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2010/10/08

yom yom よめた。

Yomyom12特集でも付録でも、基本的に目当ての何かがない限り、まず雑誌の類を購入しないため書店でも雑誌のコーナーに立ち寄ることは少ない。そのため1年も前に発売された《yom yom (ヨムヨム)vol.12》(2009年10月号)に掲載された小野不由美氏の『十二国記』シリーズ:最新書き下ろし「落照の獄」を見過ごしていた・・・と知ったのは先週のことだった。
というのも、アニメ『十二国記』の【Blu-ray:BOX】特典ドラマCDの内容が気になって検索した「Wikipedia」から得た情報だったりする。

その更に1年半前、長い沈黙を破って書き下ろされた「丕緒の鳥」が掲載された《yom yom vol.6》は早いうちに噂を耳にしたことから雑誌を買いそびれることもなく、久しぶりのシリーズを堪能したものだったが、《vol.12》に関してはとにかく不覚としか言いようがない。
既に発売から1年が経過しており、もはや通販書店でもバックナンバーは品切れで入手不可。中古市場もほぼ在庫無し状態で、あったとしてもオークション市場と同じく破格の値が付けられている状態だ。でも、読みたい。何としても読みたいと思ってしまう。
書き下ろしが数編溜まれば書籍化も期待できるが、今現在ではいつになるかは全くの未定と言える。オークションも数日観察してみたが、たとえ良識あるスタート値であっても最終的には概ね定価の倍程度の価格で落札されているようだ。やはり人気シリーズであり、それでいて私のように「知らなかった」人も少なくないと言うことなのだろう。

・・・でも、あるところにはあるんだね。閃いて検索して嬉しさのあまり何度我が目を疑ったことか。あるじゃない!まだ大元の新潮社に!!
《vol.6》の時も『十二国記』人気の為に、雑誌としては異例の増刷をしたという話を聞いた記憶があったが、《vol.12》もおそらくそういう事だったのだろう。だから売れ残る数も少なくはなく、未だにバックナンバーの在庫が残ってしまっているのかもしれない。
なんであれ、すっかり諦めモードで最後の頼みの綱は図書館しかないと思っていただけに、あっけなく入手手続きが完了出来たときは気が抜けたほどだった。新品で、しかも定価+送料210円というお値段は1000円でお釣りがくるわけで、つくづくオークションに手を出さなくて助かったと思った。
《vol.12》を探している人で、運良くこの記事を目にした人は迷わず新潮社のHPへGO!(「雑誌」から《yomyom》のページを探してバックナンバー在庫を確認しよう)。在庫だっていずれは無くなる。(さすがに《vol.6》は売切れだし)。早い者勝ちだよー。

で、期待の「落照の獄」は期待を裏切らない秀作だった。
舞台は柳国。時期としては利広と風漢が柳国首都:芝草で再会する話を描いた「帰山」(by『華胥の幽夢』)とほぼ同時期といえそうだ。内容を現代風に言えば、無差別強盗殺人事件の被告人をどのように裁くのか、司法担当の高官たちが量刑を案じる、という話。(ちなみに柳は劉王が「死刑を認めない」との宣旨を下している)。
比類なき残忍な犯行を繰り返している被告人。誰もがその極悪非道っぷりとと反省の色なしに”死刑相当”と思っているのだが、王の宣旨には逆らうことはできない。けれど当の劉王は「良きに計らえ」と司法方にすべてを任せ、「死刑」でも構わないと言い出す。しかしそれは被告人の残忍性や国民感情を慮って事ではなく、文字通り「丸投げ」なのだ。司法方はだからといって安易に「死刑」判決を下すわけにも行かず、様々な事情で頭を悩ますこととなり、決め兼ねてずっと話が堂々巡りすることになる。その理由の一つとして、劉王の無気力から柳が傾国し始めていることに柳の高官も気が付き始めているということ。国が傾けばだんだん人々は荒みはじめ、犯罪も増える。ここでの死刑制度の復活は、なし崩し的に”負の連鎖”を引き起こす危険性を秘めていたのだ。

シリーズとして続くエピソードを絡めながらも、現代社会にも通じる社会派な内容で読者を惹きつける物語。一応結論はあるものの、果たしてそれは正解なのか?と読者に問いかけるような結末だ。続編と聞けば、まず慶国や陽子のその後や、延王&六太の愉快なエピソード、戴国の話などを期待するが、世界観を同じくした他国のシリアス路線だとしても、馴染みのキャラが全然登場しないとしても、何であれ満足感に浸れてしまえるのだから、このシリーズと小野先生はスゴイって思う。
今後も不定期ながらもシリーズを書き続けてくれるらしいとのこと。2度とスルーすることのないようアンテナを張っておかなくちゃだ。とにかく、《vol.12》を手にすることが出来て幸せだ。

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コメント

こんにちわ!
私、これが発売される一週間前くらい情報を知りまして…
結構ひっそりとしてたように思います(苦笑)

テーマがとても壮大というか、
結論の出ない話だなぁとすごく思いました。
さらに、テーマの背景に見える、柳国のたどる道。末路。
十二国記の国が終わるときは悲しい末路が決まってますからね…
そして王の統治が永遠に続くことはきっとないと思うと、
実は悲しいお話なんだよなぁと思ってやみません。

…まとまらないので上手く言えませんが、
相変わらず考えさせらる、読後感がなんともいえない作品でした。
発表ペースがもうすこし上がれば言うことなしなんですがね!
間が開きすぎると、登場人物が多いし難しい世界観だしで
いろいろ忘れちゃいます…(^_^;)
今回も政治の役職が脳内でほぼリセットされてて大変でした(苦笑)
次はいつになるやら…

投稿: きりん | 2010/10/15 11:18

■きりんさん、こんにちは
さすがギョーカイ人?(^^)
発売した時はいつも以上に山積みされていたそうだし、気が付かない私がアホなのだけど、とりあえず読めて良かったです。

今回の柳の話はいつも以上に現代社会が投影できる内容で濃くも重いものだったと思いました。
勝ち負けではないけれど、どちらの答えでも負けてしまうって遣り切れないものですね。

実はブルーレイBOXも全部じゃないけど買っちゃいました。犬狼真君と延麒の話はボロ泣きです。本編は時に涙しながら一気見でした。また再放送すればいいのに、とか思ったりw
感化されて小説も読み直し始めているところなのだけど、どれも厳しい内容ばかりだと改めて思ってます。何度読んでも読み応えありますねー。

そそ、もう少しテンポよく続いてくれると嬉しいのだけど、このペースだから良いのかもしれないし、ファンとして難しいところです。
長編の続編も欲しいけれど、戴の続編はかなり過酷なものだと思うし、雁だとしたら遂に?!とか思って恐いし、やっぱちまちま短編で色々なエピソードを読ませてくれたら嬉しいかも。
まだ登場していない謎の王と麒麟も居ますし、気長に待ちましょうかね(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2010/10/15 18:13

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