「女の子ものがたり」みた。
映画は現在から始まり、漫画家になったもののスランプに陥っている奈都美と担当編集者のやりとり、それが切っ掛けで思いを馳せた奈都美の回想とが交互に描かれる構成になっていて、封印していた過去を振り返ることで奈都美が改めて現実での一歩を踏み出そうというお話になっている。
家庭の事情で田舎へ引っ越してきた奈都美は、最初に出会った同じ年の女の子のきいちゃんとみさちゃんと仲良くなって、いつも一緒に遊ぶようになる。ところが、きいちゃんは私生児で、みさちゃんちは子沢山の大家族で、どちらも俗に「ビンボー」と言われる家庭の子。周囲からは敬遠されたり、苛められたりしている子たちだった。でも、子供たちには家の事情なんて関係の無い話・・というか、暗黙の了解としてネタにしても笑い飛ばせるくらいに良い関係で結ばれていた彼女たちだった。
けれど高校生にもなると様子は少し変化してくる。(特別説明はないけど)別々の高校に通うということは、成績とか金銭面とかで明らかに差が生していることが分かり、交友関係が異なってくるのは必定といえる。有態に言えば「類は友を呼ぶ」。きいちゃんは自分と母親を捨てた(おそらくロクデナシ)の父親を求めてロクデモない男にばかり惹かれてしまうし、みさちゃんも家族が起こした刑事事件が切っ掛けで高校を中退、学歴のない女の子の行きつく先はほとんど決まっているようなものだ。(唯一普通の男の子と恋をして、普通に生活していた奈都美も、実は家庭内の事に対してはずっと現実逃避していたのだけど)。
そして、夫の暴力でいつも痣や生傷が絶えないきいちゃんとみさちゃんの、それでも笑っている姿を見るのが辛くてたまらない奈都美。でも――。というのがこの話のポイント。
予告編で流されていた決定的な友情の決裂シーン。一般的にも些細なことで友情に亀裂が入ることはままあることで、この映画でも奈都美がデッドラインを越えてしまったがゆえ決別することになるのかとずっと思っていたが、確かにそれも少なからずあるのだけど、真実は違っていたことが分かった瞬間、女同士の真の友情を見た気がした。(プライドを持った女同士のバトルも最高だった)。
残念ながらここから先はお涙頂戴のドラマチックな展開になってしまうのが惜しいところだけれど、それでもしっかり涙をポロポロ流してしまう良いお客な私だ。
タイトル的にも、西原さんの絵柄的にも、ほんわか癒し系かと思いきや開けて見ればけっこう重くてズシっとくる物語。しあわせの定義も人それぞれ。覚悟して見るべし。
総評:★★★★☆ 好き度:★★★★☆ オススメ度:★★★☆☆++
なっちゃんがきいろ、きいちゃんがピンク、みさちゃんがみずいろ。さりげなくいつもイメージカラーを身につけている衣装や小物が可愛かった。(高校生のなっちゃんの黄色いカバンは幼稚園カバンみたいだったケド)。
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コメント
観ていて思ったのは、実は3人とも子供時代から変わっているようで何も変わっていないんじゃないかってことでした。きいちゃんもみさちゃんも、自分の置かれた環境で精一杯幸せであろうとし、そして自分なりの幸せを見つけてきたと思うんです。
なつみはそんな2人が大好きだったから、彼女なりに2人の幸せを願う訳ですが、そこに彼女と2人との決定的な差があったんですよね。
投稿: KLY | 2009/10/04 00:48
■KLYさん、こんにちは
三つ子の魂、百までですしね(^^)
やっぱり本人がどう思っていても、暴力でボロボロになっている姿は見たくないと思うのが友だち。
お伽噺ハッピーエンドを一般的に「幸せ」というのなら、あまりにかけ離れた状況はやはり不幸に見える。
今のささやかな「幸せ」に満足しているきいちゃんとみさちゃも違うと思うけど、友だちと思っているからこそのキツイ言葉が身にしみました。
投稿: たいむ(管理人) | 2009/10/04 11:05