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2010/08/28

「トイレット」みた。

Toilet

「欲求に理由を付けるのは無意味だ」
うん、あまりにもそのとおりで名言だよなーって思う。できるかぎり欲求に正直に生きられたらとは思っていたけれど、そのためにも欲求に理由を付けたがっていた自分だったように思う。ほんと、自分に言い訳してどうすんの、ってね。
今回もまた、荻上監督のつくりだす静かなのに圧倒的な存在感が醸し出されている空気にヤラレちゃったようだ。
嬉しくって泣ける映画っていいよね。

4年前、パニック発作を起こして以来ひきこもりとなった天才的ピアニストの長男:モーリー。幼いころ母親にプラモデルを買って貰って以来ロボットオタク化した次男:レイ。末っ子のリサは口やかましい大学生で、3人の母親の母親である”ばーちゃん”と母親の愛猫:センセーが、母親の病死を切っ掛けにひとつ屋根の下で暮らすことになり、どことなく奇妙な同居生活が始まる。
まず3人が対応に戸惑うのがばーちゃん。娘の死を悼み消沈しているのは見てとれるが、英語が通じずひと言も喋らないばーちゃんではコミュニケーションの取りようがない。特に毎朝の長トイレ&深いため息が気になってしょうがないレイは、本当に実の祖母なのかと血のつながりを疑いだす始末。(後々明かされる2つの答えに「そう来るかぁ」と唸ることになるが)。
それでも、ものを言わぬばーちゃんに兄妹たちは”家族”として接し続け、まずはじめにモーリーが、次にリサがばーちゃんと打ち解け始める。(といっても相変わらずひと言も発しないばあちゃんだけど)。だが、レイは同居以来モーリーとリサ、得体のしれないばあちゃんにすっかり振り回されてとうとうブチ切れてしまう。それは道理で、事あるごとに職場に電話してきたり、ばーちゃんが居なくなったというから探し回り、見つけられずに疲れて帰宅したのに、3人仲良く餃子を作っていたとしたらそりゃキレもするだろう。
けれど、不貞腐れて夜中に独り、ポテチでビールを飲むレイに、何も言わぬまま餃子を焼いてくれたのがばーちゃんだった。
綺麗な焼き色のついた、見た目にもモチモチカリカリジューシィな餃子の旨そうなこと!
むしゃむしゃとあっという間に平らげるレイ、それを傍で見守るばーちゃんに泣けた。ばーちゃんに感謝の気持ちを伝えるために、親指を立てて「餃子はクールだ」と、懸命に訴えるレイにまた泣けた。
ようやくバラバラだった家族がばーちゃんを中心にひとつに纏まりはじめ、モーリーも、リサも新たなる目標に向かってスタートを切ろうとしてた。今度こそ全員揃っての餃子パーティも開かれた。更にこれから・・というところだが、この映画はそのまま自然の流れにそって終わっていく。

残された余韻が最後のオチでひっくり返されちゃうところがまた良くって、本当に荻上監督のセンスに脱帽しちゃうところ。ただひとつ、超最新式のウォシュレットに対して、昭和初期くらいの旧式シンガーミシンではギャップが有り過ぎのように感じられた。せめて昔はばーちゃんのミシンだったとか、ミシンの歴史を匂わすような描写があったら良かったかなーと思った次第。(今でもない、どこでもない世界という感じでもないので)。
まぁそれはともかく、もたいさん以外のキャストの全員が外国人で、全編英語だったのも良かった。好きだなーと思う作品だった。

総評:★★★★+    好き度:★★★★++    オススメ度:★★★★+

それにしても、この映画の分類って「邦画」でいいのかな?

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コメント

たいむさん、こんばんは。
こちらにもお邪魔します。

私も荻上さんが描く”静”な世界観が大好きです。

今回は、一見変な人の集まりを描いただけのようでその中には、家族を繋ぐ絆は血の繋がりだけなのか?心を通じ合わせるのは言葉だけなのか?みたいなテーマも隠れてて。

ばーちゃん、セリフはなくとも孫たちのことちゃんと見てて彼らが一歩踏み出す為の手助けを無言でしてる素敵でした。

要所要所にでてくる猫のセンセーの動きもお気に入りです。

投稿: Hitomi | 2010/09/10 21:31

■Hitomiさん、こんにちは
どの作品でもそうだけど、台詞がなくてもあの存在感を醸し出せるもたいさんに拍手を送りたくなりました。
言わなきゃ分かんないだろってことがほとんどだけど、言わなくても分かるって凄いですよね。
この雰囲気、私も好きです♪

投稿: たいむ(管理人) | 2010/09/11 19:44

こんばんは
TB&コメントありがとうございました

この映画、本当は観ようかどうしようか迷っていたのです

知人にススメられたのと上映終了日が間近に迫っていたので
重い腰をようやく上げて少し遠方の劇場まで観に行ったのですが…
その価値は十分にありました

滑稽な雰囲気がありつつも
所々でホロリ…とさせられてしまうような
温かい人間の優しさが伝わる
そんな映画でしたよね

私個人的にはレイがプラモデルを諦めて
ばーちゃんにプレゼントを贈った時の
「やっとの想いで諦めたんだ…」というセリフが
一番泣かされました

投稿: テクテク | 2010/09/25 19:44

■テクテクさん、こんにちは
そうそう、あったかい雰囲気が好きでした(^^)
レイの変化が一番良く分かるような作りだったけれど、モーリーもリサも徐々に変化していくのがわかったし、例え気付きが遅くても、自分もそんな風に立ち止まらずに変わっていきたいと思いましたよ。

投稿: たいむ(管理人) | 2010/09/26 09:13

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