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2010/01/26

『キケン』 有川 浩 〔著〕

Kiken_3

つい一か月前に『シアター』が発売されたばかりだというのになぁー。この『キケン』は雑誌連載の単行本化であり出版社も違うけれど、このペースはちょっと早すぎやしませんか?(新作は嬉しいけどー)。一体いくつの小説を同時進行で書いていたんだか、お得意のベタ甘パートは同じとしても、内容(テーマ)はそれぞれ専門的な分野に踏み込んだ作品が多いし、有川先生のモチヴェーションの高さには頭が下がるばかりだ。
それにしても『キケン』だなんて穏やかじゃないタイトルが好奇心をそそってくれる。でも実は”キケン”とは「機械制御研究会」を省略した【機研】だったりする。しかし、【機研】=”危険”の公式が成立してしまうムチャクチャ過激な奴が存在しているのも確かで、それゆえの「キケン」であるといっても間違いではない。この小説はそんな主人公らが築いた【機研】の一時代が回想の形で語られている。
(以下、内容に触れているのでご注意を)

語り部は元山高彦。10年前に【機研】の黄金期を築いたメンバーの一人だ。数年前に結婚した妻と結婚式のアルバムをめくりつつ、大学時代の思い出話を語る・・というシチュエーション。まずは【機研】の部長にして最も過激な危険人物である上野直也に、元山と同期の池谷悟が【機研】に勧誘(半強制的に入部)されたときのエピソードから披露される。

【機研】が”キケン”と呼ばれるようになった理由は、まず上野直也による奇抜で過激な行動によるところが大きい。なんと上野は小学生にして爆弾を製作してしまうような(ある意味)天才的な爆弾魔で、元山より一つ上の2回生だ。後輩は上野のムチャぶりに泣かされっぱなしだが、それさえなけりゃ一本筋の通った尊敬できる先輩で、名実とも真のリーダーであることは全員一致の見解というところ。そして唯一上野の暴走を制止出来る人物が副部長の大神宏明。会計など実質的に部を取り纏めているのは大神で、上野の抑え役どころか、通称「大魔神」と言われる空手黒帯のツワモノで、存在するだけで醸し出される威圧感は尋常ではないと後輩におののかれている。そんな上野と大神が1回生の時、とある事件を切っ掛けに”キケン”の称号が与えられたとのことだった。
・・・ということで、第1話「部長・上野直也という男」では、その裏付けとなるエピソードであり、文字どおり”ぶっ飛んだ”新人勧誘の模様が語られている。ちなみにそんなでも元山・池谷のほか7名の新人を確保するに至ったのだった。

第2話「副部長・大神宏明の悲劇」では、朴念仁:大神に彼女が!というお話。大神は誠実で常識ある良き漢だし、恋の行方を【機研】全員で見守っていたのに――な話。
・・・上野をみていると大人に感じられた大神も、やっぱりフツーの大学生の男の子でしかなく、コクられれば舞い上がるし、フラれれば荒れもする。有川節炸裂でありながら~な展開がなかなか愉快なエピソードだ。

そして、第3話・第4話がこの小説の肝と言える”学祭”でのエピソード「三倍にしろ!(前・後編)」。【機研】は毎年”ラーメン店”を出店。代々受け継がれてきた伝統(ノウハウ)があり数十万円以上の売上をキープし続けている本格派。今年は上野の鶴のひと声で実家が喫茶店を経営している元山が店長に任命されることに。任命されたとあれば元山としても本気モード200%!”お店の子”の名にかけて、伝説の”奇跡の味”の探求からレシピづくり、メンバーへの調理指導から接客方法まですべてを取り仕切る。上野の「遊びじゃないんだよ!」の怒号に「(えー、学祭は本来遊びでしょ~)」と声にできない反論を飲み込みつつ、いざ本番になれば大繁盛にカイカンを覚え、一日24時間営業の忙殺状態からハイ状態に。
・・・途中トラブルに見舞われつつも、後に”伝説”とされる記録を樹立するというエピソードは、読みながら羨ましく思うほど。真剣であればある程達成感や充実感は計り知れないものになって一生忘れらない経験として胸に刻まれるものだしね。ともに喜びを分かち合い、時に悔しさをみんなで噛みしめて奮起する、私もそんな部活動を経験してきただけに共感しまくり。本気で力尽きるまで遊び倒すことが出来るのが学生の特権でとても大切なこと。こだわりもポリシーも捨てず、それでも何とかなるさと突っ走る様子にワクワクする学祭の話だった。
ついでに余談だが、「3倍にしろ」という上野に、「赤く塗ればいいですかっ」という1回生のセリフが飛んだところにニヤリ。3倍ネタはこうでないとhappy02

