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2010/01/12

衛星映画劇場「タクシードライバー」みた。

Taxi_driver こちらも12月に録りためていたもので、1976年公開のマーティン・スコセッシ監督作品。主演はロバート・デ・ニーロでとにかく若い!そして13歳のジョディー・フォスターがなんと売春婦役で登場している。
海兵隊上がりの孤独な青年(!)のトラヴィス。折角の意中の彼女との初デートにポルノ映画を選んでしまうようなオバカをやらかすヤツなのだけど、時代に取り残されたように鬱々と且つ惰性でただ生きていたトラヴィスの変化と行動、そして世の中の皮肉に驚かされる結末に唸らされる作品だった。

とにかくトラヴィスにはまったく覇気というものが無く、一応タクシードライバーとしての仕事は淡々とこなしているものの、普段の行動も発言もどことなく気持ち悪く、今で言うならストーカー的行為も平気でするような、まぁ出来ればあまりお近づきになりたくないタイプの男だ。それでいて麻薬や売春などで腐敗するばかりの世の中を嫌悪し、(自分も含めて)クソと思っているところがあり、いっぱしの正義感のようなものまで持っているところが潔癖というのか、純粋というのか。それがある日、男から逃げようと、トラヴィスのタクシーに乗り込もうとした売春少女との出会いが切っ掛けとなってトラヴィスは変わっていく。「俺がインチキな世の中を浄化してやる」とばかりに、勝手な思い込みによる正義感に目覚めてしまい、まずは肉体改造からはじめ、次いで4丁の拳銃を手に入れて射撃訓練にいそしむ毎日を送るようになる。だんだん顔つきは精悍に代わり、裸で銃を構え鏡に向かってポーズを決めて、薄笑いを浮かべながら尋問に対するセリフの練習までするトラヴィスの姿は自信に満ち満ちている。(傍から見れば単なる自己陶酔でしかなく、不気味以外のナニモノでもないのだけど)。
そんな矢先、たまたま居合わせた馴染の食料品店が強盗に襲われ、トラヴィスは躊躇なく犯人を撃つ。拳銃は不法所持なのだが店の主人は感謝してトラヴィスには立ち去るように言う。トラヴィスはこの件で自信をつけ、すっかり政府の役人になりきりつついつかの少女:アリシアの身辺調査を開始、アリシア本人には説教までする始末。(ジョディは既に”女優”の貫禄だ)。そして当初から考えていた”大統領候補の暗殺”という”世直し”も実行に移すことにする。(ここで髪型をモヒカンにするところがイカレている証拠みたいなものなんだけど)。ちなみに暗殺は失敗。次に向かった先がアリシアが囲われている売春アパート。トラヴィスは射撃訓練の成果をいかんなく発揮し、容赦なく撃ちまくりの殺しまくり。銃撃戦の中、自らも撃たれたことから最後に自殺を試みるがそれは弾切れのため失敗に終わる。

恐怖に怯えるアリシアだったが、これで晴れて自由の身となり、トラヴィスは自己満足の中、出血多量で死ぬのかな~とか思っていたら、思わぬ後日談でラストは締めくくられることになった。実際のところトラヴィスは暗殺未遂犯であり単なる殺人者なのだが、”少女の救出”という結果しか知らない世間は一命を取り留めたトラヴィスを讃えて英雄扱いする。アリシアの両親には感謝され、新聞でも美談として大々的に扱われる。更にトラヴィスを振った彼女がノコノコと現れるなど、なんとも言えない後味を残してくれた。(それでハッピーエンドになることはないのだが)。

1976年の作品で、(評価は高くとも)音楽の使い方はどうしようもなく古臭いし、正直この手のウツウツ感とやり場のない焦りや憤りを爆発させる若者の作品はあまり好みではないので見始めて「あちゃ~」だったのだけど、抑圧と解放のバランス感覚はさすがはデニーロで、”ズレ”の表現とか暴力的な表現はやはりスコセッシと思える作品だった。
この映画、神山健治監督の『東のエデン』で取り上げられていなければ、おそらく見ることはなかったと思うけれど、”サリンジャー”しかり、この『タクシードライバー』しかり、神山監督の若かりし日の方向性がハッキリ分かるような感じがして(神山監督の10代は本当にモンモンとしていたんだなぁーのような)、また『攻殻機動隊S.A.C.』とか『東のエデン』に繋がっている部分が少し見えた気がして興味深い作品だった。というか『東のエデン』って明るく近未来的にした『タクシードライバー』なのかもしれないとか思ったりもしてね。
話が脱線したが、そんなこんなで頑張って見て良かったと思う。

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コメント

このデ・ニーロの狂気、不気味さはすごく印象的ですよね~。
何とも言えない後味がまた後を引く映画ですね。
好みはあるだろうけど、頑張って観て良かったと思える映画なのは
間違いないですね~!

