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2010/11/26

『3月のライオン(5)』 羽海野 チカ (作)

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島田八段の敗北を目の当たりにし、自分に足りなかったモノに気が付き始めた零。同時に自ら閉じこもった殻がだんだん窮屈に感じはじめ、自ら外の世界を欲することで打開せんと思いながら、「努力はしている」という自己満足に陥ってはいないだろうかと不安に思う気持ちを素直に認められる強さを身につけ始めた零のように感じられた第5巻。
限られた選択肢に流されることが最善で当たり前を続けてきたこれまでに対して、「望むもの」を意識するだけ、ほんの少しそれを主張するだけで自分を取り巻く世界がガラリと変化する。自ら掴みとることの出来る自由と幸せをおぼろげにも自覚する零。
相変わらず、ちょっぴり切なくてあったかい作品。今回も拍手だなぁ。

林田先生のおかげもでなんとか2年に進級することができた零。けれどクラス替えから林田先生は担任を外れ、新しいクラスに馴染めないままの零。ただこれまでとは違うのは、零がそれは当たり前、仕方がないと割り切ることに抵抗を感じているということ。将棋は孤独の闘いだけど、イコール独りになることではない・・とやっと気が付いた零。学校生活も同じで、「自分は学校生活に何を求めていたのか?」を思い返して危機感を持てるようになっただけ一歩前進出来ているというものだ。けれど以前に比べて人と触れ合う機会が格段に増え、随分と前向き思考になってきてはいるとはいえ、現状を打開するだけの行動力は未だ獲得出来ていない零。結局のところ、やっぱり林田先生の助けを借りることになるのだが、ついに零も”部活動”に参加することとなり、いっぱしの”生徒らしさ”を噛みしめることになった。
もちろんプロ棋士としてのエンドレスな1年は始まっているため、遊んでばかりもいられないのだが、”遊び”は零の心にゆとりを生み出し、視野を広げる効果を発揮しはじめたようだ。周囲に興味を持つことで目から鱗が落ちる。鱗の落ちた目で封印していたモノに触れてみれば、見えていなかったモノも見えてくる。実に良い傾向。独りじゃない心地よさを感じる一方で、周囲からの思わぬ攻撃にうろたえたりもするし、自分も体験して頭で理解していたつもりのことでも口にすることで改めて気が付かされることがあると知る。もはや1巻の頃とは別人だね。
かといって過去の「痛み」が消えるわけではないから他人の痛みにも敏感な零。まだまだこちらのほうの理解度が高いというのは皮肉なことだが、正しいことをして辛い思いをしながら、健気にも懸命に闘おうとしているひなちゃんに、心からから敬意を払う零がとてもカッコよく思えた。

ひなちゃんが心配なシチュエーションで終わってしまう5巻なだけに、読後にもやもやが残るのだけど、間接的な優しさに溢れた零の行動から「きっと大丈夫」って思える何かが感じられる気がして、5巻では泣き顔で終わってるひなちゃんだけど、6巻ではまた心からの笑顔に戻ると信じられそうだ。
「続きはヤングアニマル23号(11/26発売)で読める」なんて帯にあるから気になっちゃうけれど、ここはグッと我慢。6巻まで待ちたいと思う。

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