第5話「勝たんまでも負けん!」は、(やっと)工科大学らしく”ロボット大会”のお話で、池谷がクローズアップされたエピソードになっている。それでもやっぱり上野の暴君っぷりが際立っており「池谷不憫」なお話でもあるのかな?
そして最終話が「落ち着け。俺たちは今、」で、上野・大神が3回生に、元山・池谷らも2回生へと進級し、新たに7名の部員をゲットしてしばらく経ったころのお話。上野の常識にすっかり慣れてしまった後輩たちが、どんどんキケンな遊びをエスカレートさせて行き・・・という話だ。
回想も終わり、元山の思い出話に笑い転げていた妻が最後にひとつの提案をする。元山にとって嬉しくもあり不安でもある提案。そして―――。
〆は有川作品らしく甘い味付けになっているけれど、締めくくるに相応しいサプライズにほんのり涙。今回もイイ仕事をしてくれました♪

いつも装丁や装画でも楽しませてくれる有川作品。今回はカバーも含めて”トビラ漫画”で魅せてくれた。少し本文を読めば各話のトビラ漫画が”あらすじ”になっていることが判るのだが、ネタバレを織り込んでも愉しく読める、読者を惹きつける有川先生の手腕はやっぱりスゴイのだと思う。(ちなみにカバーの漫画(↑)は元山がツッコミを入れているとおり、鵜呑みにしてはイケナイ)。

次の新刊の予定はまだ仕入れてないけれど、どうなんだろう?毎月というのも大変だが、ご無沙汰になるのも寂しいもので、情報収集に励むことにしよう。

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コメント

コミック・ティーンズの担当の子が言うてたんですが
電撃文庫は一応主人公の年齢制限上限があるらしく
・・多分二十歳未満。基本高校生までらしく、
「キケン」は一応文芸書扱い。
でも、この内容って電撃のノリちゃいますか?
いやもう、よじれてよじれて
そのむちゃくちゃさにケタケタ笑って
最後の黒板の殴り書きになぜかポロポロ泣いてました。

チョットマジで有川さんハマったかもです。
(と、いいながらまだ3冊め・・・あはははは)

投稿: Ageha | 2010/02/02 02:01

■Agehaさん、こんにちはsun
いきなり「お店の子」で失礼いたしました。
何と言いますが、「店の子」っていうと元山の自称とか第3者の客観的視点での「実家が商売をやっている家の子」の意味の代名詞だと思うんですね。でも上野の言う「お店の子」は元山だけを示す固有名詞。ここのところはちょっとこだわりたいんですよねー、私としては(^^)
押しつけがましくってすみません。

笑って泣けて気恥ずかしさに転がりたくなるのが有川作品。『キケン』は愉快な作品でしたね♪

そうか、”ティーン”ズ文庫というだけあって20歳以上はそりゃNGですかね(^^)共感とか感情移入するには同年代となりますよね。
でも私が中~高校で読んでいたコバルト文庫は『星へ行く船』シリーズ(by新井素子)のヒロイン:あゆみは20歳くらいで、相手役?の太一郎さんはもっと大人だったような?
時代は変わったのかなぁ~(笑)

もともと大人向けのライトノベルを目指している有川センセですし、ノリが電撃なのはもはやアリなのでしょう。
『塩の街』もどっちつかずなところが単行本で販売された理由ですし。(更に文庫化は私の想定外でしたが・・^^;)

>チョットマジで有川さんハマったかもです。
私は『図書館・・』シリーズから始まってそのままハマり、ほかの2作品を読了した時点でどっぷり浸かってました。そこから制覇の道が始まりましたし(^^)
『塩の街』のおかげで全部単行本で揃えることにしましたが、『空の中』など文庫だけの番外編にはしてやられちゃって困ってます。とりあえず文庫はスルーすることにしたのだけど、あとがきも面白いし、文庫が出たら必ず立ち読みするようにしています。(そういえば、『塩の街』はまだ読んでないや)。でも10年後には全部文庫に買い換える可能性はあるかもなぁ~。

