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2010/11/01

「猫物語」(黒)西尾維新/著

Neko

アニメ『化物語』の大ヒットから続編が切望され、追加追加で執筆されることになったこのシリーズ。作者の西尾氏もあとがきで書いているが、本来『化物語』本文中に匂わしながらも永遠の秘話にするはずだった羽川の物語がこれだ。作者としても更に続く新章のスタートとともに想定外の発展に苦笑い状態らしく、矛盾回避の辻褄合わせは温かい目で観て欲しいといった感じだが、開き直るように”アニメありき”を逆手にとって楽しませてくれる辺りは流石といったところ。
”猫%、趣味120%”で書かれているこのシリーズ。(アニメに比べると)しつこさアップ・ヘンタイ度倍増・好感度下降っぽくはあるけれど、それが持ち味だから仕方がない、ってね。

ということで、作者的にはアニメ化NG前提で書かれているので、常識はずれなシチュエーション満載。前半はまるまる小さい妹の月火ちゃんと暦の他愛もないパンツ話と恋バナになっており(しかも兄の部屋に下着姿の妹と上半身裸の兄の二人っきりという格好で)、「いつになったら本題に入るのか」ってくらいどうでも良いことが延々と続けられている。後半はガッチリ本題が描かれているので一気に読めるし読後は満足出来るけど、(本文中にも何度となく出てくるが)アニメからのライトなファンにはちょっとキツイ本かもしれない。

さて、『化物語』における阿良々木暦の彼女は戦場ヶ原ひたぎで間違いない。でも暦が戦場ヶ原を意識する以前の、すべての事の発端が描かれている『傷物語』では羽川と暦の間に恋が芽生えないのが不自然というくらい2人の間に親密な関係が築かれていた。その後、ゴールデンウィークのこの物語の事件を経て、戦場ヶ原との関係を発展させていく暦なので問題はないのだが、羽川としては”不自然さ”のツケが【つばさキャット】として一気に噴出することになり、にも関わらず暦はずっと羽川を”恩人”評し恐れ多いとばかりに羽川に恋心を抱くことはないというアンバランスな結果を生んでいた。でもやっぱり不自然だし、なんか釈然としないんだよね。

今回その謎にやっと説明がつくことになり、溜飲を下げる事が出来た。ズバリ、前半にて暦は「ぼくはHさんに恋をしているのだろうか?」と月火に恋愛相談をしている。春休み以来、羽川と同じクラスになり、副委員長にまでさせられてアレコレ世話を焼かれている暦は常に羽川を目で追い、常に意識していると打ち明けている。一般的には「それが恋心でなくて何だというんだ?」となるのだけど、「(年頃だろうが)妹の下着姿なんてものの数に入らない。触るのも揉むのも平気」という暦の暦たる性的感覚は一般軌道から外れており、そう簡単に問屋は卸さないのだった。結局のところチキンな暦は欲望はあれど他人に対しては超奥手であり、羽川のことは大好きで大好きで溜らないのだけどそんなものはとっくに突きつけてしまっており、身内以上に身内的な特別な存在、手を出すことができない存在に昇華しちゃっていたということらしい。そうしたことを暦は《ブラック羽川》の出現によって自覚するし、羽川に対する気持ちを”初恋ではない何かに対する失恋”として、羽川の格付けを確定させたのだった。(実際のところは、羽川自身が決して暦に頼ることをしなかった為に暦が行き着いた皮肉な結論であり、何より暦が羽川翼の”気持ち悪さ”を確信したからなのだけど)。
納得といえば納得できる辻褄合わせ。暦もまた人間離れした感性の持ち主で、恋愛感覚という点ではまだ羽川のほうがまだ人間らしいのかな?(認める認めないは別として)。

さて、【つばさファミリー】から《ブラック羽川》の出現と退治については、概ねアニメにてチラ見程度に作られていたものをフィードバックさせつつ、さらに味付けを濃くした壮絶なバトルとして真相が語られていた。決裂したままの忍ちゃん(当時は名無し)とのその後やミスド好き発覚の瞬間、怪異殺しの妖刀”心渡”の伏線から”知っていることしか知らない”羽川への逆転劇が実に巧かった。いつでもどこでも忍野だけは相変わらずの忍野で、『偽物語』では姿を消してしまっただけに再登場(というか在りし日なのだけど)に嬉しくなった。

完全新作といった新鮮味はないけれど、新章スタートを前にした〆の物語としては区切りをつける意味でも良かったと思う。
新章は、時間を一気に現在に戻して始まるとのことだ。『猫物語(白)』ということで、またまた羽川がらみ。本当に羽川が好きなんだなぁ~ってねw

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