「セントアンナの奇跡」みた。
何故その殺人は起こったのか?
第2次世界大戦後、帰還兵(英雄)となったヘクターは善良なる市民としてごく平凡に暮らし、円満な定年退職を3ヶ月後に控えていた。そんな時期に残りの人生を棒に振りかねない殺人を犯したヘクターの心理は常人には理解しがたいものだ。さらにヘクターの自宅からは戦時中に行方不明になっていた、イタリアの彫像の頭部が大事そうに保管されているのが発見され、ますます不可解な事件になっていく。ヘクターの”殺人動機”はなんだったのか?それ説明するには長い長い昔話から始めなければならないものだった。
事の発端は「第2次世界大戦」にまで遡る。ヘクターらは”黒人部隊”として最前線に駆り出されナチス・ドイツと戦っていた。しかしアメリカでは人種差別が当たり前のように横行していた時代でもあり、白人士官との行き違いからヘクター・トレイン・スタンプス・ビショップの4人は孤立してしまい、途中トレインが拾った少年と共にイタリアはトスカーナの村へを堕ちのびることになる。トスカーナの村とてドイツ兵に囲まれており、決して安全地帯ではないのだけど、それでも一時の休息を求めて地元パルチザンらも集まってきて、”ヘクターの殺人事件”に繋がる役者が村に揃うことになる。(ちなみに彫刻は、戦地でトレインが拾い「神の御加護」があるとして後生大事に持ち歩いていた)。
ヘクターらアメリカ黒人兵とアンジェロ少年、捕虜となったドイツ兵にイタリアのパルチザン、そして村人。彼らがひと所に集まったのは偶然か必然か。出会ったことで無関係ではなくなってしまった彼ら。それぞれの過去と因縁が絡み合い、結果的に現在にまで持ちこされてしまった結末が”ヘクターの殺人事件”という、なんともまどろっこしい話なのだが、どこを省略しても疑問が残る出来事で、ならば全部聞くしかないという感じだ。
とにかく疲れる映画だった。それぞれの行動を追っている分、英語・イタリア語・スペイン語・ドイツ語が入り乱れ、場面転換もクルクルと頻繁で付いていくのが大変。時間の流れはひとつでも、人間の数だけ時間は流れているとつくづく思うところ。また、伊達にR-15ではない映画で、でもアニメちっくなカット割りや演出で軽減されて救われた気がする。
悲劇の中に”奇跡”を見るような、そして救われるラストにほっとする映画。殺人の動機はおそらく一言でも説明できるけれど、すべてを聞き終えて漸く溜飲が下がるような話。ラストは予想どおりなのだけど、救われる映画は見終わったあとが楽でいいやねw
総評:★★★☆☆++ 好き度:★★★☆☆++ オススメ度:★★★☆☆++
ひとつ気になっているのが、ヘクターを救ったドイツ軍上級士官のその後。敗戦後に彼はどうなったのだろう?
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コメント
こんばんは~。^^
スパイク・リー監督らしい相変わらずの問題作ですなぁ。しかも黒人差別だけじゃなく戦争の悲劇までからめてくるとは、上映時間が長くなっても無理ありませんね。^^;
でも、実際私はセントアンナの悲劇とか知らなかったんで、啓蒙されたという意味では監督の望みどおりだったのかななんて思っています。
投稿: KLY | 2009/09/04 00:36
■KLYさん、こんにちは
私も知らないことばっかりで、戦争映画はいつもそう。
人種差別がこんなところで、こんな風に表現されるとは思っていませんでしたし、とにかく見応えのある作品でした。
でも長い!
尻上がり盛り上がっていくのだけど、教会のシーンと村の一掃はキツカッタです。
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/04 09:09
スパイクリーの映画、けっこう観てるわりに最近のはイマイチ合わなかったんですけど
こちらはラストが壮快でした〜。
前半はちょっとキツかったけど^^;
途中から面白くなりましたね。
もう少し短かったらもっと良かったかも
投稿: mig | 2009/09/04 20:17
たいむさん、こんばんは^^
見応えありました!とにかく長かったですよね(^^ゞ
ですが、珍しく睡魔には襲われませんでした(笑)
>とにかく疲れる映画だった
この一言に、クスッと笑ってしまいました(笑)
ほんと、疲れましたよねえ(笑)
予想外に残酷、残虐なシーンがあって、重い作品だった
のですが、ラストに救われて、気持ちが軽くなりました!
確かに、あの上級仕官のその後気になりますね(^^;
もののわかる、いい人でしたので、敗戦後、処刑とか
されてないといいのですが・・・
話変わってすみません(^^;
もうサブウェイ123ご覧になったんですね^^はやっ!
