「パラオ攻略戦」 福井晴敏(著) 読んだ。
「ユニコーンの日(上・下) 」、 「赤い彗星」に続き、『機動戦士ガンダムUC (ユニコーン)』の角川文庫版の原作本の第4巻。「赤い彗星」の時と同じく、前半はのんびりとしたものだが、中盤を過ぎたあたりで戦闘モードに突入すると加速度的に読み進めてしまうことになるのがこのシリーズの特徴だろうか。なんたって今回のサプライズったらっ!角川文庫には挿絵がないが、アニメのマリーダを思い浮かべて見れば、確かに面影があるように思えてくるから面白い。
物語は遅々として進んでいない気もするが、それぞれがそれぞれの意思で動き始めることになる第4巻で面白かった。
(以下、若干ネタばれしているのでご注意を)。
現在ネオ・ジオンの拠点となっている”パラオ”まで、ユニコーンと共に連行されたバナージはフル・フロンタルと対峙する。一生懸命虚勢をはって頑張るバナージだったが、そもそも役者が違うのだから展開は一方的。とはいえ、バナージに対して紳士的な態度で接するフル・フロンタルで、(ミネバのことがあるにしても)「素顔を見せてほしい」というバナージの不躾な要求にも、あっさり仮面を外して応えるのには驚いた。ただし、当然のことながら仮面を外した顔は活字からでは良く分からないのが悔しい。”眉間に刻まれた古傷”なんて一文があるだけに尚更に。(アニメでは見せるかの隠すのか。声がシャアそのものだから期待したくなるのだけど)。ついでに「あなたはシャア・アズナブルなんですか?」なんて読者の誰もが聞きたい質問をしっかり投げてくれるバナージに拍手したくなるが、是でも否でもあるような返答でサラリとかわしてしまうところか実にうまいんだなぁ。
ユニコーンは彼らの手によって解析が進むが、バナージなしにユニコーンから無理に情報を引き出そうとするとすべてかパァになり兼ねないとして、無茶なことにならないところに少し安堵する。でも、ならば開かないのなら開けさせる、あるいは自然に開くように仕向けるといった作戦でバナージ達を踊らせるような、冷酷なフル・フロンタルの姑息さを知るとなんだか憎たらしくて憎たらしくて。
その後バナージは身柄をジンネマンに預けられ、パラオ滞在中はマリーダと共に同じくジンネマン隊のギルボア家の世話になることに。ギルボアの3人の子供と妻が暮らす家。短期間に色んなことがあり過ぎてすっかりササクレだっていたバナージだったが、”家庭”を味わい、子供のように叱られて落ち着きを取り戻せば、ほんの束の間とはいえ癒しの時間になったようだ。
一方、連邦側はユニコーンを奪われた上に、ミネバという招かれざる客のおかげで舌打ちする状況だった。公に出来ない事実ばかりの厄介事にどっぷり浸かった《ネェル・アーガマ》自体ももはや厄介な存在となり果て、トカゲのしっぽ切りの憂き目にあうハメに。それでも理不尽ともいえる命令には皆で知恵を絞り、起死回生の作戦で切り抜けようとするところがたくましい。しかし、結果はそれこそフル・フロンタルの思惑にどんぴしゃりとなるのだから遣り切れなくなるのだけどね。
ちなみに、おぼっちゃまであることから一旦《ネェル・アーガマ》を離れることになったリディは、予想どおりミネバの脱走を援護することとなった。持つべきものは政治家で実力者の父親。すべてを有耶無耶にさせないためにミネバを連れてMSで地球に降下しようと言うのだから大したものだ。連邦軍のパナマ攻撃のゴタゴタからユニコーンで脱出したバナージとも再会。微妙な三角関係を見せつつも、互いの目的の為に援護し合い、男の約束を交わすところにグッとくる
そして、最終的には”ガンダム”にならなくちゃお話にならないので、きっちり”NT-D”が発動するべくお膳立てが用意されており、その咬ませ犬がマリーダということだった。連邦軍が攻めてくることは折り込み済みで、簡単にバナージが脱出できたのも、マリーダとの戦闘から”NT-D”が発動するだろうことも、そこからガンダムが真の姿を晒すだろうことも、何もかもがフル・フロンタルのシナリオどおりだったようだ。全部見透かしているかの言いっぷりがほんとムカつくんだけどー
「UC計画」の本当の意味だったり、マリーダの過去だったりと、そこからは驚きの連続。戦闘も含めてアニメでどのような描かれ方をするのかとても気になるところだが、きっとそれだけでは終わらず、裏の裏は表のような更なるドンデンがあるものと期待したいところでもある。まだ、ようやく半ばに差し掛かったところだしね。
次巻「ラプラスの亡霊」は今月下旬に発刊予定。ここからは2カ月毎となるので、のんびり(読めば一気かもしれないが)読んでいこうと思う。アニメの2話も間違いなく”秋”に見ることができそうだし、行きつ戻りつするのが良さそうだ。
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