』が登場した時は分からないけどなんだか通じるところがあって嬉しくなってしまった。
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コメント
ははぁ、なるほどこれが帳尻あわせってことなのか。
と言葉の意味を改めて目で見せられて何だか凄く感心してしまったのでした。
家族が何だか必殺シリーズの中村家みたいで楽しいし、何より松坂慶子さんの「いやじゃいやじゃ~~」が可愛いやら面白いやらw
今の世に欲しいですね、こういう人が…。
投稿: KLY | 2010/12/03 23:20
■KLYさん、こんにちは
数字が合わないのが許せないって、私もそういう性格なんですっごく共感して見てました。
帳尻合わせは多かれ少なかれって分かるけど、結局は悪銭身に付かず、ですよね?
>中村家
ああ、なるほど!
だれもがキャラ立ちしてて愉快でした(^^)
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/03 23:39
堺雅人さんのあの随時笑顔で言われると、事業仕分けもすんなり行きそうな気がしましたよ。
本当にあのやんわりとした表情で凄い仕分けをされるんですから、しかも見ている人間に「細かい」などの不快感を与えないんですから、この役は堺さんでぴったりでしたね。
投稿: にゃむばなな | 2010/12/04 15:57
■にゃむばななさん、こんにちは
堺さんの微笑はコワイです(笑)
ニッコリ笑って凄いことしちゃう迫力みたいなものがありますよね。具の根も言わせない圧力を掛けならが恨まれないって凄い。
現実の事業仕訳に欲しい人材ですね(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/04 21:51
こんにちは♪
借金返済のために家財道具を売り払うエピや職業
の自由が無い時代だからこそ、その特殊技能を研
鑽し家を継がなければならない風潮なんかは最期
まで飽きることなく、また興味深く観れたんすけ
ど、終盤でのチョット辛気くさい親子の確執のエ
ピに冗長さを感じてしまいオモシロいのに何か惜
しいって感じになっちゃったんすよねぇ。
お駒さんの「貧乏と思えば辛いけど、工夫と思え
ば楽しい」は響くものありがありました♪
(゚▽゚)v
投稿: こんにちは♪ | 2010/12/05 17:01
■風情さん♪こんにちは
。
名前がないけど内容から風情♪さんだとかくしんして書いてます。
万が一違っていたらすみません。
>チョット辛気くさい親子の確執
事実だろうからしかたがないのだけど、折角楽しい家族物語だったし、そうしたギクシャクは後日談で付けた程度でも良かったですよね。
やはり、家財を手放す手放さないのところが一番愉快でしたw
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/06 18:51
こんにちは。
後半が残念とは思いましたが、見栄や対面より、現状見極め建て直しの一連が良かったですね。
何より美しい所作や作法を見ると、日本人の美徳を改めて感じました。
金沢は故郷です。
投稿: オリーブリー | 2010/12/07 12:25
たいむさん、こんにちは。先日はありがとうございましたm(__)m。
。
映画は2回目の鑑賞だったので、穏やかに進行する前半はトロトロと眠くなりかけました^^;。
後半の親子のぶつかり合いや確執が興味深く印象に残っています。
堺雅人さんの“オヤジぶり”も舞台挨拶で拝見できたし、あのアヤシイ笑顔に終始ヤられてしまいました
投稿: ayuto | 2010/12/07 17:26
■ayutoさん、こんにちは
どういたしまして(^^)
家財を売り払うところのドタバタは予告編で散々見てましたが、幕末でその先の話は全然気にもしてませんでした。
死んじゃうところで終わるあたり、なんだか大河ドラマ見たいでしたねw
堺さんの胡散臭い微笑み、大好きです(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/08 18:45
■オリーブリーさん、こんにちは
金沢のご出身でしたか(^^)
前田家の加賀ってなんか良いのですよね。羨ましいです。
見栄っ張りの武家の立て直し想像が愉しかったですね。
そしてお見送りにお弁当、素敵な朝の風景でしたねw
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/08 18:50
たいむさん、こんにちは!
武士というと刀ですが、算盤で家族を守った直之は一家の主としてかっこよかったです。
武芸が苦手でもただの軟弱ではなく、しっかりと真のある厳しい人ですし。
自分ができることをしっかりとやることによって家族を守る。
男として、見習うべきところがある人物でした。
投稿: はらやん | 2010/12/11 07:40
こんばんは。
財政面の問題や家族の問題など現代にも通じるテーマを取り扱った作品だったと思います。
帳尻合わせという言葉がいかにして生まれたか、借金とは、どのようにして出て来るものなのかも、この映画を通じて学ばせてもらいました。
投稿: FREE TIME | 2010/12/12 22:51
■はらやんさん、こんにちは
算盤侍なんて知りませんでした。
もちろん裏方の仕事の存在を忘れていたわけではないのだけど、ほとんど表に出ませんしねw
何を持って何に尽くすか、何であれ信念を貫けるって素敵ですよね。
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/13 22:31
■FREE TIMEさん、こんにちは
何気に「帳尻合わせ」してしまう場面もあるけれど、スッキリしないのは確か。
特に金銭面でルーズなのは嫌いだし、いろいろ勉強になる映画でしたw
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/13 22:34
たいむさん、やっと観てきました。
予告で期待していたのとはちょっと違っていたのが残念でした。
もっと、細かい家計の苦労を数字できっちり示してくれるのかと思っていたもので・・・。
でも、堺さんはぴったりでした。
馬鹿がつくほどまじめで、腰は低いけど
一本通っているから絶対譲らない。
相変わらず上手いなって思いました。
投稿: mariyon | 2010/12/25 09:09
■mariyonさん、こんにちは
そうそう、私ももう少し立て直しのところをしっかり見せてくれるものと思っていましたが、あっという間でちょいと肩すかし。
息子の回想から・・ってところで既に「ん?」だたのだけどー。
堺さんは良いですよね。あの含みのある微笑が溜まりません(笑)
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/25 10:57
こんばんはー^^
面白かったですね♪
わたしもちょっと立て直しの場面が短いなぁとは思いました。
確かに予告とは感じが違ったよね。
節約の方法もなるほど~って思うことあったし、常さんの「いつか着る~」の気持ちも十分わかるわー^^
エピソードがすぱっと終わってしまうこともあって涙が流れる暇がなかった時もあったけど、全体的には満足してます^^
やっぱ芸は身を助けるのよね!
投稿: みすず | 2010/12/27 20:57
■みすずさん、こんにちは
エンゲル係数の見直し一番分かりやすくも簡単な方法ですよね。
箪笥の肥やしの処分も基本。でもなかなか捨てられないのよね。
もう少しこの辺をじっくり見せて欲しかったけれど、固すぎず、砕け過ぎていない時代劇が愉しかったですw
投稿: たいむ(管理人) | 2010/12/28 19:56
予告でこれだけは、売りたくないと駄々をこねるシーンが
あって。
その着物が母親の死出の衣装になったシーンもあったから
根負けしてそれだけは置いときますと言う事になったんだ
と思ったんですけど。
借金返済して、買い戻したんですね。
身分費用ってそんなにかかるんですかね。
今のお金で、一千万近くの年収があったのに。
投稿: カモミール | 2011/01/29 13:39
■カモミールさん、こんにちは
まぁある程度の出世をしてしまうと、使用人は何人とかまで決まっていたようですし、武士の体面を取り繕うのはさぞかしお金がかかったのではないでしょうか。
見栄はってブランド品を身につけて、食事はカップラーメンなんてのと同じかもしれません。
投稿: たいむ(管理人) | 2011/01/30 16:00