★が4つだったので、明日安心して観に行けます(笑)
感想アップしたらまたお邪魔しま~す♪
投稿: ひろちゃん | 2009/09/04 23:13
■migさん、こんにちは
前半、それぞれが絡み合うまでが長かったですねー。
もう少しコンパクトにまとめてもらえると助かりましたが、これだけの内容を詰め込もうとしたら、こうなっちゃうのかな?
「地獄の黙示録」じゃないけど、本当はもっと長かったんじゃないかな?なんて思ってしまいますねw
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/05 09:36
■ひろちゃん、こんにちは
そうですか、こんなに長いのに睡魔に襲われませんでしたか(笑)
肉体的もあるし、精神的にも疲れましたねー。
とにかく色々なことがあり過ぎて、頭の中を整理するのが大変。混乱することも多々あって、女性的視点からは、スタンプスに色目を使いながら、ビショップとデキちゃう彼女に「えええー」だったとかも。だれでも良いくらい寂しかったのかな?(^^;
戦争ってイヤですね。
昨日は休日出勤の代休でした♪
金曜はレディスデーで一律千円ですし、金曜公開万歳!ですw
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/05 09:47
実はそんなに長い作品だとは全然思わなかったです。
>殺人の動機はおそらく一言でも説明できるけれど、すべてを聞き終えて漸く溜飲が下がるような話
全く、その通りですね!
長い回顧録でしたが、惹きこまれましたし、
女神が運んだ奇跡に、素直に胸がいっぱいになりました。
投稿: kira | 2009/09/05 10:39
■kiraさん、こんにちは
私は見る前に3時間近いと気づいてしまったので、覚悟していました。
でも、後半から加速していくので長さは言うほどには感じないのですよね。
>女神が運んだ奇跡
そうですね、やはりアレらは「奇跡」とするのが一番良さそうに思いました。
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/05 21:35
こんにちは。TB&コメントありがとうございました。
最初のサスペンス調の展開から始まって、戦争や人種差別の悲劇を描いていくストーリー展開には引き込まれました。ハードな物語に、ほんの少しのファンタジーが隠し味として効いていましたね。
ドイツ軍士官はどうなったでしょうね。できれば生き延びていて欲しいものです。
投稿: えめきん | 2009/09/06 18:45
たいむさん、こんばんは!
確かに長かったし内容も濃かったので、観るのにエネルギーがいる作品でした。
スパイク・リーの作品でしたが、黒人視点だけではないところが新鮮でした。
レッテルで人を見がちですが、そうではいけないと感じさせてくれる作品でした。
投稿: はらやん | 2009/09/06 20:24
■えきめんさん、こんにちは
サスペンス調によって「つかみはOK」となり、基本的には戦争やそれに伴う悲劇的なアレコレだったけれど、ミラクルな締め方で後味もすっきりした気がしています。
ドイツの仕官さん。戦犯で裁かれていないと良いなーと思ってしまいますが・・・
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/07 12:29
■はらやんさん、こんにちは
マジレスで失礼しました(^^)
戦争のことに限らず色々な問題が凝縮されてましたね。とても見ごたえがありました。
「奇跡」を絡めて軽くしてくれたのは意図的なものでしょうか?
おかげで救われた気分ですけどw
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/07 12:31
こんにちは♪
やっぱり長かったよね、コレ。
眠くはならなかったのだけど、中だるみしたような気もする~。
子供を逃がそうとするドイツ兵がいるのはなんとなく分かるの。
無駄な殺戮をしないナチス将校がいるのも分かるの。
でも、そこで自分の拳銃を渡すかな~?なんて思っちゃった。
それこそがセントアンナの頭部のご加護なのかな?
ヨーロッパ戦線にもたくさんの黒人兵が行ってたんだねぇ。
頭の悪そうな白人の上官にムカつきました~(笑)
投稿: ミチ | 2009/09/07 22:23
■ミチさん、こんにちは
明るい作りで、中~後半に怒濤の展開になっていくから眠くなったりはしないけれど、集結するまでが長く感じました。
>でも、そこで自分の拳銃を渡すかな~?
うん。私もえ?ってなりましたが、冒頭のアレに繋がると思えば・・・なのかな?
はっきり言って予定調和も多いファンタジックさが満載でした。
「奇跡」ってことで、最初からファンタジーなのかもしれないけれど(^^;
白人だってだけで威張り腐る愚か者はむかつきますねー。
投稿: たいむ(管理人) | 2009/09/08 20:43