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2010/02/10

衛星映画劇場 アカデミー受賞作品特集 「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」みた。

Good_will

毎年この時期になると始まるNHK-BSでの歴代アカデミー受賞作品の一挙放送。アカデミー賞の歴史も長くなり、もはや数限りなくといった感じだが、今年も3月までに40作品ほど放送が予定されているとのこと。さすがにそんなには観られないが、興味はあるのに見損ねたままになっていた作品がいくつかラインナップされているので、折角のこの機会、ちょいと頑張ってみようと思っている。
そこで早速観たのが2/9に放送されたこの作品。マット・デイモンは私のお気に入りアクターベスト5に入っているのだけど、ランクインしたのがここ2-3年のことなので、この作品は気になりつつも未だ観ていなかった作品だった。
マット若い!初々しい! 面白かったし、泣けたー。

マットとベン・アフレックの共作でみごと第70回アカデミー脚本賞に輝いたこの作品。第70回はあの『タイタニック』の年であり、その中で脚本賞を勝ちとったっていうのだがらスゴイこと。
物語は、学問(特に数学)に天才的な才能を持っていながら、孤児で里親に虐待されて育ったことですっかり心を閉ざしてしまった青年ウィル・ハンティングが、その才能を数学の権威である大学教授:ランボーに見いだされ、やがてランボー教授の旧友:ショーン(心理学者)のセラピーから、ようやく閉ざしていた心を開き、愛を知り、新しい人生を手に入れる、という感じである。

ウィルは自他共に認める天才。けれど持てる希有な才能を生かそうとは考えず、単純労働で生活費を稼ぎつつ、悪友たちとつるんではちょっとした犯罪を繰り返して鑑別所を出入りする生活を送っている。ランボー教授との出会いは、ウィルがマサチューセッツ工科大学の清掃員をしていたことに由来する。ランボー教授が学生あて出題した数学の難問をウィルが人知れず解いてしまったことで、教授がウィルを捜しあてたのだった。その頃ウィルはひと騒動起こして拘置所の中。ランボー教授が身元引受人となり保護観察下に置くことを条件にウィルの保釈が許可されることになる。
数学では、権威ある教授までもが羨望の眼差しを送るほどの実力を見せつけるウィルだったが、素行の悪さは一向に改善されない。保釈の条件として受ける約束のセラピーでは、来るセラピストたちのすべてを不真面目な態度で撃退するウィル。どんなに才能があっても本人が望まないのでは世に出ることなく終わるだけ。最後に白羽の矢が立てられたショーンは、焦るランボー教授にとって頼みの綱だった。ショーンとウィルの気まずい初対面にもはや「打つ手なし」かと思われたが、ショーンに何かを感じたウィルはしぶしぶながらもセラピーに通い始める。
初回は図星を付くウィルの攻撃的なショーン分析に打撃を受け、侮辱に激怒し険悪な雰囲気で打ち切られたセラピーだったが、ショーンもまたそこからウィルが学問(経験のない知識)で武装しただけの”臆病で空っぽなガキ”でしかないと見抜き、そのトラウマが過去成長過程にあることを確信して、ウィルがこのまま才能を埋もれさせてしまわないよう、心を開かせるためのセラピーを開始する。
ウィルは楽な方へ楽なへと逃げているわけではないのだけど、他人には決して自分を見せたがらず、自らの殻に籠っているところに問題がある。ウィルは何より失うことを恐れているから、他人から深く踏み込まれることも嫌う。頭が良いから攻撃される前に攻撃して防御できてしまうのも厄介なところ。よって恋人が出来ても当然のように限界が来る。自分を見せない相手に不安を募らせる彼女。でもウィルは自分のエリアを変えられないから、結局踏み込んできた相手を拒絶するしかなくなってしまう。自分こそがそれを恐れていたというのに。
それでも、ウィルは変わり始めていた。相変わらずショーンに対しても彼女に対しても調子の良い言葉で自分を誤魔化し続けていたけれど、自らを語るショーンの話から彼の心の奥に潜む”痛み”を感じ取り、次第にショーンに親しみを持つようになり、彼の体験を自分にも当てはめて考えるようになっていった。

ウィルが自分の殻を破れないでいるのは、現状に満足しているからでも、誰かに遠慮しているからでも、世の中を諦めているからでもなく、ましてや自分に素直になれないからでもないのだと思う。やればデキルのは自他ともに認めることであり、自分では「そんなのはいつでもできる。でもやらない」というところだろう。ちゃんと「やらない」理由も論理的に答えられる。けれど「やる意味が無い」というのがホントのところではないだろうか。
愛されず虐待されて育ったが故の無意識下の副作用。実はようやく手に入れたごく平凡な日々に甘んじているだけであることに自覚が無いから、時々器に収まりきらなくなった力が色々な形で勝手に溢れ出てしまっている、という感じではないかと思えた。(暴力沙汰しかり、意識的に有名大学の清掃員を選んで学問で遊ぶことしかり)。

最終的に彼女と親友とショーンによって新たなる世界へ旅立つことができたウィル。それぞれの立場からウィルに痛い真実を突き付け、ウィルに気付きを与えた彼ら。
ウィルから2度もこっぴどく振られた彼女は最後までウィルを「愛している」と言って待ち続けた。親友はこのままウィルが才能を埋もれてしまうことを憂い、「出来るのにやらない人間」、「義務を果たさない人間」への凡人の嫉妬と憤りを吐露してウィルの背中を押した。そして、まっすぐで揺るぎのない視線でウィルを見つめ、「君の不幸な過去は君のせいではない。君は悪くない。君は悪くない・・・」とウィルを過去の呪縛から解き放ち、「息子よ」と親の愛情を伝えたショーン。その視線をしっかりと心で受け止めたウィルは遂に心を開く。
「今までごめんなさい」と、ウィルとショーンのハグに泣けたー。