現在『きみが見つける物語』などコラボの作品を残すのみとなっており、いつでも新刊待ち♪
ぜひぜひ追いついてくださいませ。
なんなら全部まとめてお貸ししましょうか?ついでに『図書館戦争』のDVDも(爆)

投稿: たいむ(管理人) | 2010/02/02 19:05

たいむさん、こんにちはー

ベタ甘がなくなっていて男臭い友情がたっぷりで、とーっても面白かったです!
あーこういうのが青春だ!とか、もう二度と巡ってこない時間ってあるんだよねーとかちょっと切なくラストはホロリと。

今までは有川作品マイベスト1「阪急電車」だったのですが、これは上回るかもってくらいのお気に入り。

投稿: hito | 2010/04/03 10:22

■hitoさん、こんにちはsun
こういう青春を謳歌した人って幸せですよね。だから、もはや青春時代は過ぎたと思うとさびしくって逆に封印しちゃうのっが良く解るというか、あのラストは良かったですね(^^)

「阪急電車」は私も大好き!
有川作品はみんな好きだから順番が付けられないのだけど、「キケン」は男女問わず、ボリューム的にもイチ押しでオススメ出来る本だと思います!

投稿: たいむ(管理人) | 2010/04/03 18:11

たいむさん、こんばんは!

なんていうか懐かしかったです。
キケンの奴らほどじゃないですけれど、学生時代はイベントものは燃えましたからねー。
社会人になってずいぶん経つとすっかり落ち着いちゃいますし。
しかし、男子大学生っていうのはやはりバカですよね。

投稿: はらやん | 2010/04/10 21:22

■はらやんさん、こんにちはsun
いまどきの若者もこのくらいの馬鹿をやっているのかどうか。
男だけの仲間って一生っていうか、良いですよね~
お店の子みたく、自分で引いたらだめですよねー(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2010/04/11 14:23

はじめまして^^

私は、『キケン』に出会った時、おもしろそうで立ち読みしていたらついつい読破してしまった思い出のある本で、結局買ったのはつい最近なんですw((

いいですよね~、『キケン』!!

だれかと語りたかったのに、近くにだれも読んだ人がいなくて、うずうずしてたんです!!

3倍にしろ!!とかもう最高!!
あんな風に死ぬほど一生懸命になるのってすごいうらやましいです><
私も高校になったら・・・

あ、今中3受験生ですw

今友達に貸してて、今度語り合おうってなってるんですけど、やっぱりもう語りたい!!

上野さんのはちゃめちゃさとか大好きで、あんなキャラの濃い人と話してみたい!!

てゆうかキケンに入りたいです!!

投稿: かずき | 2011/11/25 18:16

■かずきさん、こんにちはsun
はじめまして。熱いコメントをありがとうございます。

『キケン』良いですよね(^^)
有川作品はみんな好きなのだけど、『キケン』はベスト3に入る作品です。
私としては、ムチャとバカばっかりやっていた学生時代を被らせて心を高ぶらせているところに、最後の書き込みにドーンと持っいてかれ、涙をポロポロ流してしまう感じでした。
さすがに上野ほどの傑物はいなかったし、”キケン”ほど派手にやらかしたりはしていないけれど、際どい事は結構やりました(^^)

「3倍にしろ!」はそのタイトルだけでワクワクですね。更にラーメンネタですからどうしたって喰いつきますねw
有川作品はオタク系がたくさん登場するし、臆面なく取りいれて楽しませてくれるので大好きです。

かずきさんは受験生とのこと。
高校・大学とその気になればきっと実現するチャンスがあることでしょう。
利害を考えず、仲間と付き合ったり、遊んだりできるのは学生だけの特権です。
仲間とともに、何事も本気で取り組むことが出来れば、元山と同じような経験をし、将来感慨にふけることが出来るんじゃないかな?
これからの健闘をお祈りいたします!

投稿: たいむ(管理人) | 2011/11/25 23:32

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