投稿: miyu | 2010/01/12 20:21

私はスコセッシ作品の中ではこの映画が一番好きですね。

またよくよく考えてみると、昨今のキレる若者の原点ってある意味この映画であるかも?と思えます。
自分勝手な正義、混沌とした世の中。

今見ても1970年代の映画と思えないものがありますよ。

投稿: にゃむばなな | 2010/01/12 21:04

■miyuさん、こんにちは
古い映画ってなにか切っ掛けが無いとほとんど見ることがないのだけど、偶々とはいえ見て良かったです。
観終わって、「あーーーー」とひとり納得してましたし(^^;

それにしてもデニーロ、若かった。30年以上まえだから当たり前なのだけどw

投稿: たいむ(管理人) | 2010/01/12 21:33

■にゃむばななさん、こんにちは
この作品がお好きですか(^^)
どちらかというと男性向きでなのかなーって気はしますが、やっぱりどこかトラヴィスを自分を重ねるところがあるのかしら?しかもトラヴィスはやっちゃうし(笑)
攻殻2nd.GIG2話「飽食の僕 NIGHT CRUISE」ってものすごくコレに近い気がしています。こちらは妄想で終わってたけど。

>自分勝手な正義、混沌とした世の中。
いつの時代にも・・・という感じがするけれど、その表現力が昨今の若者は幼くて貧弱という気がしませんか?
ここ数年際立っている成人式のバカ騒ぎなんか見ててもね。(エロ萌え系ではない)アニメオタクやってる子のほうがよっぽど哲学的で大人って気がしますし。

>1970年代の映画と思えない
アブナイシーンを低音でおどろおどろしくダンダンと表現するばかりの音楽の使い方はまさしくあの時代って感じですが、その辺を弄ってリメイクしたらヒットしそうですね。

投稿: たいむ(管理人) | 2010/01/12 21:51

たいむさん、こんにちは。
この映画、私がデ・ニーロにのめり込むきっかけとなった映画であったりします(小学生で何ショッキングな映画見てんだよ、という感じですが)。
実は私は自他共に認める「海外ならデ・ニーロ、国内なら寺尾聰が一番!」な奴でして…
双方ともタイプ的には全然違うのですが、ファンになったのはデ・ニーロが僅かながら先でして。
とにかくイッちゃってる役でもクールでダンディな男の役でも、彼はセクシーな眼力に魅せられ通しです。

タクシー・ドライバーでは、その眼力の妖しさが余すところなく発揮されてたと思います。バックミラーに映る眼だけでトラヴィスが今どういう精神状態なのか…を見る側に想像させるというのは、彼でなければ出来なかったと今でも信じています。
彼の役へののめり込み&なりきりぶりは「デ・ニーロ・アプローチ」の名で有名な通り尋常ならざるもの(例:タクシー・ドライバーの撮影のために撮影前タクシー会社に常勤した、ゴッドファーザーⅡの撮影にあたって本場にしばらく移住した、ブロンクス物語ではバスの免許を実際に取得した等々。特に有名なのはアンタッチャブルとレイジング・ブルの身体的改造ですね)がありますが、それも彼ならではなのですよね~。後続の俳優が真似しようったって、なかなかここまで出来るものではない。
いわば私生活でもある意味「イッちゃってる人」=むろん誉め言葉です=ならではの所業。

さて…あの映画は一応ハッピーエンド…だと思ってます。個人的には。
売春宿の連中との死闘の後に、どうにかベトナム復員以降に苛まれていた現実との乖離感から逃れてドライバー仲間との他愛のない日常にも馴染むことのできたトラヴィス、目の前で人が殺されるというダメージを受けながらも何とか年相応の生活に戻ったアリシア、そして、冒頭では無下に断っていたトラヴィスのささやかな好意(タクシー代を奢らせて)をラストでついに受け入れたベッツィー。
それぞれ今後は二度と会うことはないだろう人々なのでしょうが「各々、ふさわしい所に地に足がついた」という意味ではハッピーエンドと解釈してもいいんじゃないかな、と思ったりしています。比較的日常が平和な世の中に住んでいる私たち日本人には、非常に後味が悪い映画ですけどね…

あ、ちなみに余談ですが「恋に落ちて」のメリル・ストリープの話では(たしか彼女だと思いました)デ・ニーロはとてもキスが上手だとか…(笑)

投稿: 五郎太 | 2010/01/20 13:29

■五郎太さん、こんにちは
物凄いデニーロファンなのですね。とても参考になりました(^^)

ハッピーエンドに関しては、「2人がラブラブに」という意味でのハッピーエンドではないよーというつもりで書きましたが、そうですね、「何かが変わった」という意味では前向きなエンディングになっていたと思います。
深い映画ですよね。
1970年代はまだ小学生の私で、今回初めてみたのだけど、アニメとはいえ切っ掛けが得られて良かったです(^^)

投稿: たいむ(管理人) | 2010/01/20 18:50

お邪魔します~♪
TBさせて頂いたのですが、、、反映されないみたい(汗)スミマセン!

この映画は、大昔に1度観たのですが、その時は全く面白くなかったんです。
久しぶりに再見してみて、、、やっぱりあまりピンときませんでした~
どうもこういう映画の良さが分からなくて困っちゃう(汗)

デ・ニーロが若くて素敵だったなぁ~
ジョディ・フォスターが13歳とは思えない程演技が達者でビックリ!

投稿: 由香 | 2010/06/25 15:53

■由香さん、こんにちは
TBは引っかかっていたので解放しましたよん(^^)

私も書いたとおり、最初は「あちゃ~」な印象で、モンモンとした感じにあまり馴染めなかったですよ。
でも、共感とか共鳴しちゃう人がいそうな深さみたいなものは感じるんですよね。
面白さというより、そういうところに引き付けられる感じでした。

ジョディは天才!って思いますよね、これを見ると。その後「羊」でブレイクしたのも頷けますね。

投稿: たいむ(管理人) | 2010/06/25 16:56

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