そこで終わらず、ちょっとしたその後のエピソードにニヤリとなるのがまた良かった。ただハッピーエンドというのではなく、そうした心地良さがあるエンディングは大好きだ♪

益々マット株が上がったなぁ そしてアカデミー助演男優賞を受賞したショーン役のロビン・ウィリアムスも素敵なおじぃさま株を不動にした感じ。『ナイトミュージアム』(1.2)ではお茶目な”テディ”だったロビンだしね。

なんだか感想というよりは、あらすじを追いながらの”ウィル分析”になってしまったなぁ。(気に入った作品はこの手の傾向になりやすいんだけど・・^^;)。
何はともあれアカデミー受賞作品は伊達じゃない!ってことで、折角のチャンスを生かして気になる作品は逃さないようにしなくちゃだ。(NHKはコマーシャルが無いのがイイ)。

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コメント

私が映画ファンになるきっかけになった映画ですよ、この作品。

私はこの作品ではマット・デイモンよりもベン・アフレックが好きなんですけどね。
実際映画を作るにあたっても、脚本の内容から主役をマット・デイモンに譲ったというだけあって、ベン・アフレックの男気にホレちゃった映画です。

投稿: にゃむばなな | 2010/02/11 15:39

■にゃむばななさん、こんにちは
切っ掛けがこの作品ですか?にゃむばななさんなのに随分と新し目の作品のような気もしますが。

私はベンって好みのタイプじゃないんですよねぇ。ただそれだけのこと。ちなみにマットにはボーンシリーズで完全に落ちました。やっぱ知的な役が良く似合うと思います。
主役は、もともとはマットの課題を膨らませたモノと聞いているのでそういうものだと思ってました。
チャッキーも凄くいい奴だったし、チャッキーの本音を語ってあげるシーンはグッと来ましたよ。最後に「とうとう行きやがった!」と嬉しくも複雑な笑みを浮かべるところもとても良かったです。

私はなんだろうなぁ、スティーブ・マックィーン好きの母親に連れられて初めて映画館で観た映画が『タワーリング・インフェルノ』だったし(3/8放送)、父親がTVで戦争映画をよく見ていたので『ナバロンの要塞』とか『ナバロンの嵐』とかを見つつ、更に『サウンド・オブ・ミュージック』などなど、結構子供のころから観てたんで、コレだって切っ掛けはないかもしれないです。

投稿: たいむ(管理人) | 2010/02/11 16:28

たいむさん、こんにちは。

懐かしいですねぇ。よくクイズとかの引っかけ問題で、
「マット・デイモン or ベン・アフレックはアカデミー賞
受賞者である。○か×か」みたいのがあって、当然「二人
とも受賞してるわけねーだろ!」と思うと、この作品で受
賞、みたいなオチ(笑)。(主演・助演、とは言ってない
ところがミソ)。

エマ・トンプソンは主演女優賞と脚色賞と両方受賞してい
たりしますが…。


何か凄い昔に書いた気がしますが(笑)、私はベン・アフ
レックとマット・デイモンの共演では『ドグマ』がめっち
ゃおきに。この作品ははまる人とダメな人が別れちゃう作
品ですが、近所のTSUTAYAに置いてないんですよねぇ。DVD
買っちゃおうかな。

っと、脱線しましたが、この作品ではやっぱりロビン・ウ
ィリアムスかな。奥さんのエピソードとか、泣けちゃいま
した。


ちなみに私の選ぶ、マット・デイモンのベスト5は、

5位:ボーン・アイデンティティ
4位:グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
3位:リプリー
2位:オーシャンズ11
1位:ドグマ

かなぁ。一連のケヴィン・スミス作品でのカメオ出演(特
に『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』!)も捨
てがたいですが。(>_<)

投稿: ラフマニノフ | 2010/02/13 23:42

■ラフさん、こんにちは
そんなクイズ見たことないけどなぁ=(笑)
でも、どちらも俳優で売れているし、ハリウッドスターとして名前を知る程度の人は引っかかっちゃいますよねw

>『ドグマ』
見てないっす。オススメなら見てみようかな?

『ボーン・アルティメイタム』前後はアレコレ出演していたけれど、最近は露出が少なくなっていたマット。GW明けの『グリーン・ゾーン』を楽しみにしています!

投稿: たいむ(管理人) | 2010/02/14 10:29

たいむさん、はじめまして。

それにしても完璧な脚本、見事な演出でしたね。マット・デイモンはこういう屈折した人物を演じると天下一品だと思います。数学では天才でも、置き手紙の文字が超ヘタクソなところも笑えました。

投稿: まいじょ | 2010/03/12 16:18

■まいじょさん、こんにちは
はじめまして。
すっかり引き込まれてしまいました。
「息子よ」にはボロ泣き。心を入れ替えて面接に言ったあと、やっぱり・・と彼女を追いかけるラストも素敵でした。
「タイタニック」の年でなければ・・・と本気で思う良き作品だったと思います。

投稿: たいむ(管理人) | 2010/03/12 21